漫画家としては、あの手塚治虫以来二人目となる、国立の美術館での個展を実現した荒木飛呂彦。その代名詞とも言える『ジョジョの奇妙な冒険』シリーズを30年以上描き続ける、荒木の創作哲学とは

BY MASANOBU MATSUMOTO, PHOTOGRAPHS BY MIE MORIMOTO

 この取材で荒木にどうしても聞きたいことがあった。漫画家人生の転機について。『ジョジョ』という作品が、荒木本人の人生とどうリンクしているか、その答えのヒントがそこにあると思ったからだ。だが返ってきた答えは、意外。「胃腸炎で入院したときでしょうか。42歳のとき。本当に厄年ってあるんだなって」。そのとき、太い胃カメラを飲まされたのが人生でいちばんショックだったという。「体力的に無敵な時代は永遠ではない、旅行に行ったり料理を始めたり、もっと日常を楽しみたいと思ったんです。漫画以外にも目が向くようになった」

画像: ロックを中心に洋楽にも精通しており、作品のネタにもしてきた荒木。音楽をかけながら作業をするのが日課で、デスクまわりには、CDが山積みに。最近はエルヴィス・プレスリーが個人的に再ブームだという www.tjapan.jp

ロックを中心に洋楽にも精通しており、作品のネタにもしてきた荒木。音楽をかけながら作業をするのが日課で、デスクまわりには、CDが山積みに。最近はエルヴィス・プレスリーが個人的に再ブームだという

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 ちなみに、得意な料理はイタリアンだという。過去にオンラインの企画でパスタ料理の腕前を披露していたが「さらに試行錯誤を加えて、ようやく“完成形”と呼べるものが何種類かできました」と話す。では、料理の面白さとは?「たとえば、ニンニクを刻むのか、スライスするのかで味や風味が変わってきます。レモン汁と塩とオリーブオイルを合わせる順番でも変わってくる。それは、絵を描いているときに起こる“化学反応”のようなものにも似ていて、それを研究していくのが楽しい。ナポリタンを作るとき、炒める途中と仕上げの2回にわけてケチャップを入れるのがおいしさの決め手なのですが、絵の場合でも、同じようにピンクを2回重ねると、より美しさが増すのです」

画像: 《第5部黄金の風》『週刊少年ジャンプ』1996年第5・6合併号より。 主人公は宿敵DIOの血を継ぐジョルノ・ジョバァーナ。舞台は荒木が大好きなイタリア © HIROHIKO ARAKI & LUCKY LAND COMMUNICATIONS / SHUEISHA www.tjapan.jp

《第5部黄金の風》『週刊少年ジャンプ』1996年第5・6合併号より。
主人公は宿敵DIOの血を継ぐジョルノ・ジョバァーナ。舞台は荒木が大好きなイタリア
© HIROHIKO ARAKI & LUCKY LAND COMMUNICATIONS / SHUEISHA

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 この“化学反応”という言葉は、荒木の特異性をうまく言いあてているように思える。アートとしても評価される彼の原画で起こる“化学反応“。結果、『ジョジョ』を深化させた、ファッションやアートなどとの出会いやコラボレーションも“化学反応”だ。そして今回、原画展の会場には多くのファンが足を運び、荒木が「細かいところまで観てほしい」と言った大型原画を楽しんでいた。鑑賞者それぞれのなかでも、おそらく荒木の言う“化学反応”が起こったに違いない。

荒木飛呂彦(HIROHIKO ARAKI)
1960年宮城県生まれ。’80年手塚賞に準入選した「武装ポーカー」でデビュー。’87年に『週刊少年ジャンプ』で『ジョジョの奇妙な冒険』を連載開始(現在は『ウルトラジャンプ』にて連載中)。2012年、仙台と東京・六本木で本格的な原画展を開催。’14年、文化庁メディア芸術祭マンガ部門大賞を受賞

画像: 原画展の公式ビジュアル。 東京会場は、第3部の主人公である空条承太郎(左)、大阪会場は宿敵、DIO(右)がモチーフに。荒木自身も認める“最強のふたり”だ。この2枚の原画も会場に展示されている © HIROHIKO ARAKI & LUCKY LAND COMMUNICATIONS / SHUEISHA www.tjapan.jp

原画展の公式ビジュアル。
東京会場は、第3部の主人公である空条承太郎(左)、大阪会場は宿敵、DIO(右)がモチーフに。荒木自身も認める“最強のふたり”だ。この2枚の原画も会場に展示されている
© HIROHIKO ARAKI & LUCKY LAND COMMUNICATIONS / SHUEISHA

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『荒木飛呂彦原画展 JOJO 冒険の波紋』
東京での展示が大盛況のうちに閉会した『ジョジョ』の集大成たる原画展は、11月25日(日)から大阪会場(大阪文化館・天保山)に場所を移して開催。大型原画を含む、荒木の原画展が大阪で開催されるのは今回が初となる

会期:2018年11月25日(日)~2019年1 月14日(月・祝)
会場:大阪文化館・天保山(海遊館となり)
住所:大阪府大阪市港区海岸通1-5-10
開場時間:10:00~20:00 ※最終入場は閉館の30分前まで
定休日:無休
電話:
~11/20(火) 050(5542)8600<ハローダイヤル>(8:00~22:00)
11/21(水)~ 06(6574)2323<大阪会場事務局内>(9:30~20:00)
チケット予約:チケットの購入方法などの詳細はこちらより
公式サイト
※ 開催内容は予告なく変更になる場合があります。

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