漫画家としては、あの手塚治虫以来二人目となる、国立の美術館での個展を実現した荒木飛呂彦。その代名詞とも言える『ジョジョの奇妙な冒険』シリーズを30年以上描き続ける、荒木の創作哲学とは

BY MASANOBU MATSUMOTO, PHOTOGRAPHS BY MIE MORIMOTO

 ふと作業場の机に目をやる。並んでいるのは、サインペンとGペン、筆、そして大量の墨汁とアクリル絵の具、カラーインク。荒木が普段漫画を描くときとほぼ同じ画材だ。この巨大な絵が、デジタルでも新しい技法でもない、いつもの“手描きの漫画原画”であることも、荒木にはとても重要な意味をもっていた。「僕は、漫画を描いているときに起こる“化学反応”のようなものが好き。偶然性と言うのでしょうか。たとえば、色を隣り合わせに塗ったときに生まれる、思いもよらないコントラストや色のにじみ。“こんなふうになるのか!”という驚きが楽しい。漫画には物語やキャラクター、世界観などいろいろな魅力がありますが、そのなかに“手描きの原画を楽しむ”ことも加えたい。しかも、印刷するために描いた原画とはまた違う、“原画を楽しむための原画”を」

画像: 作業場に置かれていた大型原画の設計図。これをベースに着色していく www.tjapan.jp

作業場に置かれていた大型原画の設計図。これをベースに着色していく

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画像: 色の調合レシピ。いくつかのインクをミックスし表現したい色を作る www.tjapan.jp

色の調合レシピ。いくつかのインクをミックスし表現したい色を作る

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 原画展の会場には、完成した大型原画に加え、初公開を含む数々の原画、そして彫刻家の小谷元彦やファッションブランド、アンリアレイジのデザイナー森永邦彦など“ジョジョ派”のアーティストとのコラボレーション作品も並んだ。それらの展示品は『ジョジョ』がもつ多彩な魅力を改めて教えてくれる。たとえば、超能力を実体として描いた“スタンド”、ルネサンス期の彫刻やファッション誌にインスパイアされた“ジョジョ立ち”と呼ばれるキャラクターのポーズ、そして登場人物たちの名言など。と同時にこう思わせた。これだけ表現の幅が広い『ジョジョ』という作品を、荒木はどういう発想で創り出したのか?

画像: 原画展のプレス内覧会にて、完成された大型原画《裏切り者は常にいる》の前に立つ荒木。 鑑賞者とキャラクターの融合を目指し、「観る者の目の高さが、絵に描かれた地平線(遠近法における消失点)に合うように作品を設置しました」と説明した www.tjapan.jp

原画展のプレス内覧会にて、完成された大型原画《裏切り者は常にいる》の前に立つ荒木。
鑑賞者とキャラクターの融合を目指し、「観る者の目の高さが、絵に描かれた地平線(遠近法における消失点)に合うように作品を設置しました」と説明した

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