歌舞伎ワールドへようこそ。劇場の扉、時空の扉、そして心の扉を開いて、絢爛たる異世界へと誘う連載。第十六回は、祖父の追善公演を兄弟で担う、中村勘九郎さん、中村七之助さんの思いを聞いた

BY MARI SHIMIZU

 歌舞伎俳優の家にはそれぞれ大切にしている演目がある。勘九郎さん、七之助さん兄弟にとって『連獅子(れんじし)』は数ある演目のなかでも特別なものだ。2012年12月に急逝した父・十八世中村勘三郎さんが初めて仔獅子の精を勤めたのは、14歳の誕生日を翌月に控えた時のことだった。親獅子の精はその父である先代、十七世中村勘三郎だ。

画像: (右)中村勘九郎(NAKAMURA KANKURO) 1981年10月31日生まれ。十八世中村勘三郎の長男。1986年1月歌舞伎座『盛綱陣屋』の小三郎で初お目見得。’87年1月歌舞伎座『門出二人桃太郎』の兄の桃太郎で二代目中村勘太郎を名のり初舞台。2012年2月新橋演舞場『土蜘』の僧智籌実は土蜘の精、『春興鏡獅子』の小姓弥生後に獅子の精などで六代目勘九郎を襲名。’19年NHK大河ドラマ『いだてん~東京オリムピック噺(ばなし)〜』に主演するなど映像でも活躍 (左)中村七之助(NAKAMURA SHICHINOSUKE) 1983年5月18日生まれ。十八世中村勘三郎の次男。1986年9月『檻』の祭りの子で初お目見得。’87年1月歌舞伎座『門出二人桃太郎』の弟の桃太郎で二代目中村七之助を名のり初舞台。『お染の七役』、『鷺娘』などで華のある女方として存在感を発揮。古典の大役である『伽羅先代萩』の政岡を勤めて甥の中村勘太郎、中村長三郎と共演。新作歌舞伎『風の谷のナウシカ』では皇女クシャナを演じている Ⓒ SHOCHIKU

(右)中村勘九郎(NAKAMURA KANKURO)
1981年10月31日生まれ。十八世中村勘三郎の長男。1986年1月歌舞伎座『盛綱陣屋』の小三郎で初お目見得。’87年1月歌舞伎座『門出二人桃太郎』の兄の桃太郎で二代目中村勘太郎を名のり初舞台。2012年2月新橋演舞場『土蜘』の僧智籌実は土蜘の精、『春興鏡獅子』の小姓弥生後に獅子の精などで六代目勘九郎を襲名。’19年NHK大河ドラマ『いだてん~東京オリムピック噺(ばなし)〜』に主演するなど映像でも活躍

(左)中村七之助(NAKAMURA SHICHINOSUKE)
1983年5月18日生まれ。十八世中村勘三郎の次男。1986年9月『檻』の祭りの子で初お目見得。’87年1月歌舞伎座『門出二人桃太郎』の弟の桃太郎で二代目中村七之助を名のり初舞台。『お染の七役』、『鷺娘』などで華のある女方として存在感を発揮。古典の大役である『伽羅先代萩』の政岡を勤めて甥の中村勘太郎、中村長三郎と共演。新作歌舞伎『風の谷のナウシカ』では皇女クシャナを演じている
Ⓒ SHOCHIKU

『連獅子』は、獅子が我が子を谷底へ突き落とし自力で這い上がることのできた者のみを育てるという、中国の故事を題材にした踊りで、その内容は厳しい芸の世界で精進に励む親子に重なる。当時、10代の仔獅子の登場は清新で、それまでにない感動を呼び舞台は大評判。以後、中村屋の『連獅子』は大人気演目となった。やがて勘三郎さんは親獅子となり仔獅子は勘九郎さん、七之助さんへと引き継がれていく。

画像: 『連獅子』親獅子の精=中村勘九郎、仔獅子の精=中村勘太郎 PHOTOGRAPH BY KISHIN SHINOYAMA

『連獅子』親獅子の精=中村勘九郎、仔獅子の精=中村勘太郎
PHOTOGRAPH BY KISHIN SHINOYAMA

 2020年、新型コロナウィルス感染拡大防止のための自粛期間中、勘九郎さんは小学4年生の長男・勘太郎さんと1年生の次男・長三郎さんとあることに取り組んでいた。それは『連獅子』の稽古。
「緊急事態宣言下となり自分も子供たちも“おうち時間”がたっぷりありました。だったら稽古をしよう! ということです。私が父から手取り足取り教えてもらった『連獅子』を彼らにひとつひとつ伝えました」

 七之助さんが、勘三郎さんとの思い出を振り返る。
「父は兄のように祖父から手取り足取り役を教わったことはほとんどないと聞いています。そんな中で『連獅子』という踊りを通して、舞台の上で親子というものを体感していったのだろうと思います。だから父にとって非常に大切な演目。僕たちに対しても、『連獅子』に関してはとりわけ厳しく、生半可な気持ちで臨もうものなら烈火のごとく怒りました。そして演目や役そのものだけでなく、そこに取り組む姿勢、舞台での行儀など、この踊りを通して僕たちはさまざまなことを教えられたように思います」

画像: 十七世中村勘三郎 Ⓒ SHOCHIKU

十七世中村勘三郎
Ⓒ SHOCHIKU

 そして今年、勘九郎さんと勘太郎さんという、次世代の親子による『連獅子』が、歌舞伎座の「二月大歌舞伎」で実現した。
「こんなにも早くふたりで踊る日が来るとは思いませんでした。中村屋の『連獅子』をまた次の世代につなげられることをとてもうれしく思います。たくさんの方々のご尽力、そして祖父と父のおかげです」

 

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