BY JUNKO HORIE, PHOTOGRAPH BY KAZUYA TOMITA

20世紀前半の欧州を生き抜いた作家ヘルマン・ヘッセは二つの世界大戦に衝撃を受け、インドを訪れたことをきっかけに東洋思想と出合い、古代インドを舞台に主人公シッダールタが悟りに至るまでの物語を書いた。その『シッダールタ』が現代を映す作品として舞台化される。シッダールタを演じるのは草彅剛。
「悟りを開くような物語ですから、考えてできるような作品じゃないと思う。共演の方たちと対峙してつかんでいかないと、僕は入ってこないタイプ。活字で悩むより、現場での感覚を大事にします」
台詞は主に現場で覚える……と、くったくのない笑顔で語っている姿をテレビ番組などで見かけてきたが、物語、役の真意をつかむ彼の手法なのだろう。主演ドラマ「僕と彼女と彼女の生きる道」(2004年)の最終回では驚異的な視聴率27.1%を記録し、ドラマ、映画で国内外の数々の賞を受賞。トランスジェンダーを演じた主演映画『ミッドナイトスワン』では、第44回日本アカデミー賞で自身初となる最優秀主演男優賞を受賞。
「僕は、子どもみたいなもので……。悪く取らないでいただきたいんだけど、遊んでいるんですよ、稽古でもなんでも」。
天才肌とはこういうものか、と思っていたら、彼の言う"遊び"には、かつての恩師が潜んでいた。
「つかこうへいさんには『蒲田行進曲』で自分の中にあるものをすごく引き出していただいて。階段落ちを自ら望むヤスの、銀ちゃんへの愛情とか、自分の中の何かが開花したといいますか、いや爆発した!かな(笑)」と言いつつ、岡本太郎の"芸術は爆発だ"と軽くふざけて見せて、笑顔が爆発する。
「つかさんは役の中で自由に生きることも教えてくれました。"遊び"っていうのは、つかさんがよく言っていたんですよ。"どれだけ役の中で遊べるかだから、ステージに立ったら思う存分、遊んでこい"と。その教えを僕はずっと持ち続けて、忘れないようにしているんですよ」。
多くの著名な演出家に愛されて、草彅剛はつくられてきた。いや、彼がシッダールタについて語ったように、すべては最初から彼が持っていたものなのかもしれない。
「シッダールタは途方もない旅をして、結局元の場所に戻ってくる。人間ってそういうもの。もともとすべて持っているんですよ。シッダールタも出発の時点ですべて持っていたんじゃないかな」
草彅 剛(くさなぎ・つよし)
1974年、埼玉県出身。近年の出演作に、映画『ミッドナイトスワン』(2020)、『碁盤斬り』(2024)、舞台『シラの恋文』(2023)、『ヴェニスの商人』(2024)、NHK連続テレビ小説「ブギウギ」(2023)など。主演ドラマ「終幕のロンド─もう二度と、会えないあなたに─」が放映中。
ジャケット・シャツ・パンツ・ネクタイ/ポール・スチュアート
ポール・スチュアート青山本店 TEL. 03-6384-5763
スタイリスト/細見佳代(ZEN creative)ヘアメイク/荒川英亮

舞台『シッダールタ』
【原作】ヘルマン・ヘッセ「シッダールタ」「デーミアン」(光文社古典新訳文庫 酒寄進一訳)
【作】長田育恵
【演出】白井 晃
【音楽】三宅 純
【出演】草彅 剛、杉野遥亮、瀧内公美
鈴木 仁、中沢元紀、池岡亮介、山本直寛、斉藤 悠、ワタナベケイスケ、中山義紘
柴 一平、東海林靖志、鈴木明倫、渡辺はるか、仁田晶凱、林田海里、タマラ、河村アズリ
松澤一之、有川マコト、ノゾエ征爾
■東京公演:~12月27日(土)世田谷パブリックシアター
■兵庫公演:2026年1月10日(土)~1月18日(日)兵庫県立芸術文化センター 阪急 中ホール
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