BY THESSALY LA FORCE, PHOTOGRAPHS BY KATJA MAYER, SET DESIGN BY JILL NICHOLLS, TRANSLATED BY JUNKO HIGASHINO
ジョージア・オキーフが若い頃に着ていた、一枚の白いシルクブラウスがある。繊細な美しさが特徴のこの服には、ほのかな透け感があり、肩とネックラインに何十ものピンタックが手縫いで施されている。スクープネック(Uネック)のいちばん深いところ、つまり鎖骨の真ん中あたりを飾るのは、同じシルク素材の花。さらに細かいピンタックが入った小布でできたこの花は、咲き誇った蘭を思わせる。裏側には、丁寧に何度も継ぎ合わされ、繕われた形跡があり、それは単にブラウスというより芸術作品のように見えた。
オキーフは自らのワードローブをこよなく愛していた。1974年の『ニューヨーカー』誌で、彼女のハウスキーパーは「ミス・オキーフは何百枚ものドレスをお持ちでしたが、すべてが似た雰囲気でしたね。白以外ですと、黒の服もいくつかありました」と語っている。彼女はフェラガモの柔らかなスエードのフラットシューズを好み、マットなブラックから、淡いティールブルー(青緑)まで取り揃えていた。ほかにお気に入りだったのは、アメリカの老舗デパート「サックス・フィフス・アベニュー」のローヒールや、ステッチが葉脈のように立体的に刻まれたトップス、バイアス裁ちのドレス、チュニック、膝下丈のスモック。ニューヨークに赴くときの彼女は厳かなスカートスーツにきりっとした襟つきのシャツを着たが、ニューメキシコ州の砂漠の高地にある自宅に戻ると、ブルージーンズやシャンブレーのロングスリーブシャツ、ウエストをベルトでマークしたシンプルなコットンのラップドレスをまとった。また写真を撮られるときは黒の服を選んだが、実際はピンク、スカイブルー、ネイビー、赤といった色も好んでいた。後ろになでつけ、だんご状にきれいにまとめた髪型は、友人でアーティスト仲間のアレクサンダー・カルダーから贈られた、オキーフの“O”をかたどった渦巻き模様がついた真鍮のブローチによく似ていた。
20世紀のアメリカで最も名高いアーティストのひとりであるオキーフは、つねにさまざまな分野や活動団体の趣意を象徴するリーダーとして崇められてきた。フェミニストの目にオキーフは尊敬すべき画家として映り、デザイナーやファッションフォトグラファーにとってはスタイルアイコンだった。こんなふうにすでに名声を博していたオキーフは、外見とそのメッセージ性のあるスタイル、そして作品が人々の評判を集め、崇拝された。オキーフをアイコンとして“オブジェ化”するのはリスクを伴うことだが、彼女の残したレガシーには“芸術としての自己表現”が感じられる。昨年、ニューヨークのブルックリン美術館では『ジョージア・オキーフ:リビング・モダーン』と題したオキーフの生涯と作品を振り返る回顧展が催された。そこでは98点の写真と36点の絵画作品のほか、彼女のワードローブの一部が初めて公開されたのだった。
デュロ・オロウがデザインする、
画家リネット・イアダム=ボークアイのワークウェア