端正なシルエット、優美なドラマのあるディテール。「それどこの?」「あら、やせた?」と聞かれる大人の魔法服は、なぜこんなに着心地までも優れているのか

BY OGOTO WATANABE

画像: ライン使いが新鮮な表情を生む シャツ¥37,000、パンツ¥40,000 2018春夏コレクションより

ライン使いが新鮮な表情を生む
シャツ¥37,000、パンツ¥40,000
2018春夏コレクションより

 どうしてこんなにきれいな服が作れるのだろう。デザイナーの研壁 宣男(すりかべ のりお)さんを訪ねた。
「僕は、ボディを包みこむイメージで服を作っていきます。服はそもそも身体を包む空間であり、箱でもある。立体感と空気感をつくるイメージで服を作る。筒を作るイメージに近いかもしれない。身体を動かしたときに包まれている感じをイメージしてトワルに布地を巻きつけ、縫いながら作っていくんです」

画像: アトリエ内にて。トワルに布を巻き付け、縫いながら作っていく PHOTOGRAPH BY OGOTO WATANABE

アトリエ内にて。トワルに布を巻き付け、縫いながら作っていく
PHOTOGRAPH BY OGOTO WATANABE

 デザイン画ありき、ではないのが研壁さんのやり方だ。
「いい服とデザイン画は、次元が異なると思うんです。いい服とは空気感やたたずまいのニュアンスにあるから、線では描けない。服のデザインは、全体のボリューム感や微妙なバランスにある。例えば袖のボリュームやボタンの微妙な位置などは、絵よりも仮縫いで決まっていくものだと僕は思う」。日本ではデザイナーは絵を描き、パタンナーが形にしていくことが多いけれど、ここサポート サーフェスではすべてが同時進行。一着の服を作る際、トワルで仮縫いをしながら、イメージもアイデアも素材選びも同時進行で作っていくのだそうだ。

画像: デザイナー 研壁 宣男(すりかべ のりお)

デザイナー 研壁 宣男(すりかべ のりお)

 研壁さんは学校を卒業するとすぐにミラノへ飛んだ。1989年のことだ。憧れていたデザイナー、ロメオ・ジリのもとで働きたい一心でだったという。面接をしてくれた女性は「イタリア語を少しでも話せるようになったらいらっしゃい」と言った。イタリアの地方の語学学校で勉強し、2、3か月後、もう一度その女性を訪ねた。「僕のこと、覚えていますか?」と聞くと、「もちろんよ! 忘れるわけないでしょう」。おそらくイタリア人特有のレスポンスだろうと研壁さんは言うが、そう答えた女性こそカルラ・ソッツアーニだった。

画像: マックイーンと共に作業中の若き日の研壁さん。ロメオ・ジリのアトリエにて PHOTOGRAPHS: COURTESY OF SUPPORT SURFACE

マックイーンと共に作業中の若き日の研壁さん。ロメオ・ジリのアトリエにて
PHOTOGRAPHS: COURTESY OF SUPPORT SURFACE

 その日からロメオ・ジリのもと、忙しく働く日々が始まった。当時、一緒に働いていた仲間にアレキサンダー・マックイーンもいた。どちらもイタリア語が不自由なこともあって仲良くなり、一緒に過ごすことが多かったそうだ。「だけど彼はリー・マックイーンと名乗っていたから、あのマックイーンがその後の彼だったとは、僕はしばらく気づかなかったんだ」

 2年後にジリが去ってからは、カルラ・ソッツァーニのもと、ディエチ コルソコモでNNstudio(no name studio)というブランドのチーフデザイナーを務めた。「スタッフも少なかったからメンズ、レディース、靴もスカーフも、財布などの雑貨まですべて作った。生地集め、デザイン出し、工場回りまで全部やりました」。ハードな日々だったが、ここに今の彼の原点がある。

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