2018年春夏メンズ・コレクションで大きな話題をさらったトム・ブラウン。ショー開始直前の息詰まる48時間にTが密着した

BY ALEXANDER FURY, PHOTOGRAPHS BY THIBAULT MONTAMAT, TRANSLATED BY G. KAZUO PEÑA(RENDEZVOUS)

 しかし、今回のコレクションは「タイヘンなこと」――大きな挑戦だ。このコレクションは見た目よりはるかに複雑で奥深い。ひとつひとつの型紙は、男性の体のさまざまな特徴に細かく合うようカットされている(細めの腰や広いウェスト、いろんな凹凸の入れ替えなど)。それらの洋服はきわめて非凡であり、ファッション業界を見渡してもほかに類を見ない。それでいて、ブラウンとほかのデザイナーの間に共通点があるのもまた事実だ。

 例えば、最初にブラウンを尋ねた時、つまりショー本番のちょうど48時間前の時点では、春コレクションには色がたっぷりとり入れられ、グレーの部屋とくっきり対照をなしていた。ツイードにはピスタチオ、ラズベリー、サクラソウなどの鮮やかな色が織り込まれていて、ブラウンの飼っているダックスフントのヘクターをモチーフにした金色の刺繍をいくつも目にすることができた。それが、ショー開催当日の日曜までには、すべての色がカットされ、ダックスフントたちだけが残されていた。

多くのデザイナーがそうであるように、ブラウンも本番直前に気が変わり、猛烈なラストスパートでコレクションを手直しする。「この方がコレクションとして完成度が高いから」と舞台裏で彼は言う。「なんていうか、いわゆる“ファッション”っぽくはないけどね」

画像: 本番 日曜日 午後6時20分 本番5分前、舞台裏にて。ブラウンが一つ一つの衣装の最終調整を行う。ショーのスタイリストは彼自身が務めるのだ。「自分で責任を取りたいタイプだから」と彼は言う。「最後の最後に誰かに入ってもらうなんて、ありえない。自分のスタイルで通さなきゃ」

本番 日曜日 午後6時20分
本番5分前、舞台裏にて。ブラウンが一つ一つの衣装の最終調整を行う。ショーのスタイリストは彼自身が務めるのだ。「自分で責任を取りたいタイプだから」と彼は言う。「最後の最後に誰かに入ってもらうなんて、ありえない。自分のスタイルで通さなきゃ」

画像: はい、終了! 日曜日 午後6時39分 ドレスとスーツを融合させた衣装を着た最後のモデル、“花嫁・花婿”がランウェイに上がり、拍手するブラウン。「男性の場合、みずからに課す縛りがすごく多いんだけど」と彼は言う。「僕にとっては、その制限をぶち壊そうとすること自体が面白いんだ」

はい、終了! 日曜日 午後6時39分
ドレスとスーツを融合させた衣装を着た最後のモデル、“花嫁・花婿”がランウェイに上がり、拍手するブラウン。「男性の場合、みずからに課す縛りがすごく多いんだけど」と彼は言う。「僕にとっては、その制限をぶち壊そうとすること自体が面白いんだ」

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