BY MASANOBU MATSUMOTO, PHOTOGRAPH BY TAKAHIRO IDENOSHITA

2018-'19秋冬コレクションより。「僕は制作の過程で、ファンクショナルでない要素はなるべくそぎ落とします。今シーズンは、モッズコートも作りましたが、本来のエレメントはほとんど残っていません」と大丸氏
COURTESY OF OVERCOAT
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大丸は、デザイナーとしての自分を「ある種の“制限”のなかで、デザインをしていくタイプ」と分析する。「OVERCOATのアイテムは、サイズレスで、ジェンダーレスで、エイジレス。そういった“制限”をかけることで、形や機能、プロセスや構造を考察していくのが僕のやり方です。たとえば、サイズレスという制限のなかで服を作るとき、ワンサイズだが幅広い体型の人にフィットさせるにはどういうパターンであるべきかと考えます。すると、製図の際に、絶対的に欠かせない線と、本当はなくてもよい線が見えてくる。一度デザインの要素を因数分解し、それぞれに確かな理由を見い出しながら、また新しくデザインを考えていくのです」

これまでのポップアップ・イベントでは、インスタレーションでブランドの世界観を表現してきた。写真はセレクトショップ、グラフペーパーでの展示。ブランドのアイコンであるドルマンスリーブのオーバーコートを、店舗にあるキャンバスを人体に見立てて、再設計している
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ただし、最終的に目指すのはロジカルで“頭のいい服”ではなく、現代においてファンクショナルかつ楽しい服だ。「僕たちの服は、平面での製図とトルソーを使った立体裁断の両方を駆使しています。だからハンガーに吊るされているときの形と、人が着用したときの形が違うとよく言われます。また、ユニセックスですが、女性も男性も着ることができるというだけでなく、女性には女性らしく、男性にはかっこよく、それぞれ表情が変わってくれるように計算しています」と大丸。
着心地にこわだった洋服の魅力を、“袖を通してみるとわかる”とよく言うが、大丸の服は袖を通すと、さらに驚きがあり、楽しさがある。その意味で、OVERCOATは体験型の服と言えるかもしれない。「似たようなものが多くある時代に、人は服に何を求めているかということを、よく考えます。また、最近は、コートやジャケットの領域が曖昧になっているような傾向もあり、個人的に“アイテムレス”というアイデアに注目しています。既存のカテゴリーや作り手の意図を超えて、着る人それぞれがアイテムに価値を見いだせるーーそんなウエアを作ることが、今の僕の理想ですね」
大丸隆平(オオマル リュウヘイ)
OVERCOAT デザイナー。2006年に渡米。ダナ・キャラン・ニューヨークでパタンナーとして働きながら、2008年にoomaru seisakusho 2を設立。NYのクリエイターを中心に、企画デザイン、パターン製作、サンプル縫製サービスを請け負う。2014年、第2回CFDA FASHION MANUFACTURING INITIATIVE を受賞。2015年、第33回毎日ファッション大賞鯨岡阿美子賞を受賞
お問い合わせ先
大丸製作所 3
TEL. 03(6450)6301
公式サイト