ウォッチジャーナリスト高木教雄が、最新作からマニアックなトリビアまで、腕時計にまつわるトピックを深く熱く語る。第2回は、前回に引き続き、2019年新作時計発表会「TIME TO MOVE」から3ブランドをピックアップ。高級時計にふさわしい美を織り成す、職人技に注目した

BY NORIO TAKAGI

 ブレゲと同じくTIME TO MOVEで新作を披露した「JAQUET DROZ(ジャケ・ドロー)」と「HARRY WINSTON(ハリー・ウィンストン)」もまた、それぞれが得意とする装飾技術を駆使し、来場者を魅了した。

 スイスのジュウ渓谷の街ラ・ショー・ド・フォンに時計産業をもたらした偉人の名を今に受け継ぐジャケ・ドローが得意とするのは、“エナメル技術”。時分針を上にオフセットし、その下に大振りな秒インダイヤルを持つ「グラン・セコンド」は、18世紀に製作された懐中時計をモチーフとするメゾンのアイコンである。そのコレクションに今年、初めてクロノグラフ機構が搭載された。

画像: ジャケ・ドロー「グラン・セコンド クロノグラフ アイボリーエナメル」 予価¥3,370,000 <43mm / 18KRG、自動巻き、アリゲーターストラップ>世界限定88本。2019年11月発売予定 ジャケ・ドロー ブティック銀座 TEL. 03(6254)7288 COURTESY OF JAQUET DROZ

ジャケ・ドロー「グラン・セコンド クロノグラフ アイボリーエナメル」予価¥3,370,000
<43mm / 18KRG、自動巻き、アリゲーターストラップ>世界限定88本。2019年11月発売予定
ジャケ・ドロー ブティック銀座
TEL. 03(6254)7288
COURTESY OF JAQUET DROZ

 ダイヤル中央にある巨大な針が、クロノグラフの秒積算を司る。スチールを熱して発色させるという、伝統的な技術で鮮やかなブルーを呈するその針と、明確なコントラストを成すアイボリーのダイヤルは、高温で焼き上げるグラン・フー・エナメル製。そのしっとりとした深みのある色味と質感とは、グラン・セコンドならではの大きな余白によってより際立って見える。リューズと同軸にクロノグラフ用のボタンを置く古典的なワンプッシュ式という機構が、クラシカルな外観に良く似合う。

 一方で、ハリー・ウィンストンは、“宝飾技術”で魅せた。ダイヤルに荘厳で華麗な幾何学模様を織り成したのは、イタリアの古都ラヴェンナに古くから伝わる「マイクロモザイクガラス細工」だ。ゴールドプレートに手作業でセッティングした色ガラスは、炉熱で表面をコーティングした後に手で磨き上げられ、宝石のような輝きを得ている。その鮮やかな配色とダイヤモンドの煌めきとが融和した幾何学模様のダイヤルは、まさに工芸品であり芸術品。“キング・オブ・ダイヤモンド”の異名に、ふさわしい新作だと言えよう。

画像: ハリー・ウィンストン 「HW プルミエール・プレシャス マイクロモザイク オートマティック 36mm」 予価¥5,000,000 <36mm / 18KWG、ダイヤモンド、自動巻き、アリゲーターストラップ>世界限定30本。2019年11月発売予定 ハリー・ウィンストン クライアントインフォメーション フリーダイヤル: 0120-346-376 COURTESY OF HARRY WINSTON

ハリー・ウィンストン
「HW プルミエール・プレシャス マイクロモザイク オートマティック 36mm」予価¥5,000,000
<36mm / 18KWG、ダイヤモンド、自動巻き、アリゲーターストラップ>世界限定30本。2019年11月発売予定
ハリー・ウィンストン クライアントインフォメーション
フリーダイヤル: 0120-346-376
COURTESY OF HARRY WINSTON

 これら各々に異なる工芸技巧を凝らし、美を創出した外装に潜めるのは、いずれも機械式ムーブメントだ。19世紀当時に完成された基本原理は今も変わらず、定期的にメンテナンスをすれば100年以上使うことができる。たとえ壊れても、コンピューターや電気機器とは違って、各パーツは将来も再生が可能だ。つまり機械式ムーブメントだからこそ、工芸的な美しさを持つ外装は、単なる装飾品になることなく、時計としての価値も末永く保ってくれる。機械式高級時計は、そのメカニズムと外装に宿る優れた“職人技術の価値”と“文化”を未来へと伝える。

高木教雄(NORIO TAKAGI)
ウォッチジャーナリスト。1962年愛知県生まれ。時計を中心に建築やインテリア、テーブルウェアなどライフスタイルプロダクトを取材対象に、各誌で執筆。スイスの新作時計発表会の取材は、1999年から続ける。著書に『「世界一」美しい、キッチンツール』(世界文化社刊)があり、時計師フランソワ・ポール・ジュルヌ著『偏屈のすすめ』(幻冬舎刊)も監修

 

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