ロンドンの大英博物館で、ファッションショーが開催された。モデルが着こなすのは明日のデザイナーを夢見る日本と英国の学生の作品。山本寛斎はショーに参加する学生を指導した。そのイベントを経て、彼が改めて語った、仕事の流儀とこれから

BY MASANOBU MATSUMOTO

 90年代以降、寛斎はファッションデザイナーの枠を超え、国内外の数々のイベントをプロデュースするようになる。パリ、ニューヨーク、東京のコレクションに参加してきたが、デビューして20年を機に、ファッションに留まらず、もっとたくさんの人を楽しませたい、感動を共有したいという思いが強くなったという。そして、音楽や舞踏などの要素を取り入れたスペクタクルなショー『KANSAI SUPER SHOW』が1993年のロシア・モスクワ(赤の広場)を皮切りに、ベトナム、インドなど世界各地で開催。延べ360万人以上の人々を魅了してきた。

画像: (写真左)漫画の吹き出しや擬音にインスピレーションされた瀬戸川裕太(エスモード ジャポン)の作品 (写真左)猪名川あや(文化服装学院)は、漫画の世界に住む女神を衣装で表現した Ⓒ AMBER MUIR 2019

(写真左)漫画の吹き出しや擬音にインスピレーションされた瀬戸川裕太(エスモード ジャポン)の作品
(写真左)猪名川あや(文化服装学院)は、漫画の世界に住む女神を衣装で表現した
Ⓒ AMBER MUIR 2019

画像: 山本寛斎がデザインした姫路レザーの衣装を身にまとったロンドン在住のDJ Takakiと津軽三味線奏者、一川響 Ⓒ 2019 CLIVE ARROWSMITH

山本寛斎がデザインした姫路レザーの衣装を身にまとったロンドン在住のDJ Takakiと津軽三味線奏者、一川響
Ⓒ 2019 CLIVE ARROWSMITH

 なぜイベントをやるのか?「理屈ではないんですよ。人生を楽しむということを、私はイベントに置き換えているだけ。本能、直感に蓋をしない。ただ、 “みんなが参加者になっている”ことがすごく重要。そうやって現地の人に関わってもらい、現地の文化を融合しながら何かを創り上げることで、国境を超えて人と人が友だちになる。ひいては国と国とが良い関係になっていくんです」

画像: (写真左)島谷達廣(武蔵野美術大学)の作品は『AKIRA』と現代社会の重なりをテーマに崩壊と構築を表現 (写真右)細矢さくら(バンタンデザイン研究所)は、漫画のなかで強調される目と擬音をモチーフにした Ⓒ AMBER MUIR 2019

(写真左)島谷達廣(武蔵野美術大学)の作品は『AKIRA』と現代社会の重なりをテーマに崩壊と構築を表現
(写真右)細矢さくら(バンタンデザイン研究所)は、漫画のなかで強調される目と擬音をモチーフにした
Ⓒ AMBER MUIR 2019

 話を聞いていくと、寛斎はいつも忙しく動き回っていることがよくわかる。今年3月には人生で初めて北極圏を訪れた。今回のロンドン滞在中には、ミラノやスコットランドも日帰りで訪問。そこで何を見たか、どんな発見があったか、寛斎は事細かに話してくれた。「スコットランドでは、昨年開館したヴィクトリア&アルバード博物館の別館、V&A ダンディーで講演会を行いました。このV&A ダンディーは、隈研吾さんが設計した建物で、とにかくすごく気に入ってしまってね。それで、来年はここでイベントをやる!と決めた」と言い切る。

 会期は? 博物館とは話がついているのか? そう問うと、寛斎は「まだ、そんなのは決まっていないよ」と言い、にやりと笑った。「でも、やる。やるのは簡単。私がまずエネルギーを心底注いで、動き回ればいいのですから」

画像: 大勢の人で賑わった大英博物館の会場。観客は日英両国の学生たちを大きな拍手で称賛した ⒸBRITISH MUSEUM 2019

大勢の人で賑わった大英博物館の会場。観客は日英両国の学生たちを大きな拍手で称賛した
ⒸBRITISH MUSEUM 2019

山本寛斎(KANSAI YAMAMOTO)
デザイナー、プロデューサー。1944年生まれ。71年、ロンドンで日本人として初めてファッションショーを開催し世界的に注目を集める。74年から92年までパリ・ニューヨーク・東京コレクションに参加。93年以降は、ファッションデザイナーの枠を超え、スペクタクルなライブイベントもプロデュース。世界中で『KANSAI SUPER SHOW』や『日本元気プロジェクト』を開催し、総動員数は360万人以上。www.kansai-inc.co.jp

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