先鋭的なセンスとクチュールの技を融合させ、ファッション界で強い存在感を放ち続けるバレンシアガ。2024年4 月、来日したセドリック・シャルビCEOに聞いた、混迷の時代におけるラグジュアリービジネスのあり方とは?

BY MAKIKO TAKAHASHI, PORTRAIT BY YASUTOMO EBISU

画像: セドリック・シャルビ(Cédric Charbit) バレンシアガCEO。フランス出身。百貨店プランタンやイタリアのブランド、プッチを経て2012年、サンローランに入社。’16年から現職。世界規模でブティックを拡大し、eコマースの売り上げを増加させるなど同ブランドの業績を上げた。’21年、53年ぶりにクチュールコレクションを復活。物腰は柔らかくスマートだが、クリエーションやビジネスの話になると口調は情熱的に。バレンシアガはラグジュアリー企業グループ、ケリングの傘下にある。

セドリック・シャルビ(Cédric Charbit) バレンシアガCEO。フランス出身。百貨店プランタンやイタリアのブランド、プッチを経て2012年、サンローランに入社。’16年から現職。世界規模でブティックを拡大し、eコマースの売り上げを増加させるなど同ブランドの業績を上げた。’21年、53年ぶりにクチュールコレクションを復活。物腰は柔らかくスマートだが、クリエーションやビジネスの話になると口調は情熱的に。バレンシアガはラグジュアリー企業グループ、ケリングの傘下にある。

 バレンシアガといえば、いま最も革新的で、かつエモーショナルなラグジュアリーブランドといえるかもしれない。1917年、スペイン出身のクリストバル・バレンシアガが創業。その類いまれなオートクチュールの技や伝統を、現デザイナーのデムナが大胆な手法で現代に昇華させている。今年4 月、東京・銀座に旗艦店がオープンし、CEOのセドリック・シャルビ氏が来日。
「新時代に対応するラグジュアリーブランドとして、時を経てなお魅力を放つ"ニュー・タイムレス"の価値を発信しつづけたい」と語った。

画像: 2024年4 月にオープンした、銀座で初となるメゾンの旗艦店「BALENCIAGA GINZA」。新しく建て替えられた「TORAYA Ginza Building」の1 階から3 階までの3 フロアに、メンズ、レディス、バッグ、アイウェアなどが揃う。住所:東京都中央区銀座7 -8 -6

2024年4 月にオープンした、銀座で初となるメゾンの旗艦店「BALENCIAGA GINZA」。新しく建て替えられた「TORAYA Ginza Building」の1 階から3 階までの3 フロアに、メンズ、レディス、バッグ、アイウェアなどが揃う。住所:東京都中央区銀座7 -8 -6

 銀座の新店舗は、老舗の和菓子店「とらや」のビルの1 ~ 3 階で、石や金属を使ったモダンな内装が特徴。シャルビ氏は「無機質な空間からクチュールの世界まで一気にワープするような感覚を味わってほしい。人々がその人らしく、そしてもっとバージョンアップして見えるようにお手伝いするのが私たちの仕事ですから」とほほ笑む。現在の日本はインバウンド消費こそ盛んだが、円安や高齢化などで高級品の市場としては厳しいのでは?と水を向けると、「いや、面白いことにバッグの『ル・シティ』など定番商品は、日本で幅広い年代に人気です。日本ほどあらゆる人々がファッションに興味をもつ国はあまりないのですよ」と説明する。長く続く伝統やサヴォアフェール(職人技)に敬意を払い、老舗「とらや」のビルに出店したのも「日本文化への尊敬と愛があったから」。

 旗艦店のオープン時に開催されたアーカイブ展では、創始者クリストバルによる40~60年代のオートクチュールのきわめて繊細で流麗なドレスやガウンの数々を展示。時を経て、刺しゅうがほつれ、絹地はすり切れ、シミや補修の跡があるものも。「傑作と呼ばれた服がどうやって着られてきたのか。ドレスが物語を紡いでくれる」とシャルビ氏。そして「創始者は常に常識を覆し、既成の境界に挑んだ。不完全さを尊び、多様な美を追求する天才だと思う」とも。

画像: 旗艦店オープン記念のアーカイブ展「Dresses Beyond Time」では、創始者クリストバル・バレンシアガによる貴重なオートクチュール作品を展示。いずれも華麗なデザインだが、摩耗や色褪せ、酸化などがあり、持ち主の個人的な歴史を物語っていた。愛らしい花柄のエンパイアドレスは1958年夏の作品。経年で胸元の結び目がほどけている

旗艦店オープン記念のアーカイブ展「Dresses Beyond Time」では、創始者クリストバル・バレンシアガによる貴重なオートクチュール作品を展示。いずれも華麗なデザインだが、摩耗や色褪せ、酸化などがあり、持ち主の個人的な歴史を物語っていた。愛らしい花柄のエンパイアドレスは1958年夏の作品。経年で胸元の結び目がほどけている

画像: あまりにもろく繊細な作品は、ベッドに安置するように展示されていた。ほつれたスパンコール刺しゅうがその緻密さを強調し、生地の破れ目からは構造が推測できる

あまりにもろく繊細な作品は、ベッドに安置するように展示されていた。ほつれたスパンコール刺しゅうがその緻密さを強調し、生地の破れ目からは構造が推測できる

 現デザイナーのデムナも創始者の哲学を受け継いでいる。ストリートファッションで一時代を築いたデムナは、バレンシアガでもその先鋭的な感覚を、世界最高峰のクチュールの技法を使って作品に落とし込む。ジョージア(旧グルジア)出身で、90年代に自国の紛争で難民になった経験から、平和を希求するメッセージ性の高いショーでも知られる。創始者と同じく、現在のファッションにおける多様性の表現の先駆者のひとりでもある。「デムナがやろうとしていることは、人々の見方や考え方に挑み、美を再定義して、新しい美をつくること。今のファッションに必要なイノベーションを生み出し、世界を変えていくことができる逸材だと思う」

 CEOとして世界中で約4 千人の社員を束ねる。「新しい挑戦に対してノーと言いたがる者はいないし、今後世の中がどうあるべきかを考えている社員が多い」そうだ。「これからは人々の想像を超えるような新しいやり方で、エクスペリエンス(体験、実感)をさらに創造していきたい。3 年前には、創始者が手がけたオートクチュールを53年ぶりに復活させました。次は香水かな。モットーは"前へ!" です」

画像: 今年6 月に発表された53rd クチュールコレクションより。ロックTシャツ風トップスの人物柄は写真プリントに見えて、実は職人が約70時間かけたというごく細かい手描き

今年6 月に発表された53rd クチュールコレクションより。ロックTシャツ風トップスの人物柄は写真プリントに見えて、実は職人が約70時間かけたというごく細かい手描き

画像: (左)同コレクションのファーストルック。創始者から続く象徴的なコクーンシルエットを、ストリートウェアを思わせるデザインに。デニムの色褪せも丹念な手作業による。 (右)ブランド特有のビッグシルエットを、アウトドアウェアのデザインに落とし込んだ PHOTOGRAPHS: COURTESY OF BALENCIAGA

(左)同コレクションのファーストルック。創始者から続く象徴的なコクーンシルエットを、ストリートウェアを思わせるデザインに。デニムの色褪せも丹念な手作業による。
(右)ブランド特有のビッグシルエットを、アウトドアウェアのデザインに落とし込んだ

PHOTOGRAPHS: COURTESY OF BALENCIAGA

お問合せ先:バレンシアガ クライアントサービス
TEL. 0120-992-136

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