「安価なチリ」とはもうひと昔前の話。いまや高級路線の「プレミアム・チリ」が台頭している。トレンドに終わらないチリワインの実力の秘密を、「ヴィーニャ・セーニャ」オーナーのエデュアルド・チャドウィックに聞いた

BY KIMIKO ANZAI, PHOTOGRAPHS BY SHINSUKE SATO

 チリの大手ワイナリー「ヴィーニャ・エラスリス」を所有する家に生まれ育った彼は、大学を卒業後、父のワイナリーに参加。その後、フランスに留学し、ボルドーでワインの権威のエミール・ペイノー教授の薫陶を受けた。ボルドーで数々の銘醸ワインに触れたことで、カベルネ・ソーヴィニヨンに魅了されたという。そして、「いつか、世界に誇れるチリワインを造りたい」と願うようになる。

画像: 寒流の流れる太平洋から40キロの内地に位置するアコンカグア・ヴァレーの丘陵地。「セーニャ」の42ヘクタールのブドウ畑では、2005年からビオディナミ農法を採用している

寒流の流れる太平洋から40キロの内地に位置するアコンカグア・ヴァレーの丘陵地。「セーニャ」の42ヘクタールのブドウ畑では、2005年からビオディナミ農法を採用している

 その夢が現実に向かって動き出したのは、1991年のことだった。カリフォルニアの故ロバート・モンダヴィが初めてチリを訪れた時、運転手として案内役を引き受けたのだ。
「アコンカグア・ヴァレーを訪れた時、モンダヴィ氏が『なんて素晴らしいテロワールなんだ』と叫びました。チリの土壌の可能性に気づいたのは、まさにこの時です。あのモンダヴィ氏が言うのだ、ここなら素晴らしいワインが造れると確信しました。モンダヴィ氏には、今も心から感謝しています」

 それを機に、チャドウィックは、ロバート・モンダヴィの息子で「オーパス・ワン」の初代醸造責任者でもあったティム・モンダヴィとともに、サンチャゴから100キロメートル北にあるアコンカグア・ヴァレーにブドウ畑を開墾した。ここは、冷たい海風が谷間に吹き渡る冷涼な地で、ブドウがゆっくりと熟す。加えて、他のワイン産地から孤立した場所にブドウを植えることで、どこの畑からも影響を受けない、完全なビオディナミ農法を目指したのだ。その後、ティム・モンダヴィはカリフォルニアでの仕事に集中するため「セーニャ」から手を引くが、チャドウィックは、さらにひとつひとつの醸造工程を見直し、「精緻でエレガントな味」をつくり出すために、ワイン造りに邁進した。その日々の努力が、栄光へと繋がったのだ。

画像: チリワインとして初めてジェームズ・サックリングの100ポイントを獲得した 「セーニャ 2015 ヴィンテージ」。 サックリングは「穏やかさと引き締まった酒質を持つ、 複雑で完全なワイン」とコメントしている

チリワインとして初めてジェームズ・サックリングの100ポイントを獲得した
「セーニャ 2015 ヴィンテージ」。
サックリングは「穏やかさと引き締まった酒質を持つ、
複雑で完全なワイン」とコメントしている

 そして昨年、また新たに彼のもとにうれしいニュースが届いた。ワイン業界で影響力をもつワイン評論家ジェームズ・ザックリングによって「セーニャ2015」に“100点”がつけられたのだ。「本当にうれしいことでした。この評価は、チリが世界最高のワインを造れるという証でもある。でも、私は、これで満足してはいけないと思っています。私は、うちのワイナリーだけでなく、チリワイン全体を向上させていかなくてはいけないと考えています。チリのワインはおいしいと、世界中のワインファンに知っていただきたいのです」

 そう熱く語る彼に、まさしくこの日、さらなる朗報が飛び込んできた。チャドウィックが、権威あるワイン専門誌『デキャンター』の「デキャンター・マン・オブ・ザ・イヤー2018」に選出されたのだ。チリワインの信頼性を、さらに確固たるものにした一瞬だった。「プレミアムチリワイン」は、ワインの世界においてもトレンドのひとつとなっている。「オーパス・ワンやサッシカイアの後に来るのはセーニャだ」というワイン愛好家も多い。確かに、その“流れ”は感じる。だが、心に留めておきたいのは、そのトレンドの奥には、ひとりのワイン生産者の熱い思いがあるということだ。造り手の愛が込められたワインは、確実に、飲む人を幸せにしてくれるに違いない。

 

This article is a sponsored article by
''.