「ひらまつ」の合宿

Retreat To Move Forward
8月、東京・広尾のフランス料理店「レストランひらまつ 広尾」は1カ月間休業する。スタッフが料理だけに向き合う夏の“合宿"に密着。ボーダーレス化する日本のフランス料理はどこへ向かうのか――?

BY MIKA KITAMURA, PHOTOGRAPHS BY MASAHIRO GODA

 研修所の朝は8時の朝食から始まる。この日はパリ、京都、大阪、札幌、東京から、料理長たちが集まってきていた。3日間のスパンでそれぞれが料理の試作を繰り返し、最終日までに完成させるという。

 大樹は、ふだん店では使う機会のないカレイの調理に取り組んでいる。「レストランひらまつ パリ」の中川 尚はセロリラブ(根セロリ)の塩包み焼きを。ひらまつが初めて手がけた京都の料亭「高台寺 十牛庵」を預かる藤原誠は、鹿肉料理で悩んでいた。大樹にアドバイスを受けながら、鹿のロース肉をたこ糸で巻き、小麦粉をはたいてバターでゆっくり焼いていく。いわゆるムニエルと呼ばれるフランス料理の調理法だ。西京味噌とごま油のソースを添えたが、このソースが本当によいのか。食べやすい厚さはどれくらいか――。互いの料理を試食し、意見を述べ合い、さらに試作が続く。

画像: 鹿肉は、たこ糸の巻き方や火の入れ方をあれこれ試行錯誤。フランス料理の技を取り入れた日本料理の一品になる 他の写真もみる

鹿肉は、たこ糸の巻き方や火の入れ方をあれこれ試行錯誤。フランス料理の技を取り入れた日本料理の一品になる
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 3日目の午後、研修所は前日とは違う緊張感に包まれていた。料理長たちが順番に料理を仕上げ、平松宏之の試食後、講評を受けるのだ。まずは大樹の料理から。マコガレイをソテーし、ソース・ナンチュア(ザリガニのソース)、セロリラブのローストを添えた。「カレイは魚の中でも火入れが難しい。火入れ具合がもう少しだね。ソース・ナンチュアは爽やかで、セロリラブとの組み合わせがうまい」。宏之は続ける。「料理って、ひとつにこだわると先が続かない。ソースとセロリラブの組み合わせが素晴らしいから、たとえば川魚の料理に仕立ててもいいな」

画像: エクルビス(ザリガニ)で作るソース・ナンチュア(甲殻類のクリームソース)。フランス・ジュラ地方の高価な白ワイン、ヴァンジョーヌをなんと一本まるごと鍋の中に! 他の写真もみる

エクルビス(ザリガニ)で作るソース・ナンチュア(甲殻類のクリームソース)。フランス・ジュラ地方の高価な白ワイン、ヴァンジョーヌをなんと一本まるごと鍋の中に!
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画像: 大阪「ラ・フェット ひらまつ」の倉卓嗣による「ぼたんエビのマリネ シャルトリューズのグラニテ添え」。三日がかりで試作した料理を、最終日に全員で試食する 他の写真もみる

大阪「ラ・フェット ひらまつ」の倉卓嗣による「ぼたんエビのマリネ シャルトリューズのグラニテ添え」。三日がかりで試作した料理を、最終日に全員で試食する
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 大樹は言う。「うまいかうまくないか。はっきり言われる。でも、必ず次につながるヒントをくれるんです」。札幌から駆けつけた「レストラン MINAMI」の南 大輔は、「一日じゅう、料理のことだけを考えていられる時間は貴重です。みんなの料理への熱量も、すごい。刺激を受けないわけがありません」と語った。

 

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