酒蔵を持たずに日本酒造りと販売を行う「日本酒応援団」。全国6蔵とともに、地域の名を冠した日本酒を造っている。彼らがパートナーを組む3つの蔵を取材。確固たる信念のもとに独自のスタイルを貫くそれぞれの酒蔵の、個性豊かな流儀を紹介する最終回

BY MIKA KITAMURA, PHOTOGRAPHS BY TETSUYA MIURA

 いまでこそ、米を自家栽培している酒蔵は少しずつ増えているが、30年前は皆無だったと言う。丸本は3反の田から米作りを始めた。「日本酒業界では、酒蔵が米を育てるという考えが欠落しています。ワインと違い、酒造りにおいては製造プロセスのほうが味を決める強いファクターになります。仕上がりを左右するのは、酒造りの技術が80%、原料の米が20%の割合でしょうか。しかしその20%にこだわることで、80%の造りの部分を助け、何かが生まれるのです」

画像: 田植え時期の蔵は静かだ。「酒造りの基本は掃除です。蔵の清潔さがお酒の味を左右しますから」と丸本は語る。ぴかぴかに磨かれたには米粒ひとつ、ちりひとつ落ちていない

田植え時期の蔵は静かだ。「酒造りの基本は掃除です。蔵の清潔さがお酒の味を左右しますから」と丸本は語る。ぴかぴかに磨かれたには米粒ひとつ、ちりひとつ落ちていない

 試行錯誤を繰り返し、酒造りに適した米を独自に育ててきた。いまは米作り専従の社員もいる。現在、田んぼは17ha、甲子園の4倍の広さまで広がった。この田んぼ1枚ずつの土壌分析を行い、データをエクセル上で管理する。古原は笑いながら言う。「エクセルシートを見せてもらいましたが、何度見ても細かすぎて僕には理解不能です。しかし丸本さんの頭には、田んぼ1枚1枚の状態が正確に入っているんです。この土壌でこの日照時間だったらこの銘柄にいい、とか。すご過ぎる!」

 山田錦と朝日米という2種類の酒造好適米を栽培し、酒造りに適した米に育てる。同時に、使用目的(麹米か掛米か)に合わせて田んぼごとに田植えから収穫、乾燥、保管までを管理している。「米作りと酒造りを全力でやっています。自社栽培米で造る酒はいまのところ半分にもなりませんが、将来はすべての酒を自社栽培米で造ることが夢ですね」と丸本は語る。

画像: 本日の田植えチーム。一般参加者は、夫婦で、友達と、親子でとさまざまだが、全員もちろん日本酒好き!

本日の田植えチーム。一般参加者は、夫婦で、友達と、親子でとさまざまだが、全員もちろん日本酒好き!

 代表銘柄は「竹林」。自社栽培米の山田錦と、竹林寺山から流れる伏流水を使い、米の味を生かして造られている。純米酒「竹林 ふかまり」は馥郁とした香り、キレのよさに米の旨味が深い余韻を残す。一方、もうひとつのブランド「賀茂緑」の、特にカップ酒は「これを飲めば、あなたもれっきとした岡山県人です」と丸本が言うように、地元の人々に長く愛されている酒だ。

画像: (左)「竹林 純米大吟醸 かろやか」<750ml>¥1,600 香り華やか。甘美な岩清水を思わせる軽い味わいにして、ほのかな甘み (右)「かもみどり 純米」<750ml>¥1,060 酸と旨味のバランスが絶妙な芳醇な味わい。麹米に蔵人が栽培した山田錦を使用

(左)「竹林 純米大吟醸 かろやか」<750ml>¥1,600
香り華やか。甘美な岩清水を思わせる軽い味わいにして、ほのかな甘み
(右)「かもみどり 純米」<750ml>¥1,060
酸と旨味のバランスが絶妙な芳醇な味わい。麹米に蔵人が栽培した山田錦を使用

 帰り際、“宇宙人”丸本は爽やかな笑顔で見送ってくれた。日本酒応援団とのコラボレーションによる『KAMOGATA』のラベルに描かれたロゴデザインは、地球を意味している。「うちの蔵の裏には竹林寺山(ちくりんじやま)があり、東アジア最大の反射望遠鏡を備えた天文台があります。このお酒を通して宇宙に繋がっていると思っていただきながら飲み、ハッピーになってくださったら何よりです。ハッピーチェーン、幸せの輪が広がることが願いです」。丸本が始めた酒蔵による米作りの潮流は広がり、人々を潤す芳醇の海となるだろう。日本酒の未来への新しい道筋が見えたような気がした。

問い合わせ先
丸本酒造
住所:岡山県浅口市鴨方町本庄2485 
電話: 0865(44)3155
公式サイト

 

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