酒蔵を持たずに日本酒造りと販売を行う「日本酒応援団」。全国6蔵とともに、地域の名を冠した日本酒を造っている。彼らがパートナーを組む3つの蔵を取材。確固たる信念のもとに独自のスタイルを貫くそれぞれの酒蔵の、個性豊かな流儀を紹介する

BY MIKA KITAMURA, PHOTOGRAPHS BY TETSUYA MIURA

 埼玉県上尾市。五街道のひとつである中山道沿いの宿場町として、江戸時代には諸大名の参勤交代や、皇族下向の中継地として栄えてきた。酒どころのイメージはないが、じつは荒川水系などの質のよい水脈があるこの地で、その水を使って酒造りをしている酒蔵が「北西酒造」だ。明治27年(1894年)に開業し、今年、創業125年を迎える。

画像: 2008年に建てられた「北西酒造」新社屋には、酒蔵と蕎麦処の「東蔵」を併設。広々としたオープンキッチンにはジャズが流れ、テラス席はペット同伴可。2階には個室があり、会食や接待にも。地元の人たちのみならず、遠方からの客たちが北西酒造の酒ととも食を楽しむ

2008年に建てられた「北西酒造」新社屋には、酒蔵と蕎麦処の「東蔵」を併設。広々としたオープンキッチンにはジャズが流れ、テラス席はペット同伴可。2階には個室があり、会食や接待にも。地元の人たちのみならず、遠方からの客たちが北西酒造の酒ととも食を楽しむ

 2018年、桜の咲くころ、北西酒造と日本酒応援団、髙島屋のコラボレーションによる酒「AGEO 純米大吟醸 しずく斗瓶取り2018」の斗瓶取り作業の日に、ここを訪れた。“斗瓶取り”とは、布袋に麹を入れてタンクに吊るし、もろみそのものの重みで自然に酒が滴り落ちるのを待つ酒造りの手法だ。時間と手間がかかるが、雑味がなく、華やかでフレッシュな味わいになる。

 この日の作業は北西酒造、日本酒応援団、髙島屋のメンバーが総出で参加。布のにおいがつかないよう何度か水にさらした新しいさらしを袋状にし、タンクに渡した棒にひとずつ吊り下げていく。袋が万が一落ちたらタンクの酒すべてがダメになってしまうので、1袋ずつしっかり縛っていくのも相当な手間だ。

画像: タンクに掛けられたさらしの袋に、ホースでもろみを入れていく「斗瓶取り」の作業。もろみを混ぜる人、袋を開く人、ホースで1滴ももらさぬように袋に入れる人。緊張感の中、それぞれが声をかけ合い、小気味よいテンポで作業が進む

タンクに掛けられたさらしの袋に、ホースでもろみを入れていく「斗瓶取り」の作業。もろみを混ぜる人、袋を開く人、ホースで1滴ももらさぬように袋に入れる人。緊張感の中、それぞれが声をかけ合い、小気味よいテンポで作業が進む

 米、麹、水を発酵させたものをもろみと呼ぶが、このもろみをさらしの袋に入れれば、10分ほどでタンクに酒が滴り落ちてくる。一斗(18ℓ)瓶をタンクの口の下に置き、栓を開けると、少し濁りのある酒がほとばしった。これが「荒ばしり」と呼ばれる酒となる。タンクから直接お猪口に汲み、全員で試飲する。ほのかにシュワシュワッとした若々しい風味だ。皆、目を見合わせ、顔から笑みがこぼれる。数カ月の酒造りの見事な結晶だ。この日、作業着を着て仕事をする人たちの中に、北西隆一郎はいた。

画像: 斗瓶に勢いよく流れ落ちる新酒。北西酒造の斗瓶は、戦後間もなく作られたもの。袋から滴り落ちた酒をそのまま斗瓶に取るので、斗瓶ごとに風味が異なるという。少量で貴重な酒は品評会用のほか、高級ラインの酒として販売される

斗瓶に勢いよく流れ落ちる新酒。北西酒造の斗瓶は、戦後間もなく作られたもの。袋から滴り落ちた酒をそのまま斗瓶に取るので、斗瓶ごとに風味が異なるという。少量で貴重な酒は品評会用のほか、高級ラインの酒として販売される

画像: 瓶に直接取るのは「直汲み」と呼ばれる。酒が空気に触れずに瓶詰めされるので、フレッシュな味わいに。この日は、四合瓶約78本分を直汲みにした

瓶に直接取るのは「直汲み」と呼ばれる。酒が空気に触れずに瓶詰めされるので、フレッシュな味わいに。この日は、四合瓶約78本分を直汲みにした

 

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