さまざまな分野で活躍する“おやじ”たち。彼らがひと息つき、渋い顔を思わずほころばせる……そんな「おやつ」とはどんなもの? 偏愛する“ごほうびおやつ”と“ふだんのおやつ”からうかがい知る、男たちのおやつ事情と知られざるB面とは。連載第16回は俳優の八嶋智人さん

BY YUKINO HIROSAWA, PHOTOGRAPHS BY TAKASHI EHARA

 これまでにいろいろな方から助言いただいたことは、常にクリアするように心がけ、気づけば芸歴30年。活躍の場はどんどん広がり、背負う役割の重みも増してきた。仕事が途切れないようにするための心がけはあるのだろうか?
「それは正直、僕が教えてもらいたいくらいです(笑)。しいて言えば、舞台であろうが、映画であろうが、コマーシャルであろうが、基本、台本のようなものがあり、ひとつの役柄を表現するために僕が求められていて、そのイメージを立体化していくという大枠は変わらない。だけど行く先々で少しずつ異なるルールはあるので、そのなかで最大限のパフォーマンスをするということでしょうか」。

 さらに、俗に言う“芝居がうまい”というのは、どんなことなのかを聞いてみた。「“芝居がうまいね”という表現は、役者としては、本当はあまりうれしくない言葉なんです。努力があって、腕もあって、その場を俯瞰する目もある本当にすごい役者というのは、作品の中にす~っと収まってしまんですよ。うまさすら分からないんです。例えば、同じ事務所の先輩の段田安則さんと芝居をすると、僕をはじめ、周りの役者たちがすごく上手に演じているように見え、シーンが一気に豊かになるんです。動線や声のトーン、芝居の雰囲気、心の動かし方…… 段田さんが静かに誘導してくださっていることにふと気づく。今回の舞台『泣くロミオと怒るジュリエット』で久しぶりに共演させていただき、またすごい現場を体験できて、ありがたい気持ちでいっぱいです。
 20代で事務所に所属したとき、テレビ局とかに『5年後は段田安則です』と僕を売り込んでくれたのですが、いつまで経っても段田さんにはなれないし、もちろん距離は縮まっていない。まだまだだなぁと思いますね」。

 八嶋さんの言葉、仕事への姿勢、現場でのたたずまいには、いわゆる俳優としてだけでなく、ひとりの社会人として、人間として、楽しく豊かに生きていく秘訣がそこかしこに隠されている。

八嶋智人(NORITO YASHIMA)さん
1970年奈良県生まれ。1990年に松村武らと「劇団カムカムミニキーナ」を旗揚げ。劇団活動以外にも、野田秀樹さんや三谷幸喜さんらの外部作品で活躍。ドラマ、映画、バラエティでも人気が高い。現在は、Bunkamura シアターコクーンにて、『泣くロミオと怒るジュリエット』(〜2020年3月4日(水)に出演中
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