さまざまな分野で活躍する“おやじ”たち。彼らがひと息つき、渋い顔を思わずほころばせる……そんな「おやつ」とはどんなもの? 偏愛する“ごほうびおやつ”と“ふだんのおやつ”からうかがい知る、男たちのおやつ事情と知られざるB面とは。連載第19回はファッションデザイナーの森永邦彦さん

BY YUKINO HIROSAWA, PHOTOGRAPHS BY TAKASHI EHARA

 ファストファッションのコストパフォーマンスのよさや、ほどよい機能性と一般うけする尖らないデザインの服が世を席巻するなか、一途に、深く、まだ見ぬ世界を求めて服をデザインし、創り続ける人がいる。「アンリアレイジ」のデザイナー、森永邦彦さんだ。

「おやつはすごく好きなんですけど、語れるほどのエピソードが僕にあるかな。そのレベルではないような気も……」と小さな声でつぶやいたあと、うつむいて考え込む。が、数分後、脳内に点在していた過去の記憶や思い出が線になった瞬間、まるで湧き出る泉のように、おやつへの愛を一気に語り始めた。

「国立市出身なのですが、小さい頃から生活圏内にあった『銀座ウエスト』のお菓子を食べていまして。“なんで銀座ってついてるのかな!? ”と、ぼんやりとした疑問を抱きながらも、気さくな店員さんがいる近所の直売所で買っていたので国立のお菓子だと信じていて。でも大人になって銀座本店や青山店に行ったとき、リーフパイやヴィクトリア、シュークリーム…… 小さい頃に食べていたおやつの原風景が重なり、すべて銀座ウエストのものなのだと、今さら気づきまして(笑)」

青山に構える事務所には、銀座ウエストに加え、「ヨックモック」のシガール、「キャンティ」のレモンクッキーなど、常に好きなブランドのおやつがスタンバイしているという。「夜は自宅にこもって作業に集中しますが、事務所にいる昼の時間帯は打ち合わせがあるし、来客も多いので。と言いつつ、結局、僕が食べているのが実情(笑)……。考え抜いて、疲れたらおやつをつまむ、それをずっと繰り返しています。『よく太らないね』と言われるくらい、たくさん食べます」

画像: 「一見するとアヴァンギャルドなものですが、それが普遍的なものとして存在する。おやつも、地に足のついたものづくりをしたものに惹かれます」。おやつの下に敷いてあるのは、森永さんの代名詞のひとつでもあるパッチワークの集大成、2,000ピースの端切れを繋ぎ合わせたファブリックだ (左)「ヴィクトリア」1個¥180 (右)「リーフパイ」5枚¥600 銀座ウエスト本店 TEL.03(3571)1554

「一見するとアヴァンギャルドなものですが、それが普遍的なものとして存在する。おやつも、地に足のついたものづくりをしたものに惹かれます」。おやつの下に敷いてあるのは、森永さんの代名詞のひとつでもあるパッチワークの集大成、2,000ピースの端切れを繋ぎ合わせたファブリックだ

(左)「ヴィクトリア」1個¥180
(右)「リーフパイ」5枚¥600
銀座ウエスト本店
TEL.03(3571)1554

 2003年にブランドを立ち上げ、東京コレクションでは10年続けて作品を発表。’15年の春夏シーズンからパリに発表の場を移した。「シルエットの美しさやエレガンスから距離を置き、人を驚嘆させたり高揚させるようなデザインや、ファッションとテクノロジーの融合などを追求する―― 僕らの創るそんな服が、新天地で出会う人々の目にはどう映るのか? パリコレクションに対して憧れが強い世代でもあるので、グローバルに挑んでみたい気持ちもあって」

 最初はさんざんな評価だったと言うが、6年続けるうち、奇をてらうのではなく、自らが追い求めるユニークかつ革新的なデザインを服という日常に落とし込もうとする真摯な姿勢に、世界中のモードの目利きが注目するようになった。2019年、初めて応募した「第6回 LVMH ヤングファッションデザイナープライズ」では、1,700組以上の中からファイナリストに。また、「フェンディ」の’20-21年秋冬メンズコレクションでは、日本人デザイナーとの初コラボとなる作品を手がけた。

 

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