さまざまな分野で活躍する“おやじ”たち。彼らがひと息つき、渋い顔を思わずほころばせる……そんな「おやつ」とはどんなもの? 偏愛する“ごほうびおやつ”と“ふだんのおやつ”からうかがい知る、男たちのおやつ事情と知られざるB面とは。連載第19回はファッションデザイナーの森永邦彦さん

BY YUKINO HIROSAWA, PHOTOGRAPHS BY TAKASHI EHARA

 コロナ禍以前は、月に一度のペースでパリやミラノへフライト。「僕らは、糸になる前の段階の、色素から作っているんです。太陽光を浴びると黒になる透明の色素とか、光を浴びると赤に変わる白とか。そんな色素や糸などを日本国内で製造し、洋服にして、海外でコレクションとして発表することを繰り返していました。そのときの手土産が、海外でもすごく喜ばれる老舗『とらや』の最中、御代の春。以前、何かの資料で『とらや』は、変わらぬ美味しさを貫くため、小さな調整を繰り返していることを知りまして。伝統を守るために進化し続ける精神や姿に、ブランドとはこうあるべきだと感銘を受けました」。

 今年3月に開催した’20-21年秋冬のパリコレクションでのショーは、コロナ禍に見舞われながらもギリギリのタイミングで開催した。「普段ならば、ショーの舞台裏でモデルや各国のジャーナリスト、スタッフが合間につまむケータリングを用意するのですが、今回は、感染拡大を考慮して中止に」。じつは、スタッフも同行して、「とらや」の和菓子と「鈴廣」のかまぼこを振る舞う予定だった。「これまでも苗字が同じということで『森永製菓』にオリジナルのお菓子を作ってもらったり、職人にお願いしてお寿司を握ってもらったりしたことも。近場で調達したサンドウィッチという手もあるけれど、他のブランドとは違うことをやりたいし、日本文化の美意識も美味しさも伝えられますし」

画像: 平和な世が続くように、との思いを込めた縁起菓子。桜をかたどった紅色の皮には白餡、梅をかたどった白色の皮にはこし餡入り 「御代の春(みよのはる)」1個¥200 とらや ご注文承りセンター フリーダイヤル:0120-45-4121

平和な世が続くように、との思いを込めた縁起菓子。桜をかたどった紅色の皮には白餡、梅をかたどった白色の皮にはこし餡入り

「御代の春(みよのはる)」1個¥200
とらや ご注文承りセンター
フリーダイヤル:0120-45-4121

「僕らのブランドコンセプトは、“神は細部に宿る”。人の目が届きにくい、メインストリームとは呼ばれることのない“すき間”の部分を大切にし、自分がよいと思うものを注ぎ込み、全力で作ります。それは洋服に関して言えば付属品、例えばボタンなら中に小さいミニチュアや花を入れたり、裏側や縁にもデザインを施したり。それと同じく間食と呼ばれるおやつも、主食のすき間を埋めるもの。つまり、僕にとってはけっこう大切なものなんだ、と気づきました」

 ファッションデザイナーでありながら、なんだか哲学者や芸術家、サイエンステクノロジーの新技術を取り入れて服作りをおこなう、そんな森永さんに、コロナ禍によって激変するであろう、ファッション業界のこれからを聞いた。「大量生産が淘汰され、早すぎるサイクルが見直されるタイミングだと思います。業界の相対的な規模は確実に小さくなっていますが、テクノロジーや音楽、フード…… さまざまな分野と垣根を越えてつながることで可能性は広がるし、拡張できると信じています」

 では、デザイナーとしての目標は?「その服を着ている人がどんな気持ちになるか? その姿を見た人が何を思うか? 洋服は日常に変化をもたらす最小にして最大のアイテム。女性がコルセットから開放された瞬間や、はじめて女性のためのパンツ・ルックが発表された瞬間。“喪服”という認識が主流だった黒い服がモードとして昇華、確立された瞬間。 そういう日常がかわる瞬間がファッションの歴史には確かに存在します。ファッションとして日常になっていないものを日常にしてしまう―― そんな洋服を何かひとつでもデザインできたらいいな、と思います」

画像: 森永邦彦(KUNIHIKO MORINAGA)さん 1982年東京都生まれ。早稲田大学社会科学部在学中にバンタンデザイン研究所で服作りをスタート。2003年に「A REAL(日常)」と「UNREAL(非日常)」「AGE(時代)」を由来とした、ブランド「ANREALAGE(アンリアレイジ)」を設立。独創的なフォルム、色鮮やかなパッチワークデザインに加え、サイエンステクノロジーの新技術を取り入れて服作りをおこなう © ANREALAGE

森永邦彦(KUNIHIKO MORINAGA)さん
1982年東京都生まれ。早稲田大学社会科学部在学中にバンタンデザイン研究所で服作りをスタート。2003年に「A REAL(日常)」と「UNREAL(非日常)」「AGE(時代)」を由来とした、ブランド「ANREALAGE(アンリアレイジ)」を設立。独創的なフォルム、色鮮やかなパッチワークデザインに加え、サイエンステクノロジーの新技術を取り入れて服作りをおこなう
© ANREALAGE

 

This article is a sponsored article by
''.