TEXT&PHOTOGRAPHS BY JUNKO AMANO
京都を旅する際、滞在中に一度は訪れことが多い祇園エリア。今回は、祇園で上生菓子や上質な甘味をいただきたい時にお勧めのカフェを紹介します。
祇園「ZEN CAFE」

上生菓子¥800。4月の上生菓子はきんとん製の遠山(えんざん)。桜に加え新緑が増える4月の山が表現され、4月も末に近づくほど緑の分量が増えるそう
和菓子屋さんと一言に言っても、菓子司もあれば、饅頭屋さんや餅屋さんもあり。菓子司のなかには上生菓子の予約販売をメインにしている店もまだまだ多く、持ち帰り専門店が主流に。そのため「イートインで上生菓子を食べたい」と、リクエストを受けると、祇園の「鍵善良房」が手掛ける「ZEN CAFE」をお勧めすることが多い。
「鍵善良房」は、江戸享保年間創業、京都の花街・祇園で京菓子を作り続ける菓子司。最近は京都以外でも商品を買える和菓子店が増えてきたが、「鍵善良房」は京都のデパートにすら出店されていない、昔ながらの真摯な仕事と一対一の商いにこだわる店だ。

祇園の路地裏に建つビルをリノベーション。お向かいには鍵善良房が手掛ける美術館「ZENBI-鍵善良房-KAGIZEN ART MUSEUM」もあり
2012年にオープンした「ZEN CAFE」は、本店とはまったく違う菓子のラインナップになっていて、上生菓子もここでしか食べられないものに。上生菓子は季節がわりだが、きんとんが出されることが多く、初めてこちらのきんとんに出会った時、その繊細で儚げな姿に驚いた。通常、きんとんのそぼろあんは、馬毛の裏ごし器を使って作られるが、こちらの裏ごし器は、馬毛の目が細かく、そぼろあんも糸のような細さだ。このそぼろあんを崩さず、あん玉に纏わせる職人技もすばらしく、持ち帰り不可だからこそ出せる上生菓子になっている。見た目もさることながら、口に含むとふわっと崩れる、柔らかな食感もたまらない。

吉野葛と水、砂糖のみで作るくずもち¥1,000。葛の風味を味わえ、そのままでもおいしいが、途中で黒蜜やきなこを加えると、また違った味が楽しめる
また、通年で出されているくずもちもファンが多いメニューに。本店でいただける名物のくずきりと、砂糖を使う以外は、吉野葛と水というまったく同じ材料なのに、食感が全然違っている。つるんとのどごしを楽しむくずきりと違い、こちらのくずもちは、ぷるんとしていて、口に含むとむっちり、とろけていく。葛の風味もしっかり感じ、そのままでもおいしい。

本棚の前には1人掛けのイスとテーブルを置かれ、書斎のような雰囲気に。奥にはテーブル席も。
金澤富(IAT STUDIO/Architecs)設計によるミニマルモダンな店内は、北欧の家具を配し、アートを飾った上質な空間に。書斎のような1人席や半個室のテーブル席も備え、
しばし喧噪を忘れ、ゆったりお茶の時間を楽しむことができる。

目の前に緑を望むカウンター席

彫刻家・樂雅臣氏の作品をはじめ、アートは和洋、新旧織り交ぜて飾られている
ZEN CAFE
住所:京都市東山区祇園町南側570-210
営業時間:11:00~18:00(L.O.17:30)
定休日:月曜(祝日の場合は翌日)
TEL. 075(533)8686
公式サイトはこちら

天野準子
生まれてこの方、碁盤の目と呼ばれる京都の街中暮らし。雑誌やWEBで京都にまつわるライティングやコーディネートを行っている。プライベートでは、強靱な胃袋を武器に日々、おいしいものをハント