BY CHIAKI YUMIOKA
スイス・ジュラ山脈の大自然に囲まれ、荘厳な美しさをたたえたジュウ渓谷で生まれた高級時計ブランド、オーデマ ピゲ。複雑時計への熱意を抱いた二人の若き時計師、ジュール=ルイ・オーデマとエドワール=オーギュスト・ピゲが1875年に設立してから140年あまり続くブランドの、地理的、文化的、歴史的遺産を体感するエキシビション『時計以上の何か』が、2019年10月19日(土)より開催される。
“デザインを五感で楽しむ”をコンセプトに毎年開催され、今年で13回目を迎えるアートイベント「Tokyo Midtown DESIGN TOUCH」の一環として行われる本企画では、東京ミッドタウンの芝生広場に巨大なパビリオンが登場。常識の先をいくクリエイティビティを生み出すために新たな技術や技法のブラッシュアップを重ね、少数生産での時計づくりを追求してきた職人たちによる歴史的に貴重な作品の数々と、継承され続けるブランドの矜持が凝縮された展示となる。
パビリオン内では時計をイメージした「12」のテーマ別に部屋を設置し、ムーブメントやダイヤルの装飾の実演、時計の分解や組み立てなど、スイスから来日した時計師によるデモンストレーションを披露する。また、オーデマ ピゲミュージアムの収蔵品から厳選された稀少なヴィンテージウォッチから、今春発表された最新コレクション「CODE 11.59 バイ オーデマ ピゲ」まで、150点以上の時計が集結する。1875年にジュール=ルイ・オーデマの時計学校の卒業制作でつくられた懐中時計や、クロノグラフ、チャイミング、アストロノミカルなど、ブランドが得意としてきた複雑機構を搭載した独創的な傑作は必見だ。
オーデマ ピゲといえば、アートの世界とものづくりをつなげる積極的なアートコミッション活動でも知られている。2012年以来取り組んでいるアートプロジェクトでは、アーティストを招聘し、メゾンの文化的、地理的原点を極めて個人的に解釈した作品の制作を依頼。プロダクトデザインや建築などの分野で国際的に活躍するデザイナー、マティーユ・ルアヌールや、イギリス人写真家のダン・ホールズワース、フランス出身でジュネーブを拠点とするインスタレーション アーティスト、アレクサンドル・ジョリーなどといった素晴らしいアーティストたちと交流をはかってきた。
2013年には、世界最大のアートフェア「アート・バーセル」とパートナーシップを結び、バーゼル、香港、そしてマイアミビーチで開催されるコンテンポラリーアートショーにおいて、新進アーティストとのプロジェクトやラウンジデザインを発表。さらに、ブランドがコンテンポラリーアートの世界へと深く関わっていく上で重要な役割を果たす「オーデマ ピゲ・アートコミッション」を2014年よりスタート。毎年、「複雑性と正確性」をテーマとした実験的な作品制作に挑戦するアーティストを財政面で支援するだけでなく、作品制作に必要とされる専門的な技巧や道具の提供も行っている。
コンテンポラリーアートとオートオルロジュリー(高級時計)との対話を育んできたブランドならではのパフォーマンスとして、本エキシビションでは、電子音楽とビジュアルを融合させた気鋭のアーティスト池田亮司の作品が出展される。池田氏は、世界が注目するアーティストの一人で、今年からオーデマ ピゲがサポートしている。現在、台北市立美術館にて個展を開催しており、今秋パリ・オペラ座で上演される杉本博司演出による舞台作品では、リック・オウエンスらとのコラボレーションも決定している。今回手がけたのはオーディオビジュアル三部作「data-verse」のうちの2作品目で、時計作りの精緻さと、オーデマ ピゲの“型破り”を体現しているという。会場ではダン・ホールズワースやアレクサンドル・ジョリーらの作品も展示されるので、アートやデザインを通して表現されるオーデマ ピゲの新たなメッセージをぜひ間近で感じ取ってほしい。