古来、日々の暮らしのなかで使われ続けてきた道具たちーー。その実用性や美しさを見つめ直すきっかけを届けたいという願いで開かれてきた『とらや市』の、このたびのテーマは「鉢」。企画・監修に携わったフードコーディネーターの長尾智子さんに鉢の魅力を尋ねた

BY OGOTO WATANABE

 子どもの頃、食事時の風景に当たり前のようにあった「鉢」。その役割は何であろうか。
「鉢が日本人の食卓に欠かせなかったのは、煮物のような料理が中心だったからだと思います。鉢といえば簡素で落ち着きがあり、素朴な料理を盛って日々を支えていくための道具という気がします。昨今、食べるものも多様化して、鉢の出番は以前よりも減ってきているかもしれません。鉢は深さがあるので、汁気のあるものないものなんでも受け入れる。そんな鉢を使うことで、食べるものの基本が決まっていく。私たちの暮らし方の有り様を見つめざるを得ない今日この頃、あらためて鉢とは、毎日の料理を支えるものなのではと思います」と長尾さんは言う。

画像: 日本の食にまつわる実用的な道具を様々な角度から見つめ、展示・販売する『とらや市』。今までも「ふきんとてぬぐい」「弁当箱」などをテーマに不定期で開催され、好評を博してきた。第9回のお題は「鉢」。はるか縄文時代から現代までどのような鉢が用いられてきたか、虎屋文庫所蔵の錦絵などを通して辿る。また、焼き物の産地、小石原・信楽・高田(たかた)・波佐見・読谷村からの鉢を取り上げ、鉢の形や種類を紹介する。これらの鉢はその場で購入も可能だ。さらに、それぞれの鉢に家庭の素朴な料理を合わせた写真による、使い方の提案も

日本の食にまつわる実用的な道具を様々な角度から見つめ、展示・販売する『とらや市』。今までも「ふきんとてぬぐい」「弁当箱」などをテーマに不定期で開催され、好評を博してきた。第9回のお題は「鉢」。はるか縄文時代から現代までどのような鉢が用いられてきたか、虎屋文庫所蔵の錦絵などを通して辿る。また、焼き物の産地、小石原・信楽・高田(たかた)・波佐見・読谷村からの鉢を取り上げ、鉢の形や種類を紹介する。これらの鉢はその場で購入も可能だ。さらに、それぞれの鉢に家庭の素朴な料理を合わせた写真による、使い方の提案も

 今、日常生活のなかで鉢をどんな風に用いて楽しんだらよいのか、長尾さんに聞いてみた。
「鉢に限らずですが、あまり馴染みのない器を選んでみたり、しまいこんでしばらく使わずにいた器を手にとってみると、新鮮に見えてくることがあります。ちょっと“見方を変えてみる”ことをすると、器を使う楽しみも倍増するのではないかと思います。例えば、使い切れてなかった大鉢に茹でただけの野菜をたっぷりと、あるいは美味しいパンを盛り合わせてみる。それをテーブルの真ん中に置いたら、それだけでもう絵になるのでは。あるいは花をアレンジして生けてみたりグリーンだけを集めてみたり。使い慣れると、使い方もどんどん自由になっていくと思います。実践あるのみ」

画像: 同じ鉢に異なる料理をよそったら? あるいは、異なる鉢に同じ料理をよそったら? 「鉢と一口にいっても、サイズ感でたたずまいも趣も異なるし、作り方の手法や技法も様々です」。鉢を通じて、日々の食卓と暮らしに新しい風を吹き込むヒントがきっと得られる。 PHOTOGRAPHS: COURTESY OF TORAYA

同じ鉢に異なる料理をよそったら? あるいは、異なる鉢に同じ料理をよそったら? 「鉢と一口にいっても、サイズ感でたたずまいも趣も異なるし、作り方の手法や技法も様々です」。鉢を通じて、日々の食卓と暮らしに新しい風を吹き込むヒントがきっと得られる。
PHOTOGRAPHS: COURTESY OF TORAYA

「今回、いろいろな鉢を選び、まとめていく過程で、古来の“両手で捧げ持つ形”というものをあらためて思い出しました。作った料理を丁寧に扱うというような気持ちが、無意識のなかで自然な所作となる。鉢の形には機能だけでなく、そんな作用があるような気もします。そう考えると鉢を取り入れた生活では、食卓に着く時間がよいひとときになると思います」

『とらや市 鉢』
会期:12月2日(水)~2021年3月26日(金)
会場:とらや 東京ミッドタウン店ギャラリー
住所:東京都港区赤坂9-7-4 D-B117 東京ミッドタウン ガレリア地下1F
※休館日・営業時間は東京ミッドタウンに準じます。
電話:03(5413)3541

下記、日程・会場で、縮小版の展示・販売も実施
会期:2021年1月9日(土)~3月9日(火)
会場:とらや 赤坂店内2F
住所:東京都港区赤坂4-9-22
営業時間:9:00~19:00(土、日曜、祝日は9:30~18:00)
電話:03(3408)2331
公式サイト

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