BY KYOKO SEKINE
弾けそうな笑顔で現れたホテル総支配人の内山渡教氏。爽やかな白のコットンシャツ姿に、都心のホテルではめったに見ないカジュアル感が漂っていた。これが銀座…? だがホテルのホームページには、真っ先に「新しい銀座、新しいスタイル、新しいおもてなし」と謳われている。確かに、働くスタッフの姿もどこか自由な雰囲気がある。
ここは銀座のど真ん中、6丁目の並木通りだ。並木通りと言えば夜の街の印象が強いが、近年では居並ぶ世界の高級ブランド店の出店により雰囲気も変わり、ゴージャスなショッピングストリートの趣がある。都心に次々と新しいホテルがオープンする中、ここ「ハイアット セントリック 銀座 東京」には、確かに、どこのホテルにも迎合しない主張の強さが感じられる。伝統的な高級感でもなく、ただカジュアルなだけでもない、エネルギッシュでスタイリッシュ。ハイアット セントリックらしさがきわだった、新しいタイプの銀座のホテルの誕生だ。
客室は全164室。ブティック系、デザイン系、シティホテルといったジャンルに当てはまらない、規格外が面白い。もともと「ハイアット セントリック」は、ハイアットの新しいライフスタイルブランドとして2015年1月に米国で誕生している。旅慣れたゲストが、気の向くままに街を探索し愉しむための情報を提供し、そういうゲストの好奇心を刺激したいというのがそのコンセプトである。
それなら東京・銀座は最高の舞台であろう。銀座は東京でも特別な街だ。伝統の老舗店もこの街にプライドをかける。斬新な店やレストランもそのセンスやクオリティを競い合い、最高であらんとする意識が見え隠れする。
また、ダイニングにはカジュアルな「NAMIKI667」を据え、ショーキッチンから型にはまらない斬新な創作料理を提供している。新しさを自然に受け入れることのできる街、銀座らしいダイニングだ。
料理長の早坂心吾氏は、2店舗の有名フレンチレストランのオープニングメンバーとして、またいくつもの著名なホテルで腕を磨いてきた。そしてザ・リッツ・カールトン東京「タワーズ」料理長を経て、今がある。確かな自信からクリエイトされるこの若いシェフの料理は、ダイナミックかつ繊細だ。ときには贅沢を言って、メニューにない特別リクエストを試してみたいもの。できないものはない!と言いたげな意欲あふれる顔つきに、リクエストに応えてくれそうな優しさものぞく。また、バー&ラウンジでは、毎週木曜と金曜の夜、都内のクラブやバーで活躍中のDJが登場するという。まるでNYのような夜が繰り広げられそうだ。
歴史と今が交差する銀座において、自由な感覚でホテルを楽しみたいと願うホテル通や、世界を闊歩するトラベラーたちにはきっと居心地のいいホテルであろう。スタッフの親切なもてなしや、斬新なアートやビビッドな色彩が舞う館内、高品質にこだわりながらも気どりのない、肩の凝らない雰囲気は、日本にあるようでなかった新感覚だ。本当の意味で“しゃれた”ライフスタイルブランドが、やっと東京にも誕生してくれた。
ハイアット セントリック 銀座 東京(HYATT CENTRIC GINZA TOKYO)
住所:東京都中央区銀座 6-6-7
電話: 03(6837)1234(代表)
NAMIKI667 予約電話: 03(6837)1300
客室:全164室
料金:¥40,000前後(1泊1室の料金。サービス料・消費税別)
※日によって料金が異なるため、要問合わせ
公式サイト
せきね きょうこ
ホテルジャーナリスト。フランスで19世紀教会建築美術史を専攻した後、スイスの山岳リゾート地で観光案内所に勤務。在職中に住居として4ツ星ホテル生活を経験。以来、ホテルの表裏一体の面白さに魅了され、フリー仏語通訳を経て、94年からジャーナリズムの世界へ。「ホテルマン、環境問題、スパ」の3テーマを中心に、世界各国でホテル、リゾート、旅館、および 関係者へのインタビューや取材にあたり、ホテル、スパなどの世界会議にも数多く招かれている。雑誌や新聞などで多数連載を持つかたわら、近年はビジネスホテルのプロデュースや旅館のアドバイザー、ホテルのコンサルタントなどにも活動の場を広げている
www.kyokosekine.com