BY TAKAKO KABASAWA, PHOTOGRAPHS BY YUKO CHIBA

ルーフトップのトワイライトタイムが京都の“今”を映す
COURTESY OF THE HOTEL SEIRYU KYOTO KIYOMIZU
《EAT》「ザ・ホテル青龍 京都清水」
小粋なもてなしに満ちたモダンな日本の味

雅な彩りが食欲をそそる手まり寿司
実を明かすと、旅先のホテルで朝食以外の食事をとることは稀である。元来が食いしん坊、訪れた土地の名物をできる限り食べ尽くしたいと、街を放浪する習性が身についている。今回は「ザ・ホテル青龍 京都清水」でのお籠もり取材とあって、ホテルの中で美食の街・京都を感じたいと気構えた。到着早々に館内のあちこちを行き来するうちに、夕方にはすっかりお腹の虫からお呼びがかかった。ディナーの予約は19時。それまで手持ち無沙汰となった私とフォトグラファーが向かったのは、ゲスト専用のラウンジだ。

緑に囲まれた空間では7:30〜22:00まで自由に出入りし、軽食やドリンクが自在に味わえる
COURTESY OF THE HOTEL SEIRYU KYOTO KIYOMIZU

8月31日までは、祇園辻利とのコラボレーションメニューが登場

通常の軽食に加え、祇園辻利の「がとーぶぶ」コレクションも並ぶ
取材に訪れた今夏は、ホテル初の試みとなる「祇園辻利」とのコラボレーションラウンジを展開(〜8月31日まで)。ドリンクをオーダーできるカウンターには、「祇園辻利」の水出し冷煎茶をはじめ、2023年に誕生したもみ茶専門店「ぶぶる」の日替わりのハーブティーも味わえる。さらに、プチフードが並ぶセンターテーブルも、苔庭からインスピレーションを得たデコレーションが施され、通常メニューに加えて「祇園辻利」のオリジナルスイーツが豊富に揃う。午後15時以降からはアルコールも提供されるため、ディナー前のアペリティフをしっかりと堪能した。

6種類の先付けを肴に、オリジナルカクテルを味わう
アペリティフを済ませた後、「SUSHI-BAR@library」へと向かう。予約したのは、実は京都が発祥という“手まり寿司”のコース。ホテル内のダイニングは、もともとゲスト専用であったが、近辺に飲食店が少ないことから今年から「宿泊者以外にもSUSHI-BAR@library」を開放。かつて講堂だったダイナミックなダイニング空間で、寿司のコースを味わうことが叶う。
席につくと、まず運ばれてきたのは6種類の先付け。ホテルの “大階段”を模した段上のトレイを、彩りあふれる四季の一品が雅やかに飾られている。乾杯のドリンクは、“青龍”の名に因んだシャンパンベースのオリジナルカクテル「ブルードラゴン」。飲む直前に琥珀糖を加え、躍動的な泡立ちを演出して楽しむ。待ちかねていた手まり寿司は全9貫。舞妓さんがひと口で上品に食べられるサイズ感とあって、たくさんの種類をちょっとずつ食べられるバリエーションが魅力だ。
ほどよく満腹になったものの、スイーツは別腹。先ほどのゲストラウンジに戻り、隅々までお腹を満たし眠りにつく。朝は開門と同時に清水寺を詣で、東山を散策。朝食の予約までの僅かな時間の隙間も無駄にせず、またもやゲストラウンジでお茶をいただく。朝食は「京の朝鍋」をオーダー。春は鯛、夏から秋は鱧、冬は鰤と、旬の食材を香り豊かな出し汁とともに堪能できる。どこへ出かけずともホテル内で存分にグルメ三昧に浸った私とフォトグラファー。タクシー待ちの間に、再びゲストラウンジを訪れたことは言うまでもない。

静寂に包まれる産寧坂(三年坂)

この日いただいた朝鍋の出汁には、玉ねぎが風味豊かなコクを添えていた
ザ・ホテル青龍 京都清水
住所:京都市東山区清水二丁目204-2
TEL:075-532-1111
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《EAT》フレンチレストラン「ブノワ 京都」
古都で食すモダンフレンチ

法観寺・八坂の塔を借景とした開放的なホール
ホテルと向かい合うように、のびやかな平家に設計された建物がフレンチレストラン「ブノワ 京都」だ。1912年からのパリで歴史を育んできた、言わずと知れたフレンチの名店である。2005年からはデュカス・パリが伝統のビストロを受け継ぎ、クラシックなひと皿にモダンな新風が吹き込んだ。東京やニューヨークに続いて、京都にブノワが登場したのはホテルの幕開けに伴った2020年のこと。古都京都において、旬の味わいを取り入れたモダンなフレンチを味わっていただきたい。

ディナーのメイン料理を飾る『市場から届いた鮮魚 ブロッコリーとアグリューム ソースシャンパーニュ』。柑橘をコンフィにしたアグリュームが爽やかさを添えて
ブノワ 京都
住所:京都府京都市東山区清水二丁目204-2 ザ・ホテル青龍 京都清水内
TEL:075-541-0208
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《BAR》「K36 The Bar & Rooftop」
街を一望する圧巻の景色と美酒に酔う

ディナー前のアペリティフに是非訪れたいルーフトップ
COURTESY OF THE HOTEL SEIRYU KYOTO KIYOMIZU
「ザ・ホテル青龍 京都清水」の4階に位置する「K36 The Bar & Rooftop」は、2つのゾーンにわかれている。ディナーの前のトワイライトタイムに訪れたいのは、屋外の「K36 Rooftop」。八坂の塔や東山の絶景を眺めながら、開放感あふれるルーフトップ限定のカクテルもいただける。夕暮れ時のパノラマビューは圧巻で、訪れる人々を魅了する。
一方、ディナーの後にゆっくりと訪れたいのが、バーエリア「K36 The Bar」。重厚感あるインテリアと静謐さが漂うオーセンティックなスタイルで、京都を代表するバーテンダー・西田稔氏(「BAR K6」オーナー)がドリンクを監修。希少なウイスキーやワイン、丁寧に作られるクラシックカクテルなどが揃い、ゆったりと過ごすことができる。

ルーフトップ限定の2種類のカクテル
COURTESY OF THE HOTEL SEIRYU KYOTO KIYOMIZU
K36 The Bar & Rooftop
住所:京都市東山区清水二丁目204-2 ザ・ホテル青龍 京都清水 4F
TEL:075-541-3636
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観光客に溢れるエリアという先入観があり、長らく足を向ける機会がなかった清水寺近辺だが、今回の「ザ・ホテル青龍 京都清水」は思いがけず悠々閑適な滞在を体験。是非、京都旅行の宿の候補に連ねてほしい。

樺澤貴子(かばさわ・たかこ)
クリエイティブディレクター。女性誌や書籍の執筆・編集を中心に、企業のコンセプトワークや、日本の手仕事を礎とした商品企画なども手掛ける。5年前にミラノの朝市で見つけた白シャツを今も愛用(写真)。旅先で美しいデザインや、美味しいモノを発見することに情熱を注ぐ。
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