ディオールやディズニーなどビッグブランドとコラボレーションし、ミュージシャンのザ・ウィークエンドやテスラ社のCEOイーロン・マスクも顧客にもつ、空山 基(そらやま はじめ)。彼がいま夢中で描いているのは、“ロボットの春画”だ

BY MASANOBU MATSUMOTO

 遡ること2018年11月、東京で開かれたディオールの2019年 メンズ プレフォール コレクションのショー。そのランウェイの中心に置かれていたのが全長11メートルを超える「セクシーロボット」の彫刻だった。制作したのは、アーティストの空山基。モデルたちがまとったウエアにも、空山が描いた「セクシーロボット」や「ロボット恐竜」、また空山がアレンジしたシーズン限定のディオールのロゴがモチーフとして使われた。

「その少し前、2018年の夏に開いた私の個展に(ディオールのメンズ・アーティスティック・ディレクターの)キム・ジョーンズがやって来てね。それがコラボレーションのきっかけ」と、空山は当時を振り返る。「キムは海外で出版されている私の作品集を持っていて、昔からのファンだったみたい。翌日に一緒に食事をしたら、その場で『コラボレーションしませんか?』って。その時が初対面。その後もいままでにないくらいスピーディに話が進んでいったから本当に驚いた」

画像: 空山 基(HAJIME SORAYAMA) 1947年、愛媛県生まれ。広告代理店に勤務後、1971年よりフリーランスのイラストレーターとして活躍。「セクシーロボット」シリーズ(1978年から)で、世界的に知られるようになる。1999年にはソニーが開発したペットロボット「AIBO」のコンセプトデザインを担当し、グッドデザイン賞グランプリ、メディア芸術祭グランプリを受賞。写真は、東京にある空山のアトリエにて撮影。 http://sorayama.jp PHOTOGRAPH BY NANZUKA

空山 基(HAJIME SORAYAMA)
1947年、愛媛県生まれ。広告代理店に勤務後、1971年よりフリーランスのイラストレーターとして活躍。「セクシーロボット」シリーズ(1978年から)で、世界的に知られるようになる。1999年にはソニーが開発したペットロボット「AIBO」のコンセプトデザインを担当し、グッドデザイン賞グランプリ、メディア芸術祭グランプリを受賞。写真は、東京にある空山のアトリエにて撮影。http://sorayama.jp
PHOTOGRAPH BY NANZUKA

 空山の仕事歴を見ると、ほかにもそうそうたる企業や人物がコラボレーターとして名を連ねている。エアロ・スミスのアルバム『Just Push Play』ではジャケットのアートワークを手がけ、ディズニーとは、玩具会社トミーとタッグを組んでミッキーマウスのロボットフィギィア「FUTURE MICKEY」を制作。ソニーのペットロボット「AIBO」のコンセプトデザインも担当した。セレブリティのファンも多く、ファレル・ウィリアムスが来日した際には、空山のアトリエを訪問。ミュージシャンのザ・ウィークエンドにいたっては、空山の「セクシーロボット」の彫刻作品のコレクターで、また空山もザ・ウィークエンドをモチーフにしたマッチョで角刈りのロボット絵画を描きおろしている。

 ただ空山は、いわゆるファイン・アートのメインストリームで評価されてきた作家ではない。初期のころから好んで描いてきたモチーフは、一般的にはタブー視される「ピンナップ(性的想像力を喚起させる写真)」。それを、写真以上に写実的に描き表し、アンダーグラウンドシーンの人々から、絶大な支持を得た。

 幼少期から絵を描くことが好きだったのですか? と聞くと、「絵も好きだったけど、それより女性が好きだった」と濁さずに答える。だからピンナップのイラストレーターというのは天職だと。「ただ、私がフリーのイラストレーターになった70年代というのは、ピンナップをすでに人々が見慣れてしまった時代でもあった。だから、描く対象を、“正統派”ではない、より過激でフェティッシュなものにしたんだけど、それがまた自分には合っていたんだと思う。どんどん妄想が膨らんで、ずっと机に向かって絵を描いていられるって感じだった(笑)」

画像1: 《Untitled》2019年 © HAJIME SORAYAMA, PHOTOGRAPH BY SHIGERU TANAKA, COURTESY OF NANZUKA

《Untitled》2019年
© HAJIME SORAYAMA, PHOTOGRAPH BY SHIGERU TANAKA, COURTESY OF NANZUKA

画像: 空山基 個展『SEX MATTER』展示風景(NANZUKA、東京、2020年) PHOTOGRAPH BY MASANOBU MATSUMOTO

空山基 個展『SEX MATTER』展示風景(NANZUKA、東京、2020年)
PHOTOGRAPH BY MASANOBU MATSUMOTO

 空山には、ピンナップのシーンにおける、知る人ぞ知る“伝説”がある。70年代、空山がアメリカの雑誌『ペントハウス』で、ピンナップのイラスト連載を担当していたときのことだ。「この『ペントハウス』は、そもそもお上品ではない類の雑誌なんだけど、私が描いたちょっと際どい内容のイラストが、紙面に大きく掲載されてね。編集部に抗議の電話がたくさんかかってきたみたい。でも、そのなかには称賛する声もあって、しばらくしたら、そのイラストのポーズやシチュエーションを真似した読者の自撮り写真が編集部に送られてくるようになった。で、最終的には、雑誌内に“読者の投稿コーナー”ができて、誌面コンテストも行われたんだ」

 空山は「全米から写真が届いたみたい」と言い、笑う。「だから、アメリカで“空山とはどんな人か?”って聞くと、“ディズニーやエアロ・スミスと仕事をしているけど、ダーティなポルノを描く男”。あるいは“あの『ペントハウス』の空山”って言われることもあるんだって。それでも仕事の依頼が来るんだから、不思議な作家だよね(笑)」

 

This article is a sponsored article by
''.