BY GAKU FUJIMURA, PHOTOGRAPHS BY MICHINORI AOKI
2018年。それは男性のコスメ市場においてエポックメイキングな年として、きっと後世まで語り継がれるだろう。ボクは5年ほど前から「スキンケアの次は男性のメイクアップの時代」と明言してきた。編集者の反対を押しきり、時折雑誌などで提案してきたものだ。男性がメイクアップの力で変身したいと考えることは、今まで突飛だとされてきた。動物や昆虫を見ると、派手な色彩で己を飾り、アピールするのはむしろオスのほうが多いのに、なぜか人間においてはメイクアップは避けられてきた。そんな状況に風穴があいたのが、今年だ。
日本国内において今秋、アクロが本格的な男性用総合コスメティックブランド「FIVEISM×THREE」を展開する。ファンデーションは15色を数え、アイシャドウやハイライト、カラーネイルに至るまで60品以上が揃う。女性用としてもまったく遜色がない豊富なラインナップだ。コンセプトは“Individuality”で、一般に個性と訳されるが、ボクはそこに「なりたい自分へと昇華するため、あらゆる方法を探る自由な心持ち」を読み取った。さらにシャネルも男性用メイク「ボーイ ドゥ シャネル」をローンチ。ミッドナイトブルーのニュートラルなパッケージで、“BE ONLY YOU”というメッセージを掲げた。女性をコルセットから解放し、ジャージ素材の提案などさまざまな革命をもたらしたシャネルだからこそ、今、男性にメイクを提案するのだろう。
じつはプレステージにおけるこの流れの萌芽は、2012年のメンズコスメの雄・ラボ シリーズから出た「BB クリーム フォー メン SPF35・PA+++」に始まる。当初は限定アイテムだったが、使い勝手のよさに買いだめする消費者が続出し、ほどなく定番へと昇格。そして今秋、より自然に肌トーンを補正する「インスタント フィルター モイスチャライザー」を発売した。この“スキンケア以上メイク未満”な製品について、ラボ シリーズ グローバル プロダクト ディベロップメント マネジャーは「男性市場では特に即効性が求められ、男性は長期的な使用で得られる効果を待つほど辛抱強くないということに気がついた。加えて、メイク製品の使用に抵抗を感じない男性が増えつつあることもわかった」と語る。
スキントーンを気にするだけでも、男性に意識革命が起きている証拠だ。前出のマネジャーは新製品を「即座にデジタルフィルターを施したかのような効果をもたらすことができる」とも解説。つまりインスタグラムなどSNS映えを意識している男性がいかに多いかということだ。肌の質感に注目する流れは日本のブランド、ボッチャンの肌補正クリーム「ボッチャン スキンパーフェクター マット」にも見られる。カラフルなパッケージの同ブランドは、黒やシルバー主体のメンズコスメの見た目の常識さえ軽く飛び越えた。