自宅時間が増え、お気に入りの家具と過ごすことは心豊かな時間につながると実感する昨今。だからこそ家具を選ぶ際に知っておきたいのは、デザイン性だけでなく、持続可能性に対するメーカーの理念や取り組みだ。欧米における家具業界の今と未来を探る

BY KANAE HASEGAWA

 ファッション産業と同様、家具産業においても持続可能な生産活動は、経営の根幹をなすものになっている。だが、もともと家具は長年使うことを想定して作られている。「通常、ショーウィンドウは最新のコレクションを見せるものですが、家具ブランドの場合、数十年前のデザインの家具が今なお作られ、店頭を飾っていても不思議ではありません。商品のライフサイクルが短いファッションと異なり、家具にはシーズンごとに買い替えて、処分するという概念は希薄です。家具産業において、持続可能性は企業の根底にある理念です」。こう語るのは世界最大の家具の見本市ミラノサローネ国際家具見本市の代表を務めるクラウディオ・ルーティだ。

 家具づくりにおける持続可能性を早くから追求してきたブランドのひとつがアメリカのエメコ社だろう。1944年、アルミニウム再生材を素材に製造した「ネイビーチェア」は今でも製造され続けるロングライフデザインだ。アルミニウムはもともと耐食性に優れ、エメコのリサイクルアルミニウムチェアの場合、150年の耐久性を保証している。またリサイクルが容易、かつ繰り返しおこなうことが可能だ。リサイクルアルミニウムを使った方が、バージン原料からアルミニウムを作るよりもエネルギーを95%節約することにつながるという。エメコでは素材、工場の稼働、梱包、配送といった、この椅子の製造・流通プロセスで排出したCO2量をスウェーデンのドコノミー社の計測ツールを使って算出し、ウェブサイトに公開している。こうしてエメコは早くから循環型のものづくりを実現してきた。2010年にはコカ・コーラ社と提携していち早く廃棄PETボトルからチェアを作ることに成功している。一脚のチェアに111本の廃棄PETボトルを使用した「111 ネイビーチェア」は見た目のエレガントさから、捨てられた“ゴミ”から作られているとは思えない。

画像: エメコ「ネイビーチェア」¥98,000(光沢なし) ロイヤルファニチャーコレクション TEL. 03(3593)3801 COURTESY OF ROYAL FURNITURE COLLECTION

エメコ「ネイビーチェア」¥98,000(光沢なし)
ロイヤルファニチャーコレクション
TEL. 03(3593)3801
COURTESY OF ROYAL FURNITURE COLLECTION

 とりわけ値の張る家具の場合、傷んだら処分するのではなく、修理をして使い続けてもらえる一生ものの家具を作ることが、メーカーとして責任ある消費サイクルを顧客に提供することになる。こうした考えが家具ブランドの間には根づいている。加えて、世界的に発信力のある家具デザインのイベント「Design Miami」(米・マイアミ)が、2015年9月に国連がSDGs(17項目の持続可能な開発目標)を設定した翌年、国連のSDGs担当者を招き、世界各地から集う家具のコレクター、デザイナー、オピニオンリーダーに向けて話し合いの場を設けたことの意味は大きい。家具をつくる側だけでなく、使う側も持続可能なサイクルに責任があると意識させる契機となったからだ。

 世界的な家具ブランドのひとつ、イタリアのカッシーナ社も「地球環境への負荷を最小限に抑えつつ、家具としてのパフォーマンスを最大限に発揮する」という信念のもと、企業活動におけるサスティナビリティを追求している。ミラノ工科大学と協働で研究組織カッシーナ・ラボを立ち上げ、サスティナブルな新素材の開発を目的に、原料の調達に始まり、製造工程、梱包、物流システムまでを分析評価している。というのも、リサイクル素材を使えばサスティナブルな家具づくりが実現するのかと言えば、実はそうではないからだ。「家具において素材とは、デザインに物性と形を与え、感情に響くものだ」と、ミラノ工科大学の科学ディレクター、ダヴィデ・ブルーノ教授は言う。つまり、デザイナーは家具のデザインの一部として素材を選んでいるということだ。だから、過去の家具を今でも作り続ける上で、環境に負荷を与えないからといって再生材に取り換えることはデザイナーの意図を反故にする可能性もある。

 しかし、長年にわたって作り続ける家具だからこそ、持続可能な素材選びが重要なこともある。様々な検討の末、100%海洋PETボトルからできた再生材がカッシーナの人気家具に採用されることになった。ル・コルビュジエ、ピエール・ジャンヌレ、シャルロット・ペリアンが約100年前にデザインし、カッシーナが製造する名作ソファLC2とLC3「フォトゥイユ・グランコンフォール・デュラブル」のクッションの詰め物に、従来のポリエステル繊維に代わって、海洋PETボトル130本からできた再生繊維が採用されたのだ。この再生繊維は繰り返しリサイクルが可能だというから、ソファの持ち主は詰め物の交換をすることで長く使い続けることができる。また、ソファのフォーム材には再生可能資源である有機アゼライン酸由来のポリオールを新たに使用することで、従来のポリウレタンフォームの製造時より大幅に空気汚染を減らすことになったという。革新的な姿勢で家具をデザインしたル・コルビュジエとシャルロット・ぺリアンの姿勢を受け継ぐように、この取り組みにル・コルビュジエ財団、そしてペリアンの子息も賛同している。

画像: カッシーナLC2 「フォトゥイユ・グランコンフォール・デュラブル」(2021年秋頃発売予定) カッシーナ・イクスシー青山本店 TEL. 03(5474)9001 COURTESY OF CASSINA IXC.

カッシーナLC2 「フォトゥイユ・グランコンフォール・デュラブル」(2021年秋頃発売予定)
カッシーナ・イクスシー青山本店
TEL. 03(5474)9001
COURTESY OF CASSINA IXC.

 2020年夏に本国で発売となった新作ソファにも同様の海洋PETボトル再生繊維が使用されている。カッシーナのアートディレクターを務める建築家パトリシア・ウルキオラがデザインした「セングウ」ソファ一(3人掛)には海洋PETボトル500本、マリオ・ベリーニがデザインした「デュック・デュック」ソファ一(2人掛)には200本の海洋PETボトルが使われている。

 

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