1586年創業のフランスのクリスタルメゾン、サンルイは、ミラノデザインウィークの期間、クリスタルガラスと光と音が三位一体となって奏でるインスタレーションを展示した。その光に、メゾンが培ってきた歴史が宿る様子を現地より伝える

BY KANAE HASEGAWA

画像: Saint Louis installation youtu.be

Saint Louis installation

youtu.be

 サンルイは1586年創業の現存するヨーロッパ大陸最古のクリスタル工房。創業以来、職人の手による精緻なクリスタル製品をつくり続けてきた。光源が主にLEDや電球になった今の社会においては、揺れ動く炎のもとでガラスのファセットが煌めくその風情というのは感じにくくなってしまった。しかし、カットガラスは本来、蝋燭の灯りの揺らぎの下で見る時、際立った美しさを放つ。ミラノデザインウィーク中、サンルイは市内のサンタマリア・デル・カルミネ教会を会場に、そのクリスタルガラスの世界を光と音による演出とともに伝えていた。

画像: ウォールランプ「ロワイヤル」 PHOTOGRAPH BY MAXIME VERRET

ウォールランプ「ロワイヤル」

PHOTOGRAPH BY MAXIME VERRET


 ワイングラスやタンブラーなど、バーグラスで人気が高いサンルイだけれど、光を反射して輝くクリスタルの美しさは、ライティングでこそ際立つ。サンルイはシャンデリアに始まり、19世紀初頭から数々のライティングを発表してきた。そうしたサンルイのクリスタルを取り巻くストーリーを宿したオブジェの数々が展示された。木漏れ日を受け、木の葉がきらめくさまを連想させるテーブルランプ「フォリア」は、サンルイの工房を取り囲むヴォージュの森から、デザイナーが着想した。

画像: 2020年に発表されて以来、サンルイのライティングを代表するオブジェとなった「フォリア」。フランスのノエ・デュショフール=ローランスによるデザイン。その光と影の美しさは格別。 PHOTOGRAPH BY MAXIME VERRET

2020年に発表されて以来、サンルイのライティングを代表するオブジェとなった「フォリア」。フランスのノエ・デュショフール=ローランスによるデザイン。その光と影の美しさは格別。

PHOTOGRAPH BY MAXIME VERRET

画像: テーブルランプ「マトリス」。オランダのキキ・ファン・アイクによるデザイン COURTESY OF SAINT LOUIS

テーブルランプ「マトリス」。オランダのキキ・ファン・アイクによるデザイン

COURTESY OF SAINT LOUIS

 2013年に登場した「マトリス」コレクションは、サンルイのクリスタルづくりに欠かせない鋳型(モールド)から想を得たデザインだ。観音開きになったランプから光がこぼれる光景には、モールドからクリスタルが現れるかのようなドラマを感じる。

画像: 「トミー」のテーブルランプ¥193,600/サンルイ COURTESY OF SAINT LOUIS

「トミー」のテーブルランプ¥193,600/サンルイ

COURTESY OF SAINT LOUIS

 商品のライフサイクルが短くなった現代においても、サンルイのクリスタルは時代を超えて使われ、日々の暮らしに寄り添う。サンルイの代表的なコレクションでもある「トミー」のクリスタルコレクションが登場したのは1928年。第一次世界大戦の終結から10年後の終戦メモリアルとして制作され、のちにフランス大統領が英国国王を招いての晩餐会の席でテーブルを彩った歴史的なコレクション。ダイヤモンドカット、ベベルカット、パールカット、リムカットなどの多種多様なカットが惜しみなく施され、サンルイの技の粋を集めたオブジェだ。「トミー」コレクションはヨーロッパの歴史が語り継ぐ唯一無二の存在でもあるだろう。

画像: 中庭に投影されたサンルイ工房の様子 PHOTOGRAPH BY MAXIME VERRET

中庭に投影されたサンルイ工房の様子

PHOTOGRAPH BY MAXIME VERRET

 フランス東部ロレーヌ地方の森に囲まれた工房で、職人たちの息の合った動きから生まれるサンルイのクリスタル。呼吸を合わせ、一心同体となって動くさまは、ダンスのようだ。こうしたクリスタルづくりの力強さは、普段、サンルイの重厚で静的なクリスタルを眺めているだけでは感じにくい。会期中、教会中庭のスクリーンには、サンルイの職人たちの動きを捉えた映像が投影され、クリスタル製造のダイナミズムを伝えていた。

問合せ先

エルメスジャポンTEL. 03(3569)3300

公式サイトはこちらから

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