BY SUMIRE FUJIWARA
圧倒的な存在感に目を奪われる「ZIG-ZAG」
一度見たら忘れられない、その名の通りジグザグとしたユニークなフォルムの「ZIG-ZAG」は、オランダのモダニズム建築の巨匠、ヘーリット・トーマス・リートフェルトが手がけたもの。“椅子の究極の形”として取り上げられ、これまで多くのデザイナーに影響を与えてきた作品であり、1934年に発表されたとは思えないほど常に新しい感動を与えてくれる。
水平・垂直・直線が特徴的なリートフェルトらしいデザインで、アート作品のような見た目からは想像がつかないほどの、座り心地の良さと頑丈さも長く愛せるポイント。4枚板の組継ぎを隅木で補強するというカッシーナの優れた木工技術を用いており、一切金属のジョイント類を使用していないミニマルさも美しい。
カッシーナ・イクスシー 青山本店
TEL. 03-5474-9001
公式サイトはこちら
時代を超えて愛される“Yチェア”こと「CH24」
“椅子の巨匠”の異名を持つ、20世紀を代表するデザイナー、ハンス J. ウェグナー。そんな彼の代表作として多くの人が思い浮かべるのが、1949年にカール・ハンセン&サンから発売された“Yチェア”=「CH24」だろう。
その最大の特徴でもある、曲木で形成した滑らかなY字の背もたれと後ろ脚が、優美な佇まいを演出。座ってみると身体を自然と預けられる心地良い安定感があり、約120mものペーパーコードを編み上げた広めの座面により耐久性も優れている。CH24の製作工程は100以上ともいわれ、そのほとんどが職人の手仕事から成るというから何とも贅沢な一脚なのだ。
カール・ハンセン&サン フラッグシップ・ストア東京
TEL. 03-5413-5421
公式サイトはこちら
プロダクト史に残る傑作「イームズプライウッドラウンジチェア」
1940年代、熱と圧力をかけて木材を曲面に成型する、“成型合板技術”を確立したイームズ夫妻。その新技法を用いて生まれたのが、「イームズプライウッドラウンジチェア(LCW)」だ。 座面と背もたれは5層構造、脚部と支柱は8層構造と、プライウッドならではの高い強度を実現。座る人の身体に優しくフィットする柔らかなカーブのデザイン、そして弾力のあるゴム製ショックマウントが快適性も叶えてくれる。
米『タイム誌』では「20世紀最高のデザイン」に選出。「優雅で、軽やかで、快適。模倣品が数多く存在するが、これを超えるものはない」と称賛され、時代を超えて受け継がれてきた名作椅子なのだ。経年変化とともに味わいを増す、美しい木目を愛でたい。
ハーマンミラーストア 丸の内
TEL. 03-3201-1820
公式サイトはこちら
新鋭ブランドKOYORIの「SHAKU CHAIR」
2022年、日本の優れたものづくりを行う企業と国際的なコンテンポラリーデザイナーが協働し、高品質でボーダーレスなデザインの家具とインテリアアクセサリーを提供する新しいコンセプトのブランドとして誕生したKOYORI。そのファーストコレクションとして登場したのが、こちらの「SHAKU CHAIR」だ。
無垢材を用いた曲木家具で知られる飛騨産業と、フランス人兄弟デザイナー、ロナン&エルワン・ブルレックがタッグを組んだ作品で、小ぶりなサイズながら高めに設定された背もたれと、背と座につけられたカーブにより快適な座り心地に。ミニマルかつ温かみのあるデザインで、タイムレスな魅力に溢れている。
背板が座板に差し込まれたような細かなディティールは、飛騨産業の緻密で精度の高い加工技術と接合技術だからこそ成し得たもの。日本メーカーのクオリティへの追求と、ものづくりに新しい息吹をもたらす気鋭デザイナーの感性が見事に融合した、新たなる名作チェアとなるだろう。
KOYORI
公式サイトはこちら
アアルトの技巧が光る名作椅子、「41 アームチェア パイミオ」
「41 アームチェア パイミオ」は、アルヴァ・アアルトが設計したモダニズム建築の名作、パイミオのサナトリウム(結核療養所)に滞在する患者のためにデザインされた作品。滑らかな木材を使った有機的なカンチレバーフレームに、宙に浮いたかのような弾力性を生む座席を組み合わせたチェアで、身体をゆったりと任せられる使用感が癒しのひと時を与えてくれる。
木製家具は経年変化により歪みが生じるものだが、こちらは分厚いひとつのフレームを半分に分割して両端に設置することで、年月を重ねても左右のフレームバランスが崩れにくい仕様に。木の性質を知り尽くしたアアルトならではの細部へのこだわりも魅力のひとつだ。
2023年9月には、パイミオのサナトリウムの竣工90周年を記念したアニバーサリーシリーズが登場予定。「41 アームチェア パイミオ」の限定カラーも発売されるので、こちらもチェックを。
アルテック
TEL. 0120-610-599
公式サイトはこちら
ノルウェーのアイコン的チェア「スカンディア ジュニア」
ノルウェーデザインの代名詞とも言われる、ハンス・ブラットルゥが手がけた「スカンディアチェアシリーズ」。その第一作目である「スカンディア ジュニア」は、ブラットルゥが国立工芸美術大学在学中にデザインし、1961年に製品化。その後70年代から約30年間生産されていなかったこのシリーズを、家具メーカーFjordfiesta社が2001年にブラットルゥ本人と共に復刻した。
縦に並べた8枚の積層材が滑らかに波打つその佇まいは、360度どこから見ても惚れぼれする美しさ。身体に沿うカーブ設計で背筋が自然と伸びるので、長時間でも負担なく座ることができる。スタッキングも可能と、機能性、実用性、そして美しさと北欧らしさが詰まった一脚と言える。
ザ・コンランショップ
公式サイトはこちら
ヤコブセンを代表する名作椅子「アリンコチェア」
蟻の姿を連想させるチャーミングなルックスが印象的な、アルネ・ヤコブセンによる「アリンコチェア」。9層の成形合板とスリムなスチール脚の、たった2つのパーツから構成された繊細でエレガントなチェアながら、驚くべき強度と快適さを備えている。
背面と座面が一体化したプライウッド製のチェアを大量生産することは、1952年の制作当時世界初であり、その技術的な成功を支えたのがフリッツ・ハンセンの卓越したクラフツマンシップであったことは言うまでもない。ただそこに在るだけで空間にアクセントを加えてくれる存在感も、長年愛され続ける理由なのだろう。
フリッツ・ハンセン 東京
TEL. 03-3400-3107
公式サイトはこちら
復刻したミッドセンチュリー期の名作「REY CHAIR」
スイス人デザイナー、ブルーノ・レイによって1971年に誕生した「REY CHAIR」。丸みを帯びたエッジや背もたれのカーブが印象的なチェアで、ネジを使わず木材と金属を接続するという、当時革新的だったDietiker社独自の技術を用いて製造。見た目の美しさや耐久性、使い勝手の良さが高く評価され、スイスの国民的な椅子とも称されている。
そんな名作を約50年の時を経て、HAYとDietiker社が復刻。アイコニックなフォルムや製造工程は継承しつつ、現代のライフスタイルに合わせてサイズを変更したほか、新たに厳選したカラーや張り地もラインナップ。オリジナルの魅力はそのままに、絶妙にHAYらしさが香る新生REYが、空間にモダンな表情を加えてくれる。
HAY JAPAN
公式サイトはこちら
ジャパニーズデザインの傑作「バタフライスツール」
日本が世界に誇るインダストリアルデザイナー、柳宗理の「バタフライスツール」は、ルーブル美術館やニューヨーク近代美術館などでも永久所蔵されている傑作。同じ形の2枚の成形合板を真鍮金具でジョイントしたシンプルな構造ながら、その姿は羽を広げた蝶を連想させ、ドラマチックな美しさを放つ。
制作された1950年代の日本では、まだ成形合板技術が広まっていなかったが、柳はイームズ夫妻の「LCW」などから影響を受け、当時国内で唯一成型合板技術に長けていた天童木工に協力を仰ぎ「バタフライスツール」を完成させた。 スツール、オブジェ、本を飾る台座などマルチに活用できるので、一脚あると重宝するはず。
天童木工
TEL. 0120-01-3121
公式サイトはこちら
最先端技術が生んだ、新時代の木の椅子「Kウッド」
優れたメーカー・デザイナーによる木製チェアは、想像以上の快適性をもたらしてくれるが、それでも「木の椅子は座り心地が悪いのでは……」と不安な人もいるだろう。そんな人にこそ体験してもらいたいのが、カルテルの「Kウッド」。
人間工学に基づいた3次元の成型合板により、身体に沿って柔軟にカーブしたシートを完成。体重を均一に面で支え荷重を分散させることで、まるで身体が吸い込まれるような極上の座り心地を実現する。この3次元成型は、世界でも限られた企業でしか実用化されていない最先端技術。さらに一般的なプライウッドではない特殊な素材を採用することで、木材の使用量を抑えたサステナブルな製造方法となっている。
カルテル
公式サイトはこちら
▼あわせて読みたいおすすめ記事