インディーズ・シネマ界を代表する女優がかつてのホームグラウンドを再訪し、あまりつつましいとはいえない生い立ちを明かす

BY AMANDA FORTINI, PHOTOGRAPHS BY SEAN DONNOLA, TRANSLATED BY NHK GLOBAL MEDIA SERVICE

画像: セヴィニーが高校時代にいつも雑誌を探しに行っていた文房具店。 「一緒に、“ホステス・ カップケーキ”(アメリカの庶民的なお菓子ブランド)とか」も買っていた

セヴィニーが高校時代にいつも雑誌を探しに行っていた文房具店。
「一緒に、“ホステス・ カップケーキ”(アメリカの庶民的なお菓子ブランド)とか」も買っていた

 しかし彼女の場合は、新鮮な魅力や少し危険なカリスマ性を求める文化のなかでもてはやされる若きスターによく見られるように、燃えつき、火が消えて、やがては更生施設やリアリティテレビ番組に行きつくようなことはなかった。それどころか、エンターテインメントの世界では異端ともいえる道を進んだ――いつまでも消えることなく活躍を続けたのだ。

 そして42歳となった今、彼女は型破りで興味深いキャリアを築いている。ウディ・アレンやホイット・スティルマンからラース・フォン・トリアーまで、大勢の一流監督 の作品に出演するだけでなく、何本もの人気テレビ番組にも登場している俳優は、そう多くはない。なかでも注目を集めたのはケーブルテレビの大手HBOの連続ドラマ『Big Love』で、セヴィニーは、一夫多妻を実践するモルモン教徒の家族の狡猾で魅惑的な二人目の妻、ニッキの役を5シーズンにわたって演じ、ゴールデングローブ賞助演女優賞を獲得した。

今年公開される映画だけでも、セヴィニーは 6作品に出演し、アレックス・ロス・ペリー監督の『Golden Exits』ではエミリー・ブラウニングやメアリー=ルイーズ・パーカーと肩を並べ、トーマス・アルフレッドソン監督の『The Snowman』では ミヒャエル・ファスベンダーと共演している。彼女はまた、自らメガホンをとってもいる。2016年5月、セヴィニーはカンヌ映画祭で監督デビューを果たしたのだ。

『Kitty』 と題されたその作品は、ポール・ボウルズの同名の短編小説が原作で、猫に変身する少女についての幻想的でシュルレアリスティックな短編映画だ。最近完成させた 2作目の短編映画『Carmen』は、彼女の説明によると、「旅するアーティストのポートレイト」であり、「見知らぬ都市にいることの孤独」を検証する作品だ。この作品は2017年2月、ニューヨーク・ファッションウィークの開催中にミュウミュウの「ウィメンズ・テールズ(女たちの物語)」シリーズの一環として上映された。過去にはエイヴァ・デュヴァーネイ、ミランダ・ジュライ、アニエス・ヴァルダなどの面々が作品を提供しているシリーズだ。

 ここ数年のあいだのどこかの時点で、セヴィニーはかつての“イット・ガール”の地位を捨て、年齢を超越し、いつまでも古びないクールさを確立したアーティストの仲間入りを果たした。乱用されている言葉ではあるが、ここでいう“クールさ”とは、冷静さとかっこよさの両方を意味するもので、ローリー・アンダーソン、キム・ゴードン、ジム・ジャームッシュ、パティ・スミスなどのアーティストが身につけているものだ。

言うまでもなく、セヴィニーの場合は、冷淡でよそよそしいという意味でもクールな女性だろうと私は予想していた。だからこそ、とても親しみやすい、気さくで率直な人柄で、自分の話や冗談にしょっちゅう大笑いするような人物だと発見したことは、うれしい驚きだった。彼女はミュウミュウのターコイズ色の長い革のジャケットとヴィンテージのリーバイス、オーバーサイズのゴールドのフープイヤリングとドクターマーチンのタッセルローファーを身につけていた。長いストレートヘアはぼさぼさで、最近クランクアップした映画のために染めたオレンジっぽい赤毛のままになっている。

その映画で彼女は、両親を斧で惨殺した容疑をかけられた実在の人物のリジー・ボーデンを演じ、ボーデン家の住み込みのメイドの役のクリステン・スチュワートと共演した。セヴィニーの風貌の最もコネチカットらしいところは、彼女のイニシャルが刺しゅうされた、擦り切れたキャンバス地のL.L.Beanのトートバッグだ。

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