BY KRISTEN BATEMAN, PHOTOGRAPHS BY ADRIAN CATALAN, TRANSLATED BY CHIHARU ITAGAKI
構築的なシルエットのドレス、格子状に編んだコットンポプリンのトップス、レザーをハンドカットしてつくったフリンジ状の飾りがあしらわれたコート、イタチのファーのついたドレス、ギャザーを寄せたチュールで覆われたアウター。彼女の最新コレクションはいずれも、きわめて技術的に難易度の高いディテールに満ちている。「さまざまな素材や生地で、編み込み風のパターンをつくろうと思った」とデザイナーは説明する。
この最新コレクションのインスピレーション源のひとつが、彼女のアトリエにあるリサーチボードにピンで留めてある。それは、少し意外な感のある1枚のイラストだ。「日本人アーティスト、俵谷哲典氏のイラストです。これを見たとき、すごく奇妙で、そして素晴らしいと思った。そしてどういうわけか、彼のイラストは完璧に私の目指すものと同調していたの。モノトーンの色使や、グラフィックな素材感とボリューム感が、まさに私の取り組んでいたテーマと同じだった」
クリスティンの目標のひとつは、ゲストデザイナーとしてオートクチュール・コレクションの公式スケジュール上でショーを開催し続けること。彼女自身も認めるように、特にデビューしたばかりの新進ブランドにとって、これはとても難しいことだ。それでも彼女がオートクチュール・コレクションにこだわるのには理由がある。オートクチュール・コレクションの開催は年2回のみ。通常のコレクションに加えてプレフォールやクルーズ・コレクションを発表する必要のあるレディ・トゥ・ウェアよりも、シーズンレスなアプローチで服をつくることが容易になるからだ。
もちろん、それには困難がともなう。「自己資金でやっていくには限界がある。ラグジュアリーなグループ企業傘下のブランドで、大規模な制作チームや多額の予算を与えられて働くのとはわけが違うわ」とクリスティン。「新しいシーズンの仕事を始めるのは、いつも心躍るもの。いろんな夢や希望があふれて、自由でなんの限界もないような気になる。だけどね」と彼女は一瞬口をつぐみ、続けた。「後から、現実に目が覚めるの」
HYUN MI NIELSEN
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