創業160周年を迎える老舗ジュエラー、ブシュロン。その歴史をひも解けば、時代の先端を捉え続けた革新の精神に触れられる。メゾンの想いを込めて制作されたショートフィルムも必見だ

BY HIROKO NARUSE

「異文化に着想を得て」
 ジャポニスムがパリを席巻した20世紀初頭、ブシュロンはひとつのティアラを制作した。それが1910年に作られた、葛飾北斎の「富嶽三十六景 神奈川沖浪裏」にオマージュを捧げた、ダイナミックな作品だ。このティアラは、ブシュロンが国や人種を超えて異文化をとりこみ、メゾンのDNAが流れるジュエリーへと昇華した好例。北斎をただなぞるのではなく、そこに込められた美の真髄をブシュロン流に表現している。

画像: 1910年制作 波のティアラ

1910年制作 波のティアラ

「男性と女性、ジェンダーを超えて」
 ブシュロンの作品の中には、男女の枠を超えたジェンダーレスなデザインが早くから登場している。「愛の讃歌」で絶大な人気を誇った歌手、エディット・ピアフ。1948年、彼女はこの歌を初めて歌う前に、幸運を願って、ブシュロンで発表されたばかりの“リフレ”ウォッチを購入した。その後、歌が大ヒットしたことによって、この時計は彼女のお守りに。’48年から’63年までの間に、彼女は21個以上の“リフレ”を購入。そのうちのひとつを、生涯の恋人マルセル・セルダンに贈ったという。

画像: 1948年制作 “リフレ”ウォッチ

1948年制作 “リフレ”ウォッチ

「スネークのコンセプトをまとう」
 メゾンの創始者、フレデリックが妻に贈ったネックレスに始まり、ブシュロンの歴史を彩ってきたスネークのモチーフ。1968年に誕生した“セルパン”コレクションは、それをさらに進化させ、スネークをコンセプチュアルに表現した、きわめて現代的なデザインが特徴。ヘビの姿を忠実に描写するのではなく、抽象化したイメージをジュエリーに落とし込み、グラフィカルに表現する。このコレクションのエスプリを受け継ぐ“セルパンボエム”を支えるのは、メゾンの彫金師の高度な技術による繊細なディテールだ。

画像: 1970年代 “セルパンボエム”デザイン画。(上)ブレスレット、(下)ペンダントトップ

1970年代 “セルパンボエム”デザイン画。(上)ブレスレット、(下)ペンダントトップ

「自由な精神を象徴するメゾン」 
 1960~70年代を代表するスタイリッシュなカップル、ジェーン・バーキンとセルジュ・ゲンズブール。自由を求める若者が抬頭した時代に、旧体制の慣習や常識に捉われないボヘミアンなふたりもまた、ブシュロンの先取の気風を愛した。写真は、’69年にブシュロンのジュエリーを選ぶふたり。自然体でチャーミングな姿は、手にとったコンテンポラリーなジュエリーとともに、50年の時を超えて輝いている。

画像: 1969年 ブシュロンのイベントでのバーキンとゲンズブール PHOTOGRAPHS: COURTESY OF BOUCHERON

1969年 ブシュロンのイベントでのバーキンとゲンズブール
PHOTOGRAPHS: COURTESY OF BOUCHERON

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