BY TOMOKO KAWAKAMI for TEA ROOM, PHOTOGRAPHS BY MASANORI AKAO, STYLED BY YUKARI KOMAKI, HAIR BY TAKAYUKI SHIBATA(Signo), MAKEUP BY Fusako(Ota Office), MODEL BY HANAKA
赤い運命
少女漫画のなかではにかみ屋のヒロインが着ていたようなロゴ入りのセーター。いくつになっても
心ときめく、赤の魔法。
ミロンガ・ヌオーバ/神保町
ジャズ喫茶にクラシック喫茶、そしてロック喫茶――。レコードが貴重だった1950年代から60年代に掛けて人気を博していたのが、音楽も楽しめる喫茶店だ。神保町の「ミロンガ」も1953年、アルゼンチンタンゴとコーヒーが嗜める喫茶店としてオープンした。神保町で書店を営んでいた音楽好きのオーナーが時代のブームに乗って開店させた喫茶店は連日、タンゴファンが集まる人気のスポットに。その後、1995年の改装を機に「ミロンガ・ヌオーバ」へと改名。現在でも都内唯一のタンゴ喫茶として、大人たちの隠れ家的存在として愛されている。
炭火焙煎された豆を使ったドリップコーヒーを片手に、アルゼンチンタンゴに耳を傾ける。そんな贅沢な時間を求め、店を訪れる客層は意外にも幅広いとか。「世界各国から集めたビールも常時30種類は揃えてあります。そのビールを求め、タンゴに馴染みの薄い若い人たちも増えています。最近では、外国人のお客様も多いので、英語のメニューを作らなくてはと思っているほどです」と店長の浅見加代子さん。もちろん、神保町で本屋や古本屋を巡った後にコーヒーを飲みながら一息つくお客さんも多い。「うちのお店は、照明が暗めなので読書には向いてないかも知れないですが」と笑う。
店内でかけるBGMはもちろんアルゼンチンタンゴ。それも年代物のLP盤のもののみだ。「店内にあるレコードの中から、お客様のリクエストに応えて曲を流すこともあります。その昔、近隣の大学のタンゴ研究会に在籍していた方たちが定年を迎えて引退され、再び、神保町に集まって、うちの店で仲間と一緒にタンゴを楽しんだりされていますよ。そのお客様たちが若い頃に熱中されていた懐かしい曲がうちでは今でもレコードで堪能できますから」。常連客の中には、人生の終活の一環として、これまで取集してきたタンゴのレコードを店に寄贈される方もいるとか。友人たちとともに、青春時代を過ごした空間が変わらずそこにある。そんな懐かしくて、心休まる喫茶店に今日も人々が通ってくる。
「ミロンガ・ヌオーバ」
住所:東京都千代田区神田神保町1-3
営業時間:月・火・木・金曜 /10:30〜22:30(LO.21:45)
土・日曜・祝日/11:30〜19:00(LO.18:30)
定休日:水曜
電話:03(3295)1716