BY NORIO TAKAGI, PHOTOGRAPHS BY MASANORI AKAO, STYLED BY TOMOKO IIJIMA
日々変わる地球の自転周期を示す
一日が24時間であるのは、太陽の南中時刻の間隔の平均値から導き出された。これを平均太陽時と呼ぶ。一方、日々変わる南中時刻の間隔を真太陽時と称する。このモデルは円が備わる分針が平均太陽時を、先端に太陽を掲げる針が真太陽時を示し、その間隔で二つの時間の差=均時差がひと目でわかる機構を有する。5時位置に見えるカムが均時差表示をつかさどり、その形状は地球の公転軌道に準じている。均時差表示には正確な暦が不可欠なため、閏年の2月29日も自動で表示する永久カレンダーも搭載。均時差カムを設置した透明なディスクの下には、重力の影響の平均化を図るトゥールビヨンが潜む。極めて複雑なメカニズムながらダイヤルは巧みに整理され、視認性を犠牲にしない。
唯一無二のムーンウォッチ
1969年7月21日、アポロ11号ニール・アームストロング船長に続いて月面に降り立ったバズ・オルドリンの腕には、スピードマスターがあった。NASAはアポロ計画に向け、1964年から’65年にかけて船外活動用のクロノグラフを選定した。その際課したテストに唯一合格したのが、スピードマスターであった。そして6回の月面着陸プロジェクトすべてに携帯された。その後ムーブメントを変更したが、1972年と’78年に再認定を受け、スピードマスター プロフェッショナルは、NASA公式装備品であり続けた。これは、ムーブメントが1万5000ガウスの超高耐磁に進化した最新作である。これもオメガとMETAS(スイス連邦計量・認定局)がNASAと同じテストを行い、宇宙空間で使えることを実証し、ムーンウォッチの系譜をつないだ。
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