いま東京で食べるべきは、断然中国料理である。"タベアルキスト"のマッキー牧元が案内する、未知なる美味との幸福な出会い

BY MACKEY MAKIMOTO, PHOTOGRAPHS BY MASAHIRO GODA

 同様の喜びを与えてくれるのが、代々木上原の「Matsushima」である。メニューには、苗(ミャオ)族、チワン族、プイ族など、聞いたことがない少数民族の料理が書かれている。その中のひとつ「苗族血餅の腸詰揚げ」は、鹿の血ともち米で作られたソーセージ、いわば中国風ブーダン・ノワールである。香菇醬(シャングジャン)、胡麻と山椒、塩と唐辛子による醬で調理した腸詰は、微塵もクセがなく、ほのかに甘くて、なんとも香ばしい。

画像: 「鴨の首肉の辛み煮込み」

「鴨の首肉の辛み煮込み」

 または、嚙みしめると、コラーゲンの甘みを舌に広げながら溶けるように消えていく「湖北省武漢鴨の首肉の辛み煮込み」。上にかけたヨーグルトの酸味、クミンの食欲そそる香り、唐辛子の刺激が、羊肉ご飯の風味と混じり合って酒を呼ぶ、「新疆ウイグル自治区羊のごはん〝ポロ〞」。あるいは、発酵白菜、発酵トマトの熟れた酸味がクセになる、ナマズをスープで煮込んだ「貴州省苗族ナマズの発酵トマト煮込み」。

画像: 「新疆ウイグル自治区 羊のごはん "ポロ" 」。中国少数民族の郷土料理はじつに刺激的

「新疆ウイグル自治区 羊のごはん "ポロ" 」。中国少数民族の郷土料理はじつに刺激的

画像: 「ナマズの発酵トマト煮込み」

「ナマズの発酵トマト煮込み」

 どうです。じつに刺激的ではありませんか。
 いずれも、食べ慣れぬ味ながら食べづらさとは無縁なのは、現地の料理に松島由隆シェフのアイデアを組み入れて完成させているからだろう。そしてどの料理も、各種の醬や発酵調味料が織りなす、ひと筋縄ではいかぬうま味がある。だから困ったことに、グイグイと酒が進んでしまうのである。

画像2: 連載 
TOKYOチャイニーズは燃えている 
Vol.1

Matsushima

中国各地の紹興酒も12〜13種揃う(ノンアルコール飲料は少ないのでご注意を)。アラカルトのほか、コース ¥5,000、¥6,500

住所:東京都渋谷区上原1-35-6B 101
電話:03(6416)8059
営業時間:18:00〜24:00(23:00 LO)、
日曜・祝日/17:00〜23:00(22:00 LO)
定休日:水曜・不定休あり

※本文中の料理は、季節により、またメニュー改定により提供されていない場合があります。

マッキー牧元
1955年東京出身。数々のメディアで活躍中の、自称「タベアルキスト」。割烹から焼き鳥、トンカツ、居酒屋まで日々渉猟し、旅先ではなんと「朝3、昼2、夜1(食)」が基本と語る食ジャーナリスト。一読、「うまそう!」と思わずよだれをそそる、シズル感あふれる文体が魅力。株式会社味の手帖 取締役編集顧問もつとめる。

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