シャンパーニュファンの憧れ「クリュッグ」から新エディションが登場。最高醸造責任者が語る、その歴史と美しさの秘密とは?

BY KIMIKO ANZAI, PORTRAIT BY SHINSUKE SATO

 シャンパーニュの最高峰と評され、熱狂的ファンが多いのが「KRUG(クリュッグ)」だ。メゾンのフラッグシップでもある「クリュッグ グランド・キュヴェ」は複数年にわたるヴィンテージの120種以上のキュヴェ(一番搾り果汁)をブレンド。その技によって生み出される複雑で奥深い味わいは、つねにオーケストラのシンフォニーに例えられる。

 この唯一無二の味わいこそ、メゾンの創業者であるヨーゼフ・クリュッグの夢でもあった。彼は、「毎年天候の違いに左右されることなく、豊かな表現をもった最高品質のシャンパーニュをつくりたい」と、1843年に「クリュッグ」を創設。1845年に初の収穫を行い、翌年初めてのクリエイション「クリュッグ グランド・キュヴェ」を誕生させた。以来、そのリクリエイションは毎年行われ、今年、2011年のヴィンテージを中心に構成された“クリュッグ グランド・キュヴェ 167th エディション”がリリースされた。

画像: クリュッグ グランド・キュヴェ 167th エディション<750ml>¥29,000 ピノ・ノワール47%、シャルドネ36%、ムニエ17%。2011年ヴィンテージを中心に、13年間の異なる191種のキュヴェをブレンド。一番古いワインで1995年ヴィンテージのものを使用している。「クリュッグ」のつくりは“ノン・ヴィンテージ”だが、使用するキュヴェの多さと卓越したブレンド技術から“マルチ・ヴィンテージ”と称している COURTESY OF KRUG

クリュッグ グランド・キュヴェ 167th エディション<750ml>¥29,000
ピノ・ノワール47%、シャルドネ36%、ムニエ17%。2011年ヴィンテージを中心に、13年間の異なる191種のキュヴェをブレンド。一番古いワインで1995年ヴィンテージのものを使用している。「クリュッグ」のつくりは“ノン・ヴィンテージ”だが、使用するキュヴェの多さと卓越したブレンド技術から“マルチ・ヴィンテージ”と称している
COURTESY OF KRUG

 最高醸造責任者のエリック・ルベル氏は言う。「エディションとは、毎年のリクリエイションのこと。私たちは、1846年に誕生した『クリュッグ グランド・キュヴェ』をエディション1と名づけ、毎年、メゾンのスタイルを表現してきました。エディションとは、創業者のヨーゼフ・クリュッグの哲学そのものだと、私は思っています」

 167回目のエディションは、熟したフルーツやジンジャーブレッド、ヘーゼルナッツ、ハチミツなどの複雑な香りが溶け合い、アロマティックで華やかな香りが印象的。キリリとして心地よい酸味と深い熟成感が心に長い余韻を残す。2011年収穫のブドウを中心に、13年間の異なる191種のキュヴェがブレンドされている。じつに時間と手間がかけられたつくりなのだ。

画像: 最高醸造責任者のエリック・ルベル氏。 シャンパーニュ地方で生まれ、ブドウ畑に囲まれて育つ。「化学的な研究のあるジャンルに進みたい」と、ランス大学でワインの醸造学を学ぶ。10年にわたり、有名メゾンで活躍したのち「クリュッグ」へ。“167th エディション”は彼にとって21番目のエディションだという

最高醸造責任者のエリック・ルベル氏。
シャンパーニュ地方で生まれ、ブドウ畑に囲まれて育つ。「化学的な研究のあるジャンルに進みたい」と、ランス大学でワインの醸造学を学ぶ。10年にわたり、有名メゾンで活躍したのち「クリュッグ」へ。“167th エディション”は彼にとって21番目のエディションだという

 ルベル氏が「クリュッグ」に従事しはじめたのは1994年のこと。それまでほかのメゾンで醸造責任者として活躍していたが、先代で5代目のアンリ・クリュッグ氏の目に留まり、誘いを受けたという。初めてメゾンを訪れた日のことを、彼はこう振り返る。

「簡単な面接をするというのでアンリ・クリュッグ氏を訪ねたのですが、天才醸造家として名高かった彼は私にとっては“神”でしたから、とにかく緊張していました。一緒に『クリュッグ グランド・キュヴェ』をテイスティングしたとき、彼に感想を求められ、私は『おいしい』とか『素晴らしい』とか、およそ醸造家とは思えないありきたりのことしか言えませんでした。背中にはびっしょり冷汗をかいていましたよ(笑)」

画像: メゾンはランス市に位置。今も古来の木樽発酵を行う数少ないメゾンで、専門の樽職人もいるほど。醸造チームは6名で、毎日ヴァン・クレール(原酒)のテイスティングをするという COURTESY OF KRUG

メゾンはランス市に位置。今も古来の木樽発酵を行う数少ないメゾンで、専門の樽職人もいるほど。醸造チームは6名で、毎日ヴァン・クレール(原酒)のテイスティングをするという
COURTESY OF KRUG

 入社後、彼はアンリ氏の下でクリュッグのすべてを学び、1988年からは最高醸造責任者として、6代目で現当主のオリヴィエ・クリュッグ氏とともにメゾンの指揮を執っている。「オリヴィエが寝る間を惜しんで世界中に『クリュッグ』の魅力を伝えてくれる。そのおかげで、私はシャンパーニュづくりに専念することができるのです」とルベル氏。互いの信頼は強く、困ったことがあれば何でも相談しあえる仲だと話す。

「クリュッグ」といえば、先代のアンリ氏(醸造担当)とレミ氏(広報・マーケティング担当)兄弟の確固たる絆はワイン業界では有名で、「クリュッグが安泰なのも兄弟仲がよいからだ」とワイン業界で尊敬を集めていた。「最近では、オリヴィエと私は“アンリとレミのよう”と言われることが多いですね」と、ルベル氏は笑顔を見せる。

 彼はこの3月に“174th エディション”を仕込んだが、これがリリースされるのは2026年の予定だという。「本当に、気が遠くなるような仕事だと思いますよ。熟成に少なくとも7年以上かけるのですからね。ですが、『クリュッグ』が『クリュッグ』たるゆえんはそこにあります。人の記憶に残るものをつくるには、時間がかかるのです」

問い合わせ先
MHD モエ ヘネシー ディアジオ
TEL.03(5217)9737
公式サイト

T JAPAN LINE@友だち募集中!
おすすめ情報をお届け

友だち追加
 

LATEST

This article is a sponsored article by
''.