TEXT&PHOTOGRAPHS BY JUNKO AMANO
今年は桜の開花が早く、京都では見頃を迎えたお花見スポットが増えてきています。今回は、お花見の後に立ち寄りたい、カフェを備えた日本茶専門店を紹介します。
烏丸丸太町の「YUGEN」
宇治茶は日本三大銘茶の一つと呼ばれ、京都市内でも、日本茶をさまざまなスタイルで楽しめる店に出会える。日本茶を製造・販売する茶舗は、長い歴史を持つ老舗が大半を占めるなか、「YUGEN」は2018年に誕生。昨年2月に店舗を移転拡大し、注目を集める日本茶ブランドだ。
「YUGEN」で製造・販売されている茶葉は、宇治や宇治田原、和束、京田辺など、京都近郊の産地に限定されている。仲買い問屋を挟まず、生産者から直接仕入れることで、高品質な茶葉を低コストで提供。煎茶は、単一農園で収穫されたシングルオリジンも人気が高い。
店舗展開としては、「おいしい日本茶をコーヒーのように気軽に楽しめる場所があれば」との思いから2018年、わずか2.5坪の日本茶スタンドからスタートした。ここ数年で、日本茶を提供するカフェやカジュアルな茶処も増えたことから「YUGEN」は次のステージに進み、2022年2月に、築50年弱のビル1棟に移転オープンした。
新店舗の1階は、カウンターのみのカフェに。「茶の湯の文化は戦国時代に広がりました。茶室には刀を持って入ることが許されず、戦国武将にとって、茶室は唯一心が安らげる場所だったとも言われています。多忙を極めるストレスフルな今の時代にも、そんな場所や時間が必要だと思うんです」と、代表・須藤惟行さん。
カウンターには風炉釜が備えられ、まるで茶室でお点前を拝見するかのように、目の前でお茶を淹れてもらうところから楽しめ、しばし日常を忘れ、ホッと一息つける場所になっている。
日本茶と共に供される菓子もお楽しみ。甘い菓子を日本茶で流すペアリングではなく、どちらの風味も引き立つよう、菓子は甘さ控えめに。大納言小豆を使ったこしあんを包んだ桜餅や白小豆の汁粉など、通常は上生菓子に使われるような最上級の素材を贅沢に使い、香りや味わいも格別だ。
2階ではワークショップやイベントが開催され、3階では現代作家の器の展示販売もあり。「暮らしのなかにお茶がある」と考え、店で使用している茶器をはじめ、暮らしにまつわるあれこれが並んでいる。
ミニマルで凛と美しい1階とは打って変わり、2、3階は古いビルの面影を残しつつ、スタイリッシュにリノベーションされていて、まるで水を張っているように見える床も印象的だ。
行きたいところや見たいものが多すぎて、京都旅はスケジュールを詰め込みがちですが、ひと息ついて、ゆっくりお茶で一服してみてはいかがでしょうか。
YUGEN(ゆうげん)
住所:京都市中京区亀屋町146
営業時間:11:00~18:00
定休日:不定休
TEL. 075(708)7770
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