京都生まれ、京都育ちの食いしん坊、京都でおいしいものに出合いたければ、この人に聞けばハズレなし!そんなアマジュンこと天野準子の絶品満腹口福アドレス。7月はかき氷を紹介。第1弾は「かさぎ屋」

TEXT & PHOTOGRAPHS BY JUNKO AMANO

二寧坂「かさぎ屋」

画像: しるこセーキ¥750(4月中旬〜10月末までの期間限定)

しるこセーキ¥750(4月中旬〜10月末までの期間限定)

 蒸し暑いことで知られる京都の夏。今年も7月に入ると、毎日が蒸し風呂状態で、湿気と暑さで息苦しい・・・とまで思うことも。そこで、7月は、キーンと冷たいかき氷を紹介。最近は、エスプーマがのっていたり、デコレーション盛り盛りなかき氷も増えているが、今回はスルスルと喉を通る素朴系3選。

「かさぎ屋」は、大正3年から二寧坂で店を構える甘味処だ。清水寺に向かう参道、二寧坂は、長く続いていた老舗がどんどんなくなり、その代わりに観光向けの店が増え、街が様変わりしている。さらに、以前にも増して外国人ツーリストや日本人観光客で賑わっているため、地元・京都人のなかには行くのを極力避けているという人も多い。そして私もその一人なのだが、それでも「かさぎ屋」は、人混みをかき分け行きたい店であり、特にかき氷の時期はなおのことだ。

画像: 二寧坂の石段横。明治末期に建てられた風情ある佇まい

二寧坂の石段横。明治末期に建てられた風情ある佇まい

 かき氷の中で必ず注文するのが、「しるこセーキ」だ。通常のかき氷と違い、こしあんとかき氷があらかじめ合わさったもので、今で言う、こしあんフラペチーノ。取っ手付きのグラスで出され、スプーンですくって食べると、シャリシャリとろとろ、こしあんとクラッシュアイスの一体感が楽しめる。さらに、時間が経って氷がちょっと溶けた後の甘さが薄まった感じもあっさりおいしい。

画像: トッピングは柔らかモチモチの白玉のみ。温かい宇治の煎茶が一緒に出されるのもうれしい

トッピングは柔らかモチモチの白玉のみ。温かい宇治の煎茶が一緒に出されるのもうれしい

「しるこセーキ」は、昭和初期、ミルクセーキが大流行した際に、初代が甘味処らしくこしあんを使って考案したもので、以来、4代にわたり受け継がれている。そのほかのかき氷も、初代の頃より変わらず、蜜は白蜜と抹茶蜜の2種類のみ。白蜜は、今だに昔ながらのかまどで炊かれ、抹茶蜜は注文を受けてから抹茶を点て、白蜜に合わせて作られる。

画像: 何十年と変わっていないシンプルなお品書き

何十年と変わっていないシンプルなお品書き

 ところで、関東と関西ではぜんざいやしるこの呼び方が違うことはご存じだろうか。関東は汁気のあるなし、関西は粒あんとこしあんの違いでぜんざいとおしるこに区別されていて、私も20年ほど前、こちらの店でそのことを教えてもらった。京都のぜんざいは、関東では、田舎汁粉と呼ばれ、さらに「かさぎ屋」で一番大好き「亀山」は、関東ではぜんざいと言われていることに、衝撃を受けたことを覚えている。

画像: 餅の上に粒餡がたっぷりのった「亀山」¥900

餅の上に粒餡がたっぷりのった「亀山」¥900

 亀山には丹波大納言あずきが使われていて、運ばれてきた茶碗の蓋を開けると、湯気が立ち上り、目で見てわかるほど、粒餡がふっくらツヤツヤだ。丹波大納言あずきは、粒が大きく、それでいて皮が薄く、煮崩れにくいのが特徴で、口に含むと、ふわふわながら、やわやわすぎず、口当たりも抜群。甘さと共に、小豆の味がしっかり感じられる。余計なトッピングはなく、粒餡のみながら、食べ飽きず、無心で食べてしまう。
「あんこの炊き方はおばあちゃんに教えてもらいました。かまどで炊くとふっくらすると言わはるんですが、かまどでしか炊いたことないし、私はわからないです」と、4代目、北川清子さん。以前は、祖母、母、清子さんの3世代で店を切り盛りしていたが、現在は、夫婦で切り盛りされている。変わりゆく街で、変わらずに、家族が代々、店を継承されているところも、通いたくなる理由だ。

画像: 4代目となる北川さん夫婦。清子さんは生まれも育ちも二寧坂界隈という生粋の八坂っ子

4代目となる北川さん夫婦。清子さんは生まれも育ちも二寧坂界隈という生粋の八坂っ子

画像: 大正時代、近くに住んでいた竹久夢二も通っていたそう

大正時代、近くに住んでいた竹久夢二も通っていたそう

かさぎ屋
住所:京都府京都市東山区高台寺桝屋町349
営業時間:10:00〜17:30(17:10LO)
定休日:火曜
TEL. 075-561-9562

画像: 天野準子 生まれてこの方、碁盤の目と呼ばれる京都の街中暮らし。雑誌やWEBで京都にまつわるライティングやコーディネートを行っている。プライベートでは、強靱な胃袋を武器に日々、おいしいものをハント

天野準子
生まれてこの方、碁盤の目と呼ばれる京都の街中暮らし。雑誌やWEBで京都にまつわるライティングやコーディネートを行っている。プライベートでは、強靱な胃袋を武器に日々、おいしいものをハント

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