ホテルジャーナリスト、せきね きょうこが独自の視点でおすすめの東京ホテルを案内。連載第10回目は「星のや東京」。江戸を垣間見る古地図歩きで“粋なおもてなし”

BY KYOKO SEKINE

 首都東京の中心である大手町に、日本旅館「星のや東京」が誕生したのが2016年7月20日。都心の旅館で天然温泉が楽しめるとあり、このオープンが大きな話題となったのは記憶に新しい。「星のや東京」が発信するモダニズムの中には、東京に残る江戸の文化、伝統の心意気が見え隠れする。日本の伝統をまとったモダンな高級旅館に、世界中から熱い視線が注がれている。

画像: 「星のや東京」正面玄関。エレガントなビルと木立が印象的

「星のや東京」正面玄関。エレガントなビルと木立が印象的

 旅館の周辺には最新の環境整備が施され、玄関前には都会のオアシスのようにとの思いから木々を植樹。小舟の形をした石のベンチも置かれて周囲の人がひと呼吸できる公園のように整えられている。「日本旅館は日本文化のテーマホテル」ととらえる星野リゾートならでは、建物外観は江戸小紋の麻の葉をモチーフにデザインされ、ビル全体がまるで風呂敷で包まれているかのようにも見える。

画像: 白木の美しさが際立つ玄関内。お香の香りに癒される

白木の美しさが際立つ玄関内。お香の香りに癒される

 また玄関ドアは、樹齢300年以上という青森ヒバで造られた白木の大木戸だ。一歩中に入れば、喧騒から隔絶された静謐な空間に、ほんのりと白檀が香る。ここで履き物を脱ぎ、素足で畳の廊下を歩いて階上の客室へと促され、伝統的な旅館スタイルの滞在がスタートする。

画像: ロビーラウンジ

ロビーラウンジ

画像: 日本旅館らしさとモダニズムが溶け合った客室

日本旅館らしさとモダニズムが溶け合った客室

“ご当地主義”を貫く星野リゾート。「星のや東京」でも、そのコンセプトを活かし、この土地ならではの様々なアクティビティがつねに提供されている。この日、私が参加したのは「古地図歩き」だ。 不定期開催につきリクエストのうえで、早朝7:30~9:00に、都心をプロフェッショナルのガイドとともに散策する。都心に残された江戸の史跡を実際に随所で観て、触れて、説明を聞くという江戸の文化を探索する体験は、現場を歩くことでさすがの迫力と臨場感を堪能できる。「『星のや東京』が建つ場所には、江戸時代に徳川家康を支えた酒井家の上屋敷があり、江戸城(現皇居)の正門である大手門に近い一等地とされていました」。ビル群を歩きながら、ストーリーテラーのガイドが参加者を江戸へといざなってくれる。映像や書籍を通じて得る知識とは違い、史跡となった“本物”を見ながら話を聞いていると、気風のいい江戸弁の飛び交う様が目に浮かぶようだ。

画像: 江戸の古地図を手に、超斬新に変貌を遂げた大手町付近を散策

江戸の古地図を手に、超斬新に変貌を遂げた大手町付近を散策

 ツアーが最高に盛り上がったのは、日本橋川(※千代田区三崎町三丁目三崎橋で神田川から南へ分かれ、皇居北側を経て中央区へ入り、新川一丁目豊海橋下手で隅田川に注ぐ、全長4.84kmの河川。現在はほぼ全流路、首都高速道路の高架下に入っている)にたどり着いたときだ。日本橋、常盤橋、鎌倉橋、神田橋など、現存する「橋」にまつわる話を聞き、全員の足が止まった。いくつかの橋のたもとには、江戸時代、船の停泊や荷揚げのために造られた石畳が当時のままに残っているのだ。川沿いには江戸城の巨大な石垣だった石塀が残る場所もあると知り、新鮮な驚きだった。

 皇居東側にあたる大手門から250mほどのところには、「伊達騒動終末の地」と案内板が立てられ、同じ場所に、霊的パワースポットとして参拝する人が絶えない平将門の首塚がある。

画像: 海外の人からも愛される、絶品のおにぎり朝食 PHOTOGRAPHS: COURTESY OF HOSHINOYA TOKYO

海外の人からも愛される、絶品のおにぎり朝食
PHOTOGRAPHS: COURTESY OF HOSHINOYA TOKYO

 この日のガイドを務めてくれたのは、歩く旅を専門とする「歩き旅応援舎」代表の岡本永義氏。祭りや花火好きな江戸っ子の粋、先人たちの優れた日常生活の知恵などを熱く語ってくれた。話を聞きながら、何度、現代から歴史の舞台へとタイムスリップしただろう。こうして1時間半はあっという間に過ぎ、宿に戻ったとたん空腹感に襲われて、絶品のおにぎり朝食にありついたのだった。

星のや東京(HOSHINOYA TOKYO)

住所:東京都千代田区大手町1-9-1
予約電話:0570-073-066
(星のや総合予約:9:00 ~ 20:00)
客室:全84室
料金:¥72,000~
(1泊1名の料金。消費税・サービス料込) 
 ※日によって料金が異なるため、要問合わせ
公式サイト

せきね きょうこ
ホテルジャーナリスト。フランスで19世紀教会建築美術史を専攻した後、スイスの山岳リゾート地で観光案内所に勤務。在職中に住居として4ツ星ホテル生活を経験。以来、ホテルの表裏一体の面白さに魅了され、フリー仏語通訳を経て、94年からジャーナリズムの世界へ。「ホテルマン、環境問題、スパ」の3テーマを中心に、世界各国でホテル、リゾート、旅館、および 関係者へのインタビューや取材にあたり、ホテル、スパなどの世界会議にも数多く招かれている。雑誌や新聞などで多数連載を持つかたわら、近年はビジネスホテルのプロデュースや旅館のアドバイザー、ホテルのコンサルタントなどにも活動の場を広げている
www.kyokosekine.com

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