「オフ-ホワイト c/o ヴァージル アブロー™」のデザイナー、ヴァージル・アブロー。2010年代のトレンド牽引者である彼が、日本初の個展を東京・広尾にあるカイカイキキギャラリーで開いた

BY MASANOBU MATSUMOTO

画像: 《a mere image》 2018年、Screen print on chrome COURTESY OF KAIKAI KIKI

《a mere image》
2018年、Screen print on chrome
COURTESY OF KAIKAI KIKI

 カニエ・ウェストのクリエイティブディレクターで、ファッションブランド「オフ-ホワイト c/o ヴァージル アブロー™」のデザイナー、建築家、アーティストとしても活動するヴァージル・アブロー。彼のアート展『“PAY PER VIEW”』が、村上隆が主宰するカイカイキキギャラリーで始まった。

 彼はこの個展を「宣伝や広告が、我々の意識をいかに形作っていくのかを解き明かす展覧会」と位置付けている。近年、ファッションやカルチャーシーンの“仕掛け人”として消費社会全般に影響を与えてきたヴァージルにとって、これは、これまでの活動の核心を突く展覧会だと言えるかもしれない。

画像: ヴァージル・アブロー 大学では建築学を專攻。フェンディにてシルヴィア・フェンディのアシスタントをつとめ、その後、カニエ・ウエストのクリエイティブディレクターとして活躍。「パイレックス ヴィジョン」や「RSVPギャラリー」などのブランドを手がけたのち2013年に「オフ-ホワイト c/o ヴァージル アブロー™」を創設。メンズ、ウィメンズコレクションを発表している

ヴァージル・アブロー
大学では建築学を專攻。フェンディにてシルヴィア・フェンディのアシスタントをつとめ、その後、カニエ・ウエストのクリエイティブディレクターとして活躍。「パイレックス ヴィジョン」や「RSVPギャラリー」などのブランドを手がけたのち2013年に「オフ-ホワイト c/o ヴァージル アブロー™」を創設。メンズ、ウィメンズコレクションを発表している

 入り口に面したメインスペースで印象的なのは、黒ずくめの作品だ。中央にそびえるのは、黒でペイントされたガソリンスタンドの価格掲示板。壁面には黒く塗りつぶされたキャンバスが、実在する広告代理店のロゴとともにかけられ、床にはメッセージラグが敷かれている。それぞれ独立した作品だが、ヴァージルはこれらをスタイリングするように配置し、展示全体で見るものの思考に揺さぶりをかける。

画像: 黒いキャンバスは、ロシアの巨匠カジミール・マレーヴィッチの視覚性を徹底的に排除した抽象画《黒い正方形》にインスパイアされたもの PHOTOGRAPH BY KOICHIRO MATSUI

黒いキャンバスは、ロシアの巨匠カジミール・マレーヴィッチの視覚性を徹底的に排除した抽象画《黒い正方形》にインスパイアされたもの
PHOTOGRAPH BY KOICHIRO MATSUI

 たとえばラグの「OIL ON CANVAS」の文字に目を向けてみよう。これは作品の素材を示すもので、キャンバス地に油絵の具で描かれた絵画作品を意味する。だが、これにガソリンスタンドのモチーフが並ぶと、「OIL」は石油、すなわち世界経済を操る権力の象徴の意味ともとれる。また一方、油絵は急速に拡大した現代のアート市場において、最も流通量が多く、プライスの跳ね上がりも大きいカテゴリーだ。なかには何百億円もの値がつく油絵もあり、“兵器が買えるほど”と表現されることもある。とすると、石油やアート産業の現実に潜む闇のようなものが頭に浮かぶ人もいるかもしれない。こうした文字と黒いオブジェから始まる思考のアルゴリズムもまたヴァージルの作品意図だ。

画像: 琉球畳が敷き詰めれらた居間のような空間に映像や企業ロゴを使った作品が配置されている PHOTOGRAPH BY KOICHIRO MATSUI

琉球畳が敷き詰めれらた居間のような空間に映像や企業ロゴを使った作品が配置されている
PHOTOGRAPH BY KOICHIRO MATSUI

 琉球畳が敷き詰めれらたスペースには、「オフ‐ホワイト」のコレクション映像を映し出すモニタや、エビアンやコカコーラなどの企業ロゴをローテーションで流すアナログ掲示板などが置かれている。鑑賞者はそこで靴を脱ぎ、中央に置かれたチェアに座ったりしながら作品を眺める。かつてならば、こうした「広告」や「宣伝」をテーマにした作品は、都市論的な視点で批評されたり、あるいはキャンベルスープの缶を描いたアンディ・ウォーホルのようにポップアートの文脈で評価されてきた。しかしヴァージルにとって「広告」や「宣伝」とは、もはやリビングのインテリアのようにすっかり生活に溶け込み、身体的に感じる対象なのである。

 そう考えると、ヴァージルが90年代風の企業ロゴの配置や広告グラフィックをファッションとして提案した意義がわかってくる。リバイバルではなく、それを皮膚感覚で楽しめるようになった2010年代の、新しい表現だ。村上隆がヴァージル・アブローを“ゲームチェンジャー”と評価したのもしかり。この展覧会は、われわれが“新しい時代”にいるということを明らかに伝えてくれる。

ヴァージル・アブロー個展『“PAY PER VIEW”』
会期:~4月1日(日)
会場:カイカイキキギャラリー
住所:東京都港区元麻布2-3-30 元麻布クレストビル B1
時間:11:00~19:00
休廊日:日、月曜、祝日
TEL. 03(6823)6038
公式サイト

 

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