アジア最大級のアートフェア『アートバーゼル 香港』が3月27日に開幕する。市内の美術館やギャラリーと協業しながらダイナミックな香港のアートシーンを体験させる、このフェアの見どころと傾向についてフェア・ディレクターのアデリン・ウーイに話を聞いた

BY MASANOBU MATSUMOTO

 ひとつは、フェア全体を通して、東南アジアの作家が広くフィーチャーされることだ。「じつは、これはわれわれが意図したことではなく、各ギャラリーが作家をセレクションした結果、自然とそうなりました。日本や中国、韓国とは異なり、東南アジアにはまだ大きな美術館も少なく、作家が作品を発表する場が多いとは言えません。現地のギャラリーにとって、アートバーゼル 香港は、作家をプレゼンテーションする絶好の場になっているのだと思います」とウーイは話す。

画像: アディティア・ノヴァリ 《ABSTRACT OF THE ABSENCE SERIES (#F0E68C, #FFD700, #DAA520, #FFA07A, #FF8C00)》 2018年 ROH Projects PHOTO CREDIT: THE ARTIST, COURTESY OF ROH PROJECTS AND THE GALLERY

アディティア・ノヴァリ
《ABSTRACT OF THE ABSENCE SERIES (#F0E68C, #FFD700, #DAA520, #FFA07A, #FF8C00)》 2018年
ROH Projects
PHOTO CREDIT: THE ARTIST, COURTESY OF ROH PROJECTS AND THE GALLERY

 注目すべきはノヴァ・コンテンポラリーで紹介されるミャンマーの新鋭作家モ・サや、ジャカルタを拠点にもつROH プロジェクツに所属するアディティア・ノヴァリの作品など。「ミャンマーのモ・サは、民主化が進むなか、軍の独裁政権下にあった幼少期の記憶や体験を元にしたパフォーマンス作品に挑む作家です。ひとことで東南アジアと言っても、とても広大で、また各地域によって作家の特徴もさまざま。タイやインドにも、ユニークなアーティストが登場していますし、彼らの作品を通して、新しいアジアの作家の創造性、また東南アジア諸国の多様性や複雑な歴史性も感じていただけるはずです」

画像: 瑛九 《海の原型》 1958年 WATANUKI LTD. / TOKI-NO-WASUREMONO COURTESY OF WATANUKI LTD. / TOKI-NO-WASUREMONO

瑛九 《海の原型》 1958年
WATANUKI LTD. / TOKI-NO-WASUREMONO
COURTESY OF WATANUKI LTD. / TOKI-NO-WASUREMONO

 一方、新しい作家を紹介するだけではなく、美術史のなかに埋もれているアジア人アーティストを再発掘・再評価しようとする動きも、アートバーゼル 香港の出品ラインナップからみてとれる。

 日本からは、ヨシアキ イノウエ ギャラリーが、写真家の田原桂一が世界の各都市を舞台にダンサーの田中泯を切り取った『光合成』シリーズを、ワタヌキ|ときの忘れものは、瀧口修造とならび日本の近代美術の先駆けとして知られる画家、瑛九の油絵などを展示する。

 また、アートバーゼル 香港のセクションのひとつで、テーマ性を設けて作品を紹介する「キャビネット」部門では、今回、地域のアートシーンに大きな影響を与えながらも、世界的にはあまり知られていない“隠れたヒーローたち”の作品を紹介する予定だという。「並ぶのは、日本のアバンギャルド作家、柳幸典や台湾のワンパンモワリ、韓国のユ・ヨングク、フィリピンのパシタ・アバダなどのヒストリカルな作品。こうしたアジアのローカルな美術史の中に埋もれていた重要な作家を発掘し、世界的なマーケットで再評価することも、このアートバーゼル 香港の大きな役割だと思います」

画像: 田原桂一 《Bordeaux-11, 1980》1996年 Yoshiaki Inoue Gallery COURTESY OF THE ARTIST AND YOSHIAKI INOUE GALLERY

田原桂一 《Bordeaux-11, 1980》1996年
Yoshiaki Inoue Gallery
COURTESY OF THE ARTIST AND YOSHIAKI INOUE GALLERY

画像: ティシャン・スゥ 《Becoming Fish》1996年 Empty Gallery COURTESY OF THE ARTIST AND EMPTY GALLERY

ティシャン・スゥ
《Becoming Fish》1996年
Empty Gallery
COURTESY OF THE ARTIST AND EMPTY GALLERY

「見どころを挙げていったら、きりがない」と笑いながらも、「ただフェアの会場であるコンベンションセンターだけにずっといる必要はありません。アートに沸く香港の街全体を体感してほしいですね」とウーイは述べる。

 市内の美術館や文化施設もアートバーゼル 香港と連帯し、同時期にイベントや展覧会を開催。オープン前のM+ではパビリオンを設け、イサム・ノグチとヤン・ヴォーのコラボレーション展を、また香港の現代美術シーンを牽引する独立系アートスペース、パラサイトでも『動物のためのオペラ』と題した企画展を行う。

「香港には、多くのトップギャラリーが支店を設けています。またフェアとタイミングを合わせるように、英国の老舗画廊リッソン・ギャラリー、NYのレビー・ゴルビー・ギャラリーが、市内に新しいスペースをオープン予定。そういったギャラリーをホッピングして巡るのもオススメですね。もちろん、香港の街には美味しいものもたくさんあるので、忘れずに。ひとつだけアドバイスすれば、歩きやすいフラットシューズを持参すること、でしょうか。たくさん街を歩いていただき、香港のアートや文化を満喫していただきたい。われわれもそこに香港でアートフェアを行う意義があると思いますから」

『アートバーゼル 香港 2019』
日程:2019年3月29日(金)〜3月31日(日)
会場:香港コンベンション&エキシビション・センター
住所:1 Expo Drive, Wanchai, Hong Kong
時間:29、30日/13:00〜20:00、31日/11:00〜18:00
料金およびチケットの購入方法などの詳細は
公式サイトを参照

 

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