BY MASANOBU MATSUMOTO
『画家が見たこども展 ゴッホ、ボナール、ヴュイヤール、ドニ、ヴァロットン』|三菱一号館美術館
近年、再評価の渦中にある「ナビ派」。19世紀末、ピエール・ボナールやエドゥアール・ヴュイヤール、モーリス・ドニらがパリで結成した前衛画家のグループだ。彼らが積極的に描いた新しい画題のひとつに「子ども」がある。
子どもを描くことが、前衛であり、新しいとはどういうことか? ーーじつはヨーロッパにおいて、画家たちが芸術表現として、子どもを画題にしはじめるのは、いわゆる“近代”になってからのことである。宗教画における天使、聖母子像の子キリストとして登場したり、また、富裕層が画家にオーダーして描かせた肖像画に現れることがあっても、伝統的に子どもは“未完成の大人”と見なされており、表現すべき対象にはなり得なかったわけだ。
フランス革命が起こり、教育制度が整備され、社会における「子ども観」が大きく転換すると、ようやく画家たちは子どもを、大人とは違う独立した個性を持つ存在として描くようになる。ロマン主義や写実主義の画家は模範的な子どもを絵で表現し、ゴッホやゴーギャンなどは、子ども時代を無垢と幸福の時代、失われたエデンとして描いた。そして、その次の世代にあたるナビ派の時代になると、絵画に描かれる子どもは、表情やポーズにおいてもより多様性を増していく。
『画家が見たこども』展では、ナビ派の作品を中心に、子どもをモデルにした油彩や版画、挿絵本、写真など約100点を展示。子どもたちは画家にどのような着想を与え、また画家のまなざしをどう変えたのかを検証する。とりわけボナールは、子どもを主題にするだけでなく、子どもが世界をどう見ているのかを熱心に探求した人物であった。晩年までに、固定観念や経験によるバイアスのない、まるで子どもが描いたような風景画を描いており、本展でも数点、紹介されている。
子どもの服装に注目してみるのも、面白いだろう。ナビ派の画家たちは、パリの都市生活者。会場に飾られた彼らの絵には、セーラー服を着た男の子たち、エプロンやスモックをまとった女の子たち、お揃いコーディネイトの兄弟などが登場し、当時のファッションをつぶさに記録している。
『画家が見たこども展 ゴッホ、ボナール、ヴュイヤール、ドニ、ヴァロットン』
会期:〜6月7日(日)
※ 新型コロナウイルス感染症の感染予防・拡散防止のため、臨時休館中。再開は、公式サイト
)にて告知
会場:三菱一号館美術館
住所:千代田区丸の内2-6-2
開館時間:10:00 〜18:00 ※入館は閉館の30分前まで
(祝日を除く金曜、第2水曜、4月6日と会期最終週平日は21:00まで)
休館日:月曜(祝日、3月30日、4月6日、4月27日、5月25日、6月1日は開館
料金:一般¥1,700、大学・高校生¥1,000、中学生以下無料
電話:03(5777)8600(ハローダイヤル)
公式サイト