令和時代の工芸シーンをリードする12人の綺羅星を集めた展覧会に、日本のアール・ブリュットにフォーカスしたグループ展。また伝説の造形芸術学校「バウハウス」の教育をひもとく特別展。現在開催中の3つの展覧会の見どころを紹介する

BY MASANOBU MATSUMOTO

『きたれ、バウハウス』|東京ステーションギャラリー

 約100年前の1919年、ドイツ・ヴァイマールに設立された「バウハウス」。ナチスの弾圧によってわずか14年で幕を閉じるまで、パウル・クレーやカンディンスキーといった当時のアート界の旗手が教鞭を採ったことでも知られる画期的な美術総合学校だ。目指したのは「総合」。絵画なら絵画、彫刻なら彫刻と作品の技法やメディアに準じた従来の学びに異論を唱え、いまでいう領域横断的な教育をいち早く実践した。

 では実際にどういった授業が行われ、学生たちはどのように学びを深めていったのかーー。東京ステーションギャラリーで開催中の『きたれ、バウハウス』展は、このバウハウスで行われた実際の課題や成果物を交えながら、教育内容をつまびらかにする。

画像: ヴァルター・グロピウス バウハウス・デッサウ校舎 1925-26年(2015年撮影) PHOTOGRAPH BY TOMOYUKI YANAGAWA

ヴァルター・グロピウス バウハウス・デッサウ校舎 1925-26年(2015年撮影)
PHOTOGRAPH BY TOMOYUKI YANAGAWA

画像: (写真左)1922年のバウハウスの教育カリキュラム図 (「学校便覧」より) 1922年。図の中央に書かれたBAUは「建築」の意味。あらゆる芸術を総合、統合し、建築に昇華することを目指した COURTESY OF THE EXHIBITION “KOMMT ANS BOUHOUS!“ (写真右)フリッツ・シュライバー 学生たち(アトリエのバルコニー)1932年頃、ミサワホーム株式会社 COURTESY OF MISAWA HOME CO., LTD

(写真左)1922年のバウハウスの教育カリキュラム図 (「学校便覧」より) 1922年。図の中央に書かれたBAUは「建築」の意味。あらゆる芸術を総合、統合し、建築に昇華することを目指した
COURTESY OF THE EXHIBITION “KOMMT ANS BOUHOUS!“
(写真右)フリッツ・シュライバー 学生たち(アトリエのバルコニー)1932年頃、ミサワホーム株式会社
COURTESY OF MISAWA HOME CO., LTD

 実際に、バウハウスに入学した学生は、色彩やものの形態など芸術における基礎や教養を学ぶ「予備教育」を経て、家具、金属、印刷・広告といった専門的な「工房教育」へ進んでいく。本展では、そのプロセスを追体験するような展示構成がとられており、面白い。とりわけ後者の「工房教育」のスペースでは、建築家・家具デザイナーのマルセル・ブロイヤーによる肘掛け椅子《ヴァシリー・チェア》やカラフルな《ネストテーブル》、マリアンネ・ブラントの鋳金のティーセットなど、バウハウスの工房で生まれた名作が並び、デザインファン必見の内容だ。

画像: マルセル・ブロイヤー《クラブチェアB3(ヴァシリー)》1925/26年、宇都宮美術館 COURTESY OF UTSUNOMIYA MUSEUM OF ART

マルセル・ブロイヤー《クラブチェアB3(ヴァシリー)》1925/26年、宇都宮美術館
COURTESY OF UTSUNOMIYA MUSEUM OF ART

画像: マルセル・ブロイヤー《ネスト・テーブルB9-B9c》1929年、東京国立近代美術館 COURTESY OF THE NATIONAL MUSEUM OF MODERN ART, TOKYO

マルセル・ブロイヤー《ネスト・テーブルB9-B9c》1929年、東京国立近代美術館
COURTESY OF THE NATIONAL MUSEUM OF MODERN ART, TOKYO

 こうした作品が当時の社会的課題と密接に関係し生まれているのも興味深い。工業化が急スピードで進んだ時代。素材に対して無駄を出さずに、効率性を加味しながらものづくりを行うことも目指されており、なかには女性の家事負担をサポートするような制作物も見られる。

 一方で、生活に準じたプロダクトのみならず、舞台芸術もバウハウスの教育対象のひとつであった。オスカー・シュレンマーの《三つ組のバレエ》など、古典的なバレエとは一線を画す作品も会場では上映される。

画像: 展覧会の会場風景 © HAYATO WAKABAYASHI

展覧会の会場風景
© HAYATO WAKABAYASHI

 じつのところ、このバウハウスには、4人の日本人がリアルタイムで在籍していた。水谷武彦、山脇巌、山脇道子、そして大野玉枝。本展では、彼らの在学中の様子や帰国後の活動にもフォーカスし、バウハウスが日本のアート、デザインシーンに与えた影響も紹介する。

『開校100年 きたれ、バウハウス ―造形教育の基礎―』
会期:〜9月6日(日)
会場:東京ステーションギャラリー
住所:東京都千代田区丸の内1-9-1
開館時間:10:00〜18:00 ※ 金曜は〜20:00
(入館は閉館の30分前まで)
休館日:月曜 ※ただし8月10日、31日は開館
入館料:一般 ¥1,200、大学・高校生 ¥1,000、中学生以下 無料
※ 日時指定制のため、ローソンチケットで要事前予約・チケット購入(Lコード=31523)
電話:03(3212)2485
公式サイト

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