生前のアレン・ギンズバーグのポートレイトを撮影したことでも知られる堀清英の写真展、“キュン”だけでない恋をテーマにした浮世絵展、86歳の現代美術家、伊藤慶二の個展。開催中のアート展から絶対に見るべき3つのエキシビションをピックアップ

BY MASANOBU MATSUMOTO

『RED 堀 清英 写真展』|シャネル・ネクサス・ホール

画像: 「RED」シリーズより © KIYOHIDE HORI

「RED」シリーズより
© KIYOHIDE HORI

 堀清英は、雑誌や広告、ミュージシャンのポートレイト作品など、多彩なシーンで活躍するフォトグラファー。1991年にニューヨークのIPC(国際写真センター)で写真を学び、在米中に出会った「ビートジェネレーション」の中心的人物、詩人アレン・ギンズバーグの思想に大きな影響を受けた。2017年にはギンズバーグの代表作『HOWL』へのアンサーフォトとして『re;HOWL』シリーズを発表。当時ギンズバーグが物質主義的な社会や保守的な価値観に、言葉や詩で格闘し、若者を奮い立たせたように、堀も同シリーズで現代社会にアイロニカルな視線を向けた。

 自らの作品を「ピクチャーポエム」と形容する堀。本展では、“自分とは何者か”という問いと対峙ながら制作した新作シリーズ「RED」を初公開。公園に残る古い遊具やゴミ処理場、科学館などを背景に、赤いワンピースを着た女性が登場するこのシリーズは、「自分自身を投影したセルフポートレイト」であるという。加えて会場では、シュルリアリスムの影響を強く感じさせる90年代以降の作品群、また彼の創作活動の原点といえる手製のフォトブックなどを三部構成で見せる。展示全体を通じて、堀の自己探求の道程をつまびらかにする。

『RED 堀 清英 写真展』
会期:1月19日(水)~2月20日(日)
会場:シャネル・ネクサス・ホール
住所:東京都中央区銀座3-5-3 シャネル銀座ビルディング4F
開館時間:11:00~19:00(最終入場は18:30まで)
会期中無休
料金:無料
電話:03-6386-3071(シャネル・ネクサス・ホール事務局)
公式サイトはこちら

『江戸の恋』|太田記念美術館

画像: 鈴木春信《男女図(桜)》 COURTESY OF OTA MEMORIAL MUSEUM OF ART

鈴木春信《男女図(桜)》
COURTESY OF OTA MEMORIAL MUSEUM OF ART

 江戸の庶民の暮らしぶりや流行風俗などを描き、人々の娯楽として愛された浮世絵。実のところ、そのなかには歌舞伎や浄瑠璃の愛憎劇を画題にしたものも多く、浮世絵にはさまざまな恋愛のかたちをみることができるという。本展のテーマは、いわば「浮世絵で読む恋バナ」。鈴木春信、勝川春章、歌川国貞などの絵師たちの作品を集め、江戸の人々の心を鷲掴みにした多様な恋愛物語を紹介する。

 みどころのひとつは、錦絵(多色刷りの版画)の大家、鈴木春信の作品群。柔和な描線と淡い色彩で、麗しい恋人たちの姿が描かれている。本展に登場する“恋バナ”は、当時ポピュラーだった“愛らしい姫君と凛々しい若衆”、“人気の遊女と勇ましい侠客”など理想化された恋物語から、もつれた三角関係、衝撃的な結末を迎える破滅の恋まで。“キュン”だけでない、人間の本性が垣間見れるドロドロとした恋愛ドラマにもフォーカスを当てる。

『江戸の恋』
会期:1月5日(水)〜1月30日(日)
会場:太田記念美術館
住所:東京都渋谷区神宮前1-10-10
開館時間:10:30~17:30(入館は17:00まで)
休館日:月曜(祝日の場合は開館、翌日休館)
料金:一般 ¥800、大学・高校生 ¥600、中学生以下無料
電話:050-5541-8600(ハローダイヤル)
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『伊藤慶二展』|小山登美夫ギャラリー

画像: (写真左)《ういた眼 Floating Eye》2021年 布に糸、コラージュ <H99.5×W63.0cm> © KEIJI ITO (写真右)《おんな Woman》2019年 陶土、釉薬 <H32.0×W22.6xH8.5cm> © KEIJI ITO

(写真左)《ういた眼 Floating Eye》2021年 布に糸、コラージュ <H99.5×W63.0cm>
© KEIJI ITO
(写真右)《おんな Woman》2019年 陶土、釉薬 <H32.0×W22.6xH8.5cm>
© KEIJI ITO

 伊藤慶二は、陶(焼き物)の立体作品で知られる86歳のアーティスト。武蔵野美術大学で油絵を学んだのち、生まれ故郷の岐阜県にある岐阜県磁器試験場にデザイナーとして勤務。クラフト運動の指導者、日根野作三に師事した。みずから焼き物の制作を手がけるようになると、陶による彫刻やインスタレーションを発表。70歳を過ぎてからは工房と自宅に絵画のアトリエを設置し、陶、彫刻、絵画、クラフト、アートを自由に、自然体で横断するような作品を生み出してきた。

 小山登美夫ギャラリーで始まった個展では、陶の彫刻から絵画、また布と糸を使ったタペストリーのような作品まで、最新作を含めて展示。中心となるのは「おとこ」「おんな」「つら」「ほうよう」「うずくまる」といった、根源的な人の姿とその動作を表した陶の立体作品。焼き物のもつ土着性、美大生時代に惹かれたというクレーやカンディンスキーなどの近代絵画や仏像美術のエッセンスーー東洋と西洋、実用的なクラフトとアートの観念が混じったかのような作品だが、なにより86歳の作家の内に広がる美的関心、作ることの自然体の喜びに満ち満ちたものとして、心を強く動かされる。

『伊藤慶二展』
会期:~2月12日(土)
会場:小山登美夫ギャラリー
住所:東京都港区六本木6-5-24 complex665ビル2F
開廊時間:11:00~19:00(最終入場は18:30まで)
休廊日:日・月曜、祝日
料金:無料
電話:03-6434-7225
公式サイトはこちら

※新型コロナウイルス感染予防に関する来館時の注意、最新情報は各施設の公式サイトを確認ください

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