日本ではあまり知られていないスペイン現代アートの巨匠ミケル・バルセロの個展、神奈川県の無人島・猿島を舞台にした芸術祭、ドローイングへの新たな考察をテーマにした新鋭作家のグループ展。開催中のアート展から絶対に見るべき3つのエキシビションをピックアップ

BY MASANOBU MATSUMOTO

『ミケル・バルセロ展』|東京オペラシティ アートギャラリー

画像: ミケル・バルセロ《雉のいるテーブル》1991年 作家蔵 ©ADAGP, PARIS & JASPAR, TOKYO, 2021.  PHOTOGRAPH: ©GALERIE BRUNO BISCHOFBERGER

ミケル・バルセロ《雉のいるテーブル》1991年 作家蔵
©ADAGP, PARIS & JASPAR, TOKYO, 2021. PHOTOGRAPH: ©GALERIE BRUNO BISCHOFBERGER

 ミケル・バルセロは、スペイン・マジョルカ島生まれの現代アーティスト。5年に1度開かれる現代アートの祭典ドクメンタ(1982年)や、ヴェネチア・ビエンナーレ(1984年、2007年、2009年)にも招待され、世界的に高い評価を受けている作家だ。ただ、これまで日本では大規模な展覧会はほとんど開かれてこず、広く認知された存在ではなかった。いわば“知られざるスペインの巨匠”であるバルセロの仕事を本展は総覧できる。

 会場に並ぶのは、生まれ育ったマジョルカ島の風景や歴史を題材にした初期の絵画から、アフリカを旅しサハラ砂漠を横断した経験から生まれた“白い大地”の絵画シリーズ、アフリカのマリ滞在中に傾倒しバルセロ自身が“絵画の延長”だという陶芸、また、新型コロナウイルスが蔓延した2020年に制作した《COVIDのノート》まで。バルセロの作家としてのキャリアや関心の変化を辿りながら作品を紹介する。ユニークなのは、パフォーマンス作品《パソ・ドブレ》のドキュメント映像。巨大な土の壁に手で穴を掘ったり、土の塊をぶつけたりしながら絵を描くライブペインティングのような作品で、バルセロが常々テーマにしてきた人間の生きること、描くこと、その根源への問いをもっともわかりやすく実感できる。

『ミケル・バルセロ展』
会期:〜3月25日(金)
会場:東京オペラシティ アートギャラリー
住所:東京都新宿区西新宿3-20-2
開館時間:11:00〜19:00(入場は 18:30 まで)
休館日:月曜(祝日の場合は開館、翌日休館)、2月13日(日)
入場料:一般 ¥1,400、大学・高校生 ¥1,000、中学生以下無料
電話:050-5541-8600(ハローダイヤル)
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『Sense Island -感覚の島- 暗闇の美術島 2021』|神奈川県・猿島

画像: (写真左)忽那光一郎《風速0 SE08》 ©KOICHIRO KUTSUNA (写真右)中﨑透《Red bricks in the landscape》 PHOTOGRAPH BY NAOMI CIRCUS

(写真左)忽那光一郎《風速0 SE08》
©KOICHIRO KUTSUNA
(写真右)中﨑透《Red bricks in the landscape》
PHOTOGRAPH BY NAOMI CIRCUS

『Sense Island』は、神奈川県にある無人島・猿島を舞台にした芸術祭。2021年版は、昨秋に開催される予定だったが、新型コロナウイルス感染症の拡大により会期を延期し、この1月22日に開幕した。鑑賞者が入島するのは日没後。また会場の受付でスマートフォンを“封印”するのがルールになっている。暗闇の無人島で、アートに触れ、自分自身と向き合い、失ってしまった感覚を取り戻す、というのがこの芸術祭のコンセプトであり、面白さだ。

 猿島は、徒歩で1時間ほどで一周できるほどの大きさで、会期中、そのところどころに13組の作家の作品を設置。夜の空を飛ぶ飛行機の軌跡を大判のフィルムカメラで撮影した忽那光一郎の写真作品や、島に残る赤煉瓦の要塞跡にインスピレーションを受けた中﨑透のライトボックス作品、鏡の歴史とルッキズムに関心を寄せ「自分が映らない」鏡を制作している井村一登のインスタレーションなど。光や音、闇夜の冷たさ、自然の匂いや気配といったものを自ずと感じながら、感覚をひらくような体験が得られるはずだ。

『Sense Island -感覚の島- 暗闇の美術島 2021』
会期:~3月6日(日)
※会期中の金・土・日曜および祝日と2月10日(木)のみ開催 
会場:猿島一帯
住所:神奈川県横須賀市猿島1
開場時間:16:50〜21:00
※三笠桟橋発(16:50、17:35、18:15、19:00)の船(要事前予約)で猿島に渡り、帰りは指定された船で三笠桟橋に帰着。
※2月以降は16:50、17:35、18:15に三笠桟橋発。
※3月4日(金)〜6日(日)は16:30、17:35、18:15に三笠桟橋発。
入場料:大人(高校生以上)¥3,500、中・小学生 ¥1,500、小学生未満は無料(往復乗船料、入島料、観覧料含む。チケットは公式サイトより要事前購入)
電話:046-822-8427(Sense Island 実行委員会事務局)
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『Drawings – Plurality』|PARCO MUSEUM TOKYO

画像: 村山悟郎《ドローイング- カップリング[杢目とセルオートマトン]》(部分) 2021年 ヒロセコレクション蔵 ©GORO MURAYAMA

村山悟郎《ドローイング- カップリング[杢目とセルオートマトン]》(部分)
2021年 ヒロセコレクション蔵
©GORO MURAYAMA

 ドローイングは、美術においてもっとも根源的で哲学的な行為のひとつだと言える。線を引くことは手を動かすという身体行為を伴うものであり、その線は描き手の肉体や思考の痕跡を示すもの。またランダムに引いた線は、無意識の表れでもあるかもしれず、先史時代の洞窟壁画に見られる線刻は、自然や動物への祈りと結びついたものであるとも言える。PARCO MUSEUM TOKYOで開かれている『Drawings – Plurality』は、こうしたドローイングに対する新しいビジョンを拓く。

 出展作家は3名。 “描く”と“書く”の境界を主題に、路上の記号などを解体・再接続し新たな言語としてのドローイングを探究してきた鈴木ヒラク、線描のオートポイエーシス、自己組織化する絵画をテーマにする村山悟郎、そしてメディアや機械、装置が造りだす線描に人が何を見いだすのかを問いてきたやんツー。それぞれ主題やアプローチは異なれど、同時代的な問いや関心を孕んだ作品だ。また特に2000年代以降の西洋のアートシーンでは、ドローイングへの再評価が進み、近年はコンテンポラリードローイングというアートのジャンルも熟成しているという。その意味でも、注目すべき展覧会だろう。

『Drawings – Plurality』
会期:~2月7日(月)
会場:PARCO MUSEUM TOKYO
住所:東京都渋谷区宇田川町15-1 渋谷PARCO 4F
開館時間:11:00〜20:00(入場は閉館の30分前まで)
入場料:一般 ¥300、小学生以下無料
電話:03-6455-2697
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※新型コロナウイルス感染予防に関する来館時の注意、最新情報は各施設の公式サイトを確認ください

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