キャリア25年以上、美容の最前線で活躍する3人のジャーナリストがコロナ禍の今、ストレスを和らげ、心地よく機嫌よくすこやかに生きていくための美容との向き合い方を探る
BY TERUNO TAIRA, PHOTOGRAPHS BY SATOSHI YAMAGUCHI
一年と少し前はこんな世界が待っているとは想像もしていなかった。未知のウイルスにより、私たちの日常生活も随分と変わり、当然、美容をめぐる事情も変化している。ベテラン美容ジャーナリスト3人が、新時代の美容のあり方を考察する。
安倍 もちろん不自由さは感じていますが、私個人はポジティブな気づきもありました。それまで出張や旅行で文字どおり飛び回る生活をしていたけれど、それが一変。今までは無意識に人の目を気にしていましたが、今は自分が心地よいかどうか、 “自分軸”がものを選ぶ基準になった気がします。
入江 私は典型的な夜型人間からまっとうな朝型へ。以前はそのほうがいいと頭ではわかっていてもどうしてもできなかったのに。自粛中は移動に時間がとられないぶん、早くから夕飯の支度をして一杯飲んだりしていたら、早めに眠る生活に。考えてみれば、それが当たり前の生活のリズムなんですよね。
平 ふたりともすごい。私はリモート生活になって、疲れていないから眠れず、夕食後は編み物しながらNetflix三昧。起床が遅くなり、夜更かしの悪循環。運動不足だし、早くこの不健康な生活を立て直さないといけないです……。
入江 美容の根本は健康ですよね。健康であってこそきれいになれるし、きれいであれば気持ちも明るくなる。
安倍 そのとおり。美容の新製品も、肌だけではなく、体の機能に目を向けているものが増えていますよね。
平 “抗酸化”や“抗炎症”作用はこの時代、健康を守るために重要。そのためのテクノロジーがすごい勢いで進化している。
入江 肌の自己修復機能を高めるナイトケアという流れも。睡眠中に肌をケアする製品は昔からあるけれど、最先端のサイエンスでバージョンアップしています。
平 睡眠時間が増えた人もいるけれど、睡眠バランスが崩れた人や不安でよく眠れないという人も。睡眠の改善をうたった「Yakult1000」を飲んでいる人、周囲で増えています。
安倍 免疫力を保つことは、健康にも美容にもとても大切。
入江 コロナ禍で生まれた新ジャンルとしては“プロテクト&バリア”。菌や花粉などを付着しづらくする新技術も登場。外出時にそういうアイテムを携えることも、新しい習慣に。
平 常時マスク着用になって顔の下半分のたるみがひどい。
安倍 アンダーマスク問題には美容ギアがお役立ち。
平 たしかに。スキンケアの効率が格段に上がります。
入江 ドクターシーラボの「リフトアップマッサージャー」は気持ちよくって愛用中。たるみには頭皮からの引き上げも大切。
安倍 私も。心地よさって美容の原点。コロナ禍になって私はますます“香り”の癒やし効果を求めるようになりました。
入江 香りは“ほのか”が気分。特にハンドクリームはあまり匂いがきつくないほうがいい。マスク生活でメイクの楽しみを得るとしたら、指先と目もとだけ。この二点はポイント。
安倍 マスク着用では圧倒的に血色感が足りなくなるのよね。そのせいか唯一、見えている目もとに赤やピンク、コーラルといった赤み系の色をつけるようになったかな。
平 色や香りがもたらす心地よさってありますよね。
安倍 この一年、私は自然の中に身を置いて生きる心地よさを実感し、以前にも増して環境やサスティナビリティについて考えるようになりました。製品の背景もチェックします。
平 自然の大切さに気づいた個人が、その思いを純粋に突き詰めて立ち上げたコスメブランドも増えています。小ロットでもよいものを生産できるようになり、個の力がネットワークで広がる社会へと移行しているのを実感します。組織力が重視される縦社会から、横にゆるやかにつながる社会へ。
入江 一方で、その自然の恵みを生かすのもやはり科学の進歩。私はそれをリスペクトし、その成果も享受したい。
安倍 「風の時代」だから多様性が当たり前に。情報はあふれているし、美容も正解はひとつだけではない時代。
入江 判断するには、自分の感覚を研ぎ澄ませておくこと。
平 五感に働きかける美容はその助けになりますね。