9丁目のタウンハウスで、グリニッチビレッジに今も息づくボヘミアンのスピリットを大切に守り続ける仲間がいる。―― 少なくとも今年の9月までは、その炎を絶やさぬようにと

BY MARY KAYE SCHILLING, PHOTOGRAPHS BY ANTHONY COTSIFAS, TRANSLATED BY MIHO NAGANO

 フロスト夫妻がこの建物に移り住んだ頃、ビレッジはまだクリエイティブの特別区として隆盛を極めていた。この地域は第二次世界大戦後の西洋文化を牽引するエンジンのような存在となり、ビート世代と呼ばれた作家たちや、芸術家、音楽家やエキセントリックな自由人たちが、うらぶれたタウンハウスの、家賃の安い粗末な部屋にどっと押し寄せた。

9丁目だけを見ても、小説家のドーン・パウエル、モダニズム詩人のマリアンヌ・ムーア、アルゼンチンタンゴの作曲家アストル・ピアソラ、バーブラ・ストライサンド、絵本作家のモーリス・センダック、ジミ・ヘンドリックスらが住んでいた。ここ東9丁目17番地のアパートには、1944年に画家のミネ・オークボが入居し、彼女はここで強制収容所の体験記録『Citizen13660(市民13660号)』を書き上げた。また、フロスト夫妻がこの建物を買ったとき、彫刻家のデュブルはすでに10年以上そこに住んでいたし、90年代には、フロスト夫妻はふたつある二世帯用アパートのうちのひとつを、ファッションデザイナーのマーク・バッジェリーとジェームズ・ミシュカに貸していた。

画像: アパートメント7 シュワルツのダイニングルーム。鏡は、彼が舞台の仕事でも使っているミラーライト社製の超軽量素材でできている

アパートメント7
シュワルツのダイニングルーム。鏡は、彼が舞台の仕事でも使っているミラーライト社製の超軽量素材でできている

 舞台デザイナーのジェリー・シュワルツは、この建物の3階に2012年から住んでいるが、昨年、たまたま住所を友人の写真家コリエナ・レントミースターに教えたところ、彼女は「フロスト夫妻の建物じゃないでしょうね! なんてこと!」と叫んだ。彼女と映画監督の夫トム・デイは、まさにシュワルツのいるアパートにかつて住んでいたのだ。フロスト夫妻はつねに秘密に満ちていて、ふたりでいるのがいちばん幸せそうだったと誰もが言う。だがデイは、ジャズ・ミュージシャンのデイヴ・ブルーベックが夫妻の家の小ぶりなグランドピアノを弾いたらしいという、本当だったらすばらしいが実際にはありえなさそうなうわさ話を教えてくれた。

 

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