四国でいちばん小さい町であり、最も人口が少ない徳島県上勝(かみかつ)町。焼却炉購入の財政的余裕がないなか、国内初のごみゼロ宣言から約15年。 その現在を創る人たちを追った

BY YUKA OKADA, PHOTOGRAPHS BY KIYOTAKA HATANAKA(UM)

画像: 43分別のごみステーション。上勝町は2020年までに焼却・埋め立てごみゼロを掲げる

43分別のごみステーション。上勝町は2020年までに焼却・埋め立てごみゼロを掲げる

 確かにRISE & WINには大いなる仕掛け人がいる。衛生検査と分析を通し食の安心と安全をサポートする徳島市内のSPEC Bio Laboratory inc.代表の田中達也さんが、その人。上勝に関わるようになったのは2011年。海苔の消費量の激減を受け廃業危機にあった徳島で最後の海苔漁師を救いたいと、田中さんが自社のノウハウを投じて開発した冷凍保存の生海苔が上勝市長の目に留まり、「地域再生を手伝ってもらえないか」と相談を受けたことがすべての始まりだった。

画像: 立役者の田中達也さん

立役者の田中達也さん

画像: 田中オーナーの初志を貫徹した プライベートビールのバレル庫。 誰もが“マイ樽”を仕込める

田中オーナーの初志を貫徹した プライベートビールのバレル庫。 誰もが“マイ樽”を仕込める

 地方の会社である以上、地域の問題にも無関心でいられない。田中さんがまず掲げたのは、すでに人口2,000人を大きく割り込み、高齢者比率も50%を超えた上勝に、どんな形であれなるべく早く、町外から人々がやってくる仕組みをつくること。そこで住民にとっても利用価値がある調味料や日用品を量り売りし、同時にゼロ・ウェイストの理念を感じることができるプレハブ小屋の「上勝百貨店」を開くが、いかんせん、そこは過疎の町。一日の売り上げが300円という日もざらで、商売としてまったく成り立たなかった。

一方で、根っからのビール好きだった田中さんは、活況を呈するクラフトビール市場にかねてから興味を抱いていた。「社員との打ち上げで飲めるような、樽生ビールを自分たちでも造れないか」という動機も手伝って足を運んだのが、マイクロ・ブルワリーの中心地、オレゴン州ポートランド。そこでマイボトルを手にお気に入りのブルワリーに通い、量り売りのビールを買っていく男たちの姿を見て、ピンときた。「できたての生ビールがあって、量り売りでも買うことができて、自然があって、おまけにビールをつまみにBBQなんかができたら、一度は上勝に遊びに行ってみようという人が出てくるんじゃないかと思いました」

 こうして約2年の歳月を経た2015年5月、言い出しっぺの田中さんがオーナーとなり、上=RISE(ライズ)、勝=WIN(ウィン)からネーミングを得たマイクロ・ブルワリー「RISE & WIN Brewing & Co. BBQ & GENERAL STORE」が誕生した。

T JAPAN LINE@友だち募集中!
おすすめ情報をお届け

友だち追加
 

LATEST

This article is a sponsored article by
''.