四国でいちばん小さい町であり、最も人口が少ない徳島県上勝(かみかつ)町。焼却炉購入の財政的余裕がないなか、国内初のごみゼロ宣言から約15年。 その現在を創る人たちを追った

BY YUKA OKADA, PHOTOGRAPHS BY KIYOTAKA HATANAKA(UM)

画像: 「RISE & WIN Brewing & Co. BBQ & GENERAL STORE」。建物の奥は谷間の町を望む庭が広がり、要予約のBBQスペースに

「RISE & WIN Brewing & Co. BBQ & GENERAL STORE」。建物の奥は谷間の町を望む庭が広がり、要予約のBBQスペースに

 建築とはときに言葉以上に雄弁だ。子どもの交通教育のため町内に唯一設けられた信号にほど近い、道路沿いに佇むRISE & WINの建物も、片流れの屋根を支える壁一面は、さまざまな廃材の扉を用いパッチワークの窓に。渋柿とベンガラを混ぜた自然由来の染料で色づけした外壁には、譲り受けた杉の端材を使用した。生産工場と廊下を挟んだ向かいには、空き瓶や欠けたコップをリユースしたシャンデリアが目を引く「BBQ & GENERAL STORE」を併設。タップから注がれる生ビールと、そのビールに漬け込んだベイビーバックリブや阿波すだち鶏などを炭火料理で提供しつつ、箪笥や農具までを組み合わせた棚には上勝百貨店から受け継いだ量り売りの品々、地元の名産品なども揃う。

画像: 廃材の扉を組み合わせた西向きの一面窓は、夕日を見ながらビールを楽しむ特等席。リターナブルボトルも用意され、量り売りにも対応。なお、RISE & WINのビールは東京・東麻布の「KAMIKATZ TAPROOM」でも味わえる

廃材の扉を組み合わせた西向きの一面窓は、夕日を見ながらビールを楽しむ特等席。リターナブルボトルも用意され、量り売りにも対応。なお、RISE & WINのビールは東京・東麻布の「KAMIKATZ TAPROOM」でも味わえる

画像: ビールは定番で 4 種を用意。乳酸発酵させた特産の上勝番茶や、果汁を搾ったあとは廃棄されていた、同じく特産の柚香の皮を香りづけに使用したビールも

ビールは定番で 4 種を用意。乳酸発酵させた特産の上勝番茶や、果汁を搾ったあとは廃棄されていた、同じく特産の柚香の皮を香りづけに使用したビールも

 設計は東京在住の建築家、中村拓志。近年、各誌で数多く取り上げられている「ベラビスタ スパ&マリーナ 尾道」の礼拝堂「リボンチャペル」で国際的建築賞を受賞するなど、次世代の日本人建築家として海外からもコンペに招聘される一人だ。ちなみにアセンブルや中村という旬の才能の起用は、田中オーナーが出かけた講演会での出会いからRISE & WINのプロデュースを担うに至ったTRANSIT GENERAL OFFICE INC. のアイデアによる。「bills」「THEAPPOLO」「Longrain」といった海外のポップな飲食店を日本に誘致するなど、カフェやレストラン事業を中核に、ホテルからシェアオフィスまでを〝遊び場の創造〞という観点で再生。案件ごとに多様なクリエイター&カルチャーをキュレーションしてきた彼らの経験値は、RISE & WINの大きな原動力となっている。

ゼロ・ウェイストの町 徳島県上勝町の今を創る人々<後編>へ

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