BY JUNKO ASAKA, PHOTOGRAPHS BY SHINSUKE SATO
「刃物の伝統においては、日本のほうがフランスの数段上。鋼の選び方から違います。三ツ星レストランの厨房をのぞくと、たいてい日本製の包丁を使っている。中でも、非現実的な技術レベルに到達しているのが貝印だと思います」
と、共同開発した貝印への賛辞を惜しまない。単に包丁のラインに自分の名前を貸すのではなく、一緒に新しい包丁を作りあげたいという強い意志のもと、最初の7本の包丁をつくり出すために300本のプロトタイプを作り、1本1本を厨房で試したという。
ミシェル・ブラスの感性とKAIの職人技の結実として生まれた「Michel BRAS」の包丁は、ブラス氏をして“宝石のような包丁”と言わしめる理想の仕上がりとなった。そこからさらに、グレーターやピーラー、ハサミなど、さまざまな調理道具が生まれ、ラインナップが広がってきた。
そしてこのほど「Michel BRAS」ブランドに新たに加わったのが、「Quotidien」(コティディアン)と「マイクロスライサー」、「ジュリエンヌ」である。コティディアンは、よりリーズナブルで、カジュアルに使える3本の包丁。最初の包丁と同じこだわりと美しさをもちながら、研ぎやすく、誰でも使いやすい仕様になっている。
マイクロスライサーとジュリエンヌは、ハンドルのついたフレームの本体に3種類の替刃をセットして使い分けることができる。マイクロスライサーはスライスの厚みを約0.3~約1㎜の細かさで自在に調整ができ、2種のジュリエンヌはそれぞれ約2㎜と約1㎜の幅で食材を細切りにする。
試用品を使って自宅でキャベツの千切りやキャロットラペを作ったところ、その切れ味のよさはもちろんだが、繊細かつ美しい千切りに思わず見惚れるほど。料理を食べた家人が「いきなり料理の腕があがってどうしたのかと思った」とのたまうくらい、歯ごたえ口あたりすら違っているのに本当に驚いた。まさにブラス氏のいうところの「料理の喜びを純粋に味わえる」キッチンツールだ。
ちなみに、昨年10月、レストラン「BRAS」は20数年にわたり保ち続けてきたミシュランの三ツ星を返上したことで大きな話題となった。新たな製品の発売を前に来日し、その理由を問われたブラス氏はこう語った。
「現代は、誰もが自由を謳歌できると考えられていますが、実際には様々な制約やルールが確立し、それによって評価が決められていく。私がオーブラックという緑の砂漠の中で妻と二人でレストランを始めたとき、ゲストに媚びる気持ちは毛頭なく、ただ純粋に、私たちの気持ちを料理で表現したいと思っていました。レストランは10年前から息子のセバスチャンに引き継ぎましたが、彼もまた、そういう自由を取り戻したいと考えたのだと思います。料理だけに純粋に、自分の情熱を注ぎたいと。もちろんミシュラン三ツ星はたいへんな栄誉ですが、星よりもお客さまこそが、私たちにとっての星なのです」
問い合わせ先
貝印(お客さま相談室)
フリーダイヤル: 0120-016-410
公式サイト