枝編み細工の高級家具を生み出す技術は、今や絶滅の危機に瀕している芸術だ。そんな中、ヨーロッパにある3つの工房が古代から伝わる伝統を継承しようと力を尽くしている

BY DEBORAH NEEDLEMAN, PHOTOGRAPHS BY DANILO SCARPATI, TRANSLATED BY MIHO NAGANO

画像: 三代続く籐家具メーカーのボナチーナで、今制作中の作品。現在のオーナーであるマリオ・ボナチーナは、同社の敷地内に家族とともに住んでいる

三代続く籐家具メーカーのボナチーナで、今制作中の作品。現在のオーナーであるマリオ・ボナチーナは、同社の敷地内に家族とともに住んでいる

「枝編みの家具」という言葉には、どこかノスタルジックな匂いがつきまとう。たとえば植民地時代のインドのベランダに置かれた、孔雀が羽根を広げたような背もたれの椅子。そんなセピア色の写真を思い浮かべる人もいるかもしれない。あるいはビクトリア式の温室の中に置かれた、装飾を施した丸みのある長椅子をイメージする人もいるだろう。確かにそのスタイルには年季が入っている。枝編み工芸の最盛期はアジアからヨーロッパに籐が安定供給されていた19世紀だが、植物の繊維を編んで物を作るという工芸の起源は、少なくとも古代エジプト時代までさかのぼる。

 100年以上の伝統をもつ老舗工房のいくつかでは今も高品質の手編み家具が作り続けられているが、その工房の多くは小規模な家族経営だ。デザインは時代を経て進化してきたが、生産工程は数千年たってもほとんど変わることがない(「枝編み」とは繊維を編み込む技術のことで、編む材料は特定のものに限定されるわけではない。つまり、材料は植物の枝や茎でも、化学繊維でもかまわないということだ)。現存する工房では、野生の籐、すなわちクライミングパームと呼ばれるヤシ科の植物の硬く、なおかつ曲がりやすい枝を作品の基礎構造を作るのに用い続けている。そして、その枝の内側からとれるスパゲッティのように細い繊維が、枝編みという言葉どおり、高度な手編みの工程に使われる。市場での競争相手は、ほとんどがインドネシアやマレーシアなど、籐の産地である国々が生産する安い製品だ。そうした輸入品も悪くはないが、伝統ある工房の作品に比べると、職人技やデザインの点ではとても太刀打ちできるものではない。老舗の工房では、熟練した職人たちが昔ながらのやり方で家具を作っている。硬い籐の枝を熱して柔らかい棒にし、それを金属の枠の上で曲げて、家具として使える工芸品に加工していく。

 聞けば、スウェーデン、イギリス、イタリアにそれぞれ残る3つの工房が、今、最も美しい枝編み家具を生産しているという。どの工房も、かご職人たちが何千年ものあいだ培ってきた同じ格子編みの技術を踏襲しているが、それぞれの工房のスタイルは国によって異なる。まるで枝編みという小さな美しい万華鏡を通して世界を見るように。

 

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